六十八話・ラプンツェル8
今回は日常編です
杏のデートの約束をしてから翌日。
下校時間になり王子は、いつも通りにバイト先である童話喫茶・子ウサギの隠れ家に出勤していた。
今月の童話コスプレは氷の女王だ。そして、今回はオリジナルと某映画のア◯雪からのコスプレとなっている。
王子はというとオリジナルからカイという人物のコスプレだ。まぁヒロインのコスプレより地味な衣装となってるが、そこはイケメン力によって挽回するだろう。
着替えてホールに出たところ、何故かGWOパーティーメンバー全員が他の客の邪魔にならないよう端の席に座っていた。今日は平日なのに、違う学校に通う渚と雫は大丈夫なのだろうか?
「オレと雫は委員長の家に泊まる事になってるから大丈夫だ。後で送って貰う手筈になってる」
それなら大丈夫か。それにしても、シオンをチラッと見るがそこだけ暗い空気が漂って話し掛けずらい。他のメンバーと視線を交わすが、ブンブンと全員が『リーダーがどうにかして!』と逆に押し付けられた。ていうか、何故俺がリーダーやねん。
「委員長、何時まで落ち込んでだ。今日は俺のオゴリだ」
「へっ?私はどうやって今回のラプンツェルを攻略するか考えてただけですが………そうですか、天童君が奢ってくれるとはご馳走になりますわね」
なにっ!下を向いてたから、まだ落ち込んでいると俺が勘違いしたのか!他のメンバーは笑うのを堪えている。コイツら分かってて嵌めたのか。
「兄さん、シオンさんだけズルいです」
「タカちゃん、私も何か奢ってよ」
「オレにも何でも良いから。雫にもな」
「私は別に………王子様に悪いですし」
「遠慮すんなって、タカシは男なんだ。男に二言はないよな。ニヤリ」
うぐっ!ここまで言われて、やっぱり無しとは言えない。くそ~、何か悔しいすぎる。何時か仕返しをしてやりたいが、倍返しで返ってきそうで結局はやらない王子である。
「はぁ~、分かった分かった。今日は全員分奢るよ。シクシク」
くそぉ~、今度の給料から天引きさせて貰うか。
「兄さん大好きです」
「タカちゃん愛してる」
「………オレは何も言わないからな」
「王子様、私を食べて━━━」
「「それは絶対にダメ」」
「私も何か言わないとダメかしら」
「無理に言わなくても良いと思うぞ。ただ単にコイツらはふざけてるだけだからな」
奢ると言った以上カズトは注文を聞き、数分後に注文された品をメンバー全員の前に置いた。
因にみんなが注文したのは、デザートの中で一番値が張るパフェ系だ。給料から天引きして正解だった。今のお財布状況から完璧に軽くなるところだった。
「さすがマスターが作るパフェは最高」
俺じゃなく、マスターを誉めるのかよ。奢ったのは俺なのに、トホホ………。今月の給料が少なくなるな。
「はむはむ、パフェはもちろん美味しいけど、一つだけ気になる事があるのだけれど」
うん?何だろうか?他に何かあったけ。
「天童君の衣装って誰のコスプレ?」
まぁ地味だし、某映画のヒロインの方が有名だから分からないのは無理もない。俺だって、誰のコスプレか最初分からなかった。ていうか、これ分かるヤツって要るのか疑問である。
「マスターによると、オリジナルの方の"カイ"らしい。俺も言われるまで分からなかった」
まだ、不思議の国のアリスの方が分かりやすかった。個性が強いキャラばっかりだからな。GWOでも、いつかアリスをやってみたいものだ。相当、難易度が高く設定されてるらしく一朝一夕でクリア出来ないらしい。その代わり複数童話キャラが手に入るチャンスだそうだ。
「マスターも王子に地味なチョイスしたわね。言われないと、誰も分からないわよ。むしろ、オ◯フの方が良かったんじゃないかしら」
それ、もうコスプレというより着ぐるみになるんじゃねぇか?おそらく喫茶店では、動きずらくグラスや料理を落としそうで怖いので、提案してもおそらく却下されるだろう。
「うーん、タカちゃんは素材が良いから………女装してア◯かエ◯サもいけると思う。キラキラ」
期待した目で杏璃がこちらを見詰めてる。期待してる中悪いが、俺は女装をするつもりはない。却下しようと声を出そうとした瞬間、厨房からマスターが杏璃に向かってグッジョブと指を突き出す。
俺は何も言えず、マスターに文句を言うため厨房へと行くが説得されてしまい後日女装する事になるという話に決まってしまった。
「はいよ、お待たせ。右からチョコレートパフェ、ストロベリーパフェ、プリンアラモード、キャラメルパフェ、抹茶パフェだ。自分が頼んだのを取ってくれ」
見事に全員の注文がバラバラでマスターだけじゃ時間掛かりそうで俺も手伝った。大抵はホール担当だが、厨房のヘルプに入れる位には作れる。家でも料理を作る訳だから、メニューを覚えるのは得意なのだ。