五話・赤ずきん4
早速、赤ずきんシャルルの案内で歩き始めた。今回のクエストは楽勝かな。
「シャルルの家はどんな感じなんだい?」
「どんな感じと言われましても、私と母の二人暮しで小さな何処でもあるような家ですよ」
「いや~、気になってね。家に行くと言うことはシャルルのお母さんと会うわけで....」
「?!そそそそそそうですわね」
考え無しで誘ったのか動揺しまくりのシャルル。
(ヤダっ、私ったら急に家に連れて行ったら、お母さんが勘違いしてしまう。でも、勘違いされても良いかも♪)
妄想を膨らまし体をクネクネとくねっている。
「だ、大丈夫?シャルル」
「はっ、な、何でもないわよ」
(私ったら、何て事考えてんの。しっかりしないと王子様に嫌われちゃう。でも、やっぱり....えへへへへっ)
顔がにやけて、それを見た王子は若干退いてるが嬉しそうである。
「王子様、何ですか?」
「え、いやいや何でもないよ」
(つい、退いてしまったけどニヤケ顔のシャルルも可愛いな)
(ヤダ~、私の顔ニヤツいてた!王子様に嫌われてないかしら)
『グルルルっ』
ここら辺に生息するプチウルフが道を塞いでいる。しかし、レベル10に上がった王子の敵ではない。
「颯爽と戦う王子様、す・て・き」
シャルルによるビジョン・アイによって王子の姿が100割増で格好良くシャルルの瞳には写っている模様である。
「さぁ、早くここを去ってしまおう」
シャルルに手を差し伸べる。
「はい、王子様何処までもお供します~」
瞳がハート状態になっており、王子の手を取ると走りだした。
やっぱり、王子の方がステータスが高いのか王子と同じペースで走っているシャルルは途中で転んでしまう。
「あ、痛っ!」
どうやら足を擦りむいた様で血が垂れてる。まともに歩けないだろ。
「これは....少し染みるけど我慢してくれ。よし、これで大丈夫だ」
傷薬と包帯を取り出し、シャルルの擦りむいた右膝に傷薬を散布し包帯を巻き付ける。
「あ、ありがとう。上手なのね」
「では、失礼して。よいっしょ」
シャルルをお姫様抱っこしたが、シャルルは状況が良く理解出来ていないらしく、キョトンとしている。しかし、数秒後焦り始める。
「え、なななななな王子様、何をしてるのかな?」
動揺しまくりで王子の腕の中で暴れる。
「え、え~とね。お姫様抱っこ?嫌なら降ろすけど....」
「い、嫌ではないです。はい。むしろ....嬉しいです。むしろ、もっとぎゅっとしてくださいませ」
(きゃーーー!よっしゃー、王子様にお姫様抱っこされちゃった。もう、このまま死んでも良いかも)
「じゃあー、一気に駆け抜けるから俺の首にでも捕まって」
王子の言葉に頷き、ぎゅっと王子の首を掴んだ事を確認すると走り出した。
(うわぁー、王子様の顔がこんな近くにあるよ。クンクン、良い匂い安心して身も心も任せられるようなそんな安心感があるよ。
王子様の顔が近くに....唇が柔らかそう)
「ん、あれかい?シャルルの家」
花畑の中心にポツンと建っており、他には家らしき建物はないので間違いないだろう。
「はっ、そそそうです」
(はぅ、私ったら何を考えてたの!王子様の唇なんか見て....私ってこんなに端ない子だったの!)
今まで感じた事ない感情に戸惑いを見せるシャルル。
トントン
「はーい、どなたかしら?シャルル!そのケガどうしたの?」
「転んだだけだから、大丈夫よ。ママ」
「あらあらまぁまぁ、そちらの方はどなたですの?」
シャルルをお姫様抱っこ王子を見た瞬間、全てを理解したような表情で娘のシャルルと王子を交互に見続けている。
明らかに娘の男だと誤解している。まぁ、将来的には間違いではないけれど━━━
「それは━━━━」
王子と出会った経緯を話してる間、時々にシャルルのお母さんが「まぁまぁ」と呟いている。
「シャルルの恩人の方なのね。さぁ、お入りなって」
シャルルのお母さんのお招きもあり、家に上がり込むと、お母さん一人だけかと思いきや、テーブルに男の人が一人座っていた。
・クエスト更新
・クエスト:赤ずきんシャルル家と団欒する
・クリア条件:シャルルの母と猟師と仲良くする事
・クリア報酬:???
「おや、君は確か....」
「あっ、あなたはあの時の....確か猟師さん」
猟師は赤ずきんのフィールドでの住民がオオカミに襲われないよう、見廻り兼狩猟をして守護してるのだ。つまり、この赤ずきんの話世界内での警察官の役割である。
「おぉ、やはり君か。今回も赤ずきんちゃんのナイトのようだね」
「いやですよ。猟師さん、王子様とお似合いで素敵なカップルだなんて」
そこまでは言ってないのだが━━━━照れ隠しでバンバンと猟師さんの背中を叩いている。
「い、痛いよ。赤ずきんちゃん、結構力が強くて....痛っ、ちょっと本当に痛いよ」
「はっ、す、すみません。猟師さん、ヤダ....私ったら」
「あははははっ、いいよいいよ。これくらい」
本当はズキンズキンとかなり痛むらしく痩せ我慢をしている。
「もうそろそろ、夕飯の時間ね。あなたも食って行ってくださいな。シャルルを助けてくれたお礼として。えーと....お名前まだ聞いてなかったわね」
シャルルのお母さんは王子のステータスにある名前を見て首を傾げた。
「王子様?シャルルの冗談だと思っていたけど、何処かの王子様なの?」
はぁ、またこれか。名前を説明するの何回目だろうか。もう、多過ぎて覚えてない。
「いえ、王子と書いてたかしと読みます」
「でも、私にとって王子様だよ」
シャルルが横槍を入れる。
「あらあらまぁまぁ、それじゃ私も娘に倣って王子様と呼びますわね」
シャルル~、余計な事を━━━
「すぐに夕飯の準備を致しますので、王子様も席に着いてお待ちなって下さいな」
シャルルのお母さんの言葉に従い席に座って待つことにした。
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