六十三話・ラプンツェル4
随分更新遅れたようでスミマセン。
少しトラブルめいた事もあったが順調に森の中を歩いてると、何処からかキレイな歌声が聞こえてきた。
確か実際のラプンツェルでも王子様が聞いてラプンツェルの搭を見つけるんだが、この歌声がそうか?
この歌声を頼りに進んでいると………何階建てだろうか高い搭が現れた。森から完全に出ようとした瞬間、搭の麓に誰かいるのに気づいた。
木の影からそれを観察すると………どうやら老婆のように見える。あれが話に出てくる例の妖精だろう。
遠目だが………いかにも悪顔して絶対にラプンツェルでのボスっぽいオーラが出しまくってる。
「ラプンツェル、ラプンツェル髪を降ろしておくれ」
妖精がそう呟くと搭の窓から金髪でキレイな髪が降りて来ると妖精は、髪をローブのように壁を登っていった。
実際の話でも王子様は妖精のやり方を見て同じ方法で登ったとある。王子もそれに習って同じ方法で登る事にしたが、妖精が出ていくまでは木の影に隠れる。時々モンスターを倒し時間だけが無情に過ぎていく。
だが、現実での時間では、ちょうど十分過ぎたところだ。暇を持て余したと思っていた時に搭の窓から再びあのキレイな長い金髪をローブとして妖精が出てきた。こちらには気づく事なく去って行く。よし、これで搭の中へと入れるだろう。
王子一人、搭の窓下へと来ると木の影からみんなが見守ってる中、妖精が言っていた言葉を一言一句間違えずに言った。
「ラプンツェル、ラプンツェル髪を降ろしておくれ」
そう呪文を唱えるように言うとシュルシュルと髪とは思えない程長くてキレイな髪が王子のとこまで到達するないなやクエスト発生のアラームが鳴る。
━━━クエスト発生━━━
・クエスト:ラプンツェルのララとお話せよ!
・クリア条件:???
・失敗条件:???
・報酬:???
えっ?名前以外???だ。クリアするのに、ただ話するだけで良いのか?わからん。だが、この髪を登らなきゃ話は進まないし、いざ登るか。
「では、行ってくるな」
「「「「行ってらしゃい」」」」
みんなに見守れながら王子は髪を掴み塔の壁を登り始める。現実なら危険な行為だが、ここはゲームの中なので数分間でどうにか登りきった。窓から入るとそこには見目麗しい少女が座っていた。
塔の中は意外にも明るく綺麗に整頓されており、年頃の少女ぽいというかほぼ全てピンク色に統一されている。タンスやベッドに絨毯や壁紙等、目につく物全てピンク色であった。
「えっ!誰ですの?お婆様はどこですの?」
登って来たのが妖精ではなく王子だからかとても困惑してる様子だ。
しかし、こんな美少女を監禁とはあの妖精許せないな。まぁ、あの妖精に売った親もヒドイと思うが………
「あっ………悪い。君の歌声がとても綺麗で気になって………つい」
「まぁ、嬉しいです。お婆様以外とお話するの初めてで………グスン」
ラプンツェル?の瞳から一粒の涙が頬を伝い落ちる。何か悪い事してしまったのかと王子は焦る。塔に侵入した時点で本来なら不法侵入になるのだが、ここはゲームの中だ。問題ない。
「ごめんなさい。私ったら、つい嬉しくて涙が………グスン。お婆様以外と話すの初めてで………ウルウル」
まぁこんな所に監禁(本人は監禁と思ってるか不明だが)されてちゃ誰とも話す機会なんてほぼゼロ%(妖精以外)だもんな。そりゃぁ嬉しいはずだ。こんな所に孤独でいたら、俺だったら………発狂して後に死ぬかもな。
「寂しかったんですね。もし、俺で良かったなら話相手になってあげますよ。あっ!まだ、名前聞いてませんでしたね」
「グスン、私の名前はラプンツェルのララです。ララとお呼びください。ニコッ」
あっ………この娘の笑顔………超可愛いんですけど!よし、絶対に手に入れてやらぁ。それにしても、今回のクエストは謎だらけなんだよな。どうしたものか?まぁ取り敢えずこちらも自己紹介をしますか。
「俺は王子、世界各地を旅してる冒険者だ」
お互い握手しようとし、手を握ってる時にララはふと疑問に思った事を口にする。それは王子にとって逃れられぬ運命なのだ。
「ふにゅ?た………かし?でも、王子って書いてありますけど?」
「うぐっ!王子と書いて王子と読むのだよ」
初対面の人には必ず一回は聞かれる質問にグサッと心臓を抉り取られるような精神的ダメージを負った。このゲームには精神的ダメージはないけど、王子は負ったのだ。
「えっ!でも………王子様と呼んでも宜しいですか?」
「グスン………好きなように呼べば良いよ(このちくしょー)」
王子にとって死ぬ程つらい決断だが、身を切る思いで了承した。
NPC(童話キャラを含める)にとってアバターに設定された名前以外(敬称は例外)で呼ぶ事は基本的に出来ないようプログラムしてある。この事実を知ってるのは古参なら常識の範疇だ。