六十二話・ラプンツェル3
遅くなってすみません
「それなら、見せてくれないかな?」
メリッサが提案してみるが━━━
「それは却下にゃ。切り札は最後まで隠しておくものにゃ。それに━━━」
却下されてしまった。今はまだ出す時ではないのだろう。シャルルに見習って俺も仕舞った方が良いかな?
そう思いながら王子はシャルルとエラを見ると………うん、仕舞うなんて有り得ないと感じた。もし、場に出す上限が越えるなら仕舞うかもしれないが、それ以外は考えられない。
「この話世界は王子しかクリアは無理にゃ」
えっ!俺しか?どういう意味だろうか。
「あっ、訂正するにゃ。このメンバーの中で王子にしか無理って話にゃ」
つまり女性プレイヤーには攻略不可ってことか。そうすると、このメンバーでは俺しかいないな。それなら納得だが、何故男性限定なんだ?
「このラプンツェルは一人限定のキャラクエなのにゃ」
聞いてないんですけど……それじゃぁ、複数人で行ったらキャラクエ発動しないかもしれないじゃないか?
不安でしょうがない王子の気持ちを察知したのかシャーリーが追加説明をしてくれた。
「安心するにゃ。搭の麓までは何人で行っても大丈夫にゃ。ただ、搭を昇るのは一人だけにゃ」
ラプンツェルの髪を伝って王子様が昇って行き、ラプンツェルと二人きりで話すに連れ恋仲になる話だからな。そこは童話に沿ってるのだろう。
「ここで話しても先に進まないにゃ。この森にはモンスターが出てくるにゃから気を付けるにゃ」
「それを先に言ってくれ。みんな準備は良いか?」
みんな頷き、先に進む事になった。
シャーリーが言った通りに直ぐ様モンスターが出現し、みんなで討伐する。
出現するモンスターは、猪突猛進なイノシシ系、木に擬態してる植物系、額に角を持つウサギ系、鷹みたいな鳥獣系等々思ったよりも種類が多い。王子達の職業がバラけてるお蔭かどうにか対応出来てる。
「シャーリー、さすがにモンスター多くないか」
というより、モンスターのリポップのスピードが通常より早いような感じだ。数はそんなに多くないはずなのに、多くいるような錯覚に襲われる。
「間違いないにゃ。恐らく、パーティーの人数によって変わるかもにゃ(範囲内にゃけど、こんなの知りないにゃ)」
「かも?シャーリーが知らない事なのか?」
「そ、そそそそそんな訳にゃいにゃ」
情報に強いシャーリーだが、動揺に弱い。否定するも端から丸分かりである。
「「「「(知らなかったのか)」」」」
「………さっさと行くにゃよ」
頬を真っ赤に染まりソッポを向き先頭を歩き顔を見せないようにしている。
本来ならばそこまでモンスターの数が多くないはずだが、パーティー人数により増減するギミック等情報屋として初歩的な初歩の情報を知りませんでしたとシャーリーとしてプライドが許さない。
それ以前にプライドより羞恥心の方が勝ってしまい、パーティーメンバーの顔をまともに見れないでいた。
「なぁ、シャーリー━━━━」
「う、うるさいにゃ。知らなかったのは悪いと思ってるにゃ。どうせ、どうせ私が全部悪いのにゃ。プイッ」
あ~、拗ねちゃったよ。でも、これを本人に言うと怒るだろうが………拗ねた様子も何か可愛いく見えてしまうのだから不思議だ。
「なに、みんなしてニヤニヤしてるのにゃ」
「「「「何でもないよ」」」」
どうやら、王子だけではなく、みんなもニヤニヤとしてたようだ。類は友を呼ぶ的な事だろうか。
「じゃぁ………ニヨニヨ」
「それはそれでムカつくにゃ」
それじゃぁ、どうすれば良いねん。
「シャーリーの事は置いといて先に進もう」
王子がそう言うと、シャーリー以外はモンスターを倒しながら先に進む。一人、置いていかれそうなシャーリーの瞳に涙が徐々に溢れ泣き出す寸前である。
「置いとくとは何事にゃ………えっ!本当に置いて行くにゃんて………ちょっと待つにゃぁぁぁぁ。猫猫ライダーキック」
簡単に説明すると、ただの跳び蹴りである。それが王子の顔面に見事命中しモンスターごと吹っ飛ばした。モンスターはそのせいで、見た限り10匹は倒している。
「たかちゃん?!」
「「「王子様」」」
「ニャハハハハハ、これは天罰にゃ」
王子を吹っ飛ばした張本人であるシャーリーは、まるで悪者のように笑っている。だが、土煙が晴れるとそこには無傷で立っている王子が立っている。
「ふぅ、上手くいって良かったな。カウンタースキル"循環"」
カウンタースキル"循環"とは、相手が放った物理や魔法攻撃をエネルギーとして自分の体内を循環させるように別方向へと放つスキルだ。ただ、扱いが難しく少しでも使用のタイミングを誤るとそのままダメージを負ってしまうから注意だ。
「練習のためにわざとやったんだろう?」
「な、なぁんだ。練習だったのね。ビックリした」
「………兄さんがそう言うのであれば、私からは何も言う事はありません」
あっ、フローラにはウソがバレてるみたいだな。
シャーリーよ、俺も悪いかもしれんが感謝しろよ。あのままだったらフローラにやられていたからな。
王子が思ってる通りにフローラはシャーリーを殺すため、手元に暗殺用ナイフが握られている。
「ニャ、ニャハハハハハ、前から新しいスキルを試したいと頼まれていたのにゃ(そ、そんなはずは"循環"なんてスキル聞いた事ないにゃ)」
「………王子様がそう言うのであれば………」
王子も気付かなかったがシャルルの拳銃も抜かれており、銃口はシャーリーの脳天を指していた。数秒、王子の嘘八百が遅れていたらフローラより早くシャルルの拳銃から火を吹いていたに違いない。