五十六話・シンデレラ43
遅くなりました。
「『狂戦士化ぁぁぁぁ、うおぉおぉぉ』」
ウサミミのアテナが赤いオーラに覆われ、そのまま兵士の軍団へと突っ込んで行った。その衝撃で紙クズのように吹き飛び、無事な兵士は武術とは無縁な力業で千切っては投げ千切っては投げを繰り返す。
狂戦士と化したアテナの活躍で残り一割を切ったところでリヨン王子に変化が起こった。リヨン王子からドス黒いオーラが立ち上ぼり、時間が止まったと勘違いしてしまう異様な雰囲気が充満する。
「貴様ら、いい加減しろよ(怒)」
ザッシュン…………ドコオォォン
「ぎゃあぁぁぁぁ!」
「えっ!?アテナ!」
一瞬の出来事に全員が反応出来なかった。
数十㍍と離れてる壁から跳躍し狂戦士と化してるアテナを一閃で吹き飛ばしたのである。アテナのHPは全損してはないが、一割を切っておりギリギリでしかも気絶している。
「王子、にゃたしがアイツを押さえてる間にアテナを」
「はっ!頼む。シャルル、シャーリーのサポートを」
「王子様、お任せを」
あまりの状況で呆然自失になっていた王子はシャーリーの渇で我を取り戻し、アテナへと近寄りポーションを何本か使用し全回復出来た。
━━━━クエスト更新━━━━
・クエスト:リヨン王子を倒せ!
・クリア条件:リヨン王子を倒す事
・失敗条件:全員の死亡又はエラの死亡
・クリア報酬:???
アテナの介抱してる間にクエストの更新があったようで、やはりあの程度では終わらなかったか。
それも、リヨン王子がボス的立ち位置だったとは予想外だ。だが、この威圧感は何処かで感じた事あるような既視感を王子は感じていた。
「にゃったたたたっほわっにゃぁぁ(にゃんですか?この悪寒は)」
シャーリーの怒涛の連続攻撃をほぼ受け流してるリヨン王子。一般のモンスターと違ってAIがある分、戦いずらい。
モンスターの最強種と言われるドラゴンですら"受け流す"という行為はしてこない。攻撃が防御を上回れば攻撃は通るものだ。
「うっふふふふっ、我の恋を邪魔しないで戴きたい」
「にゃふふふふっ、笑っちゃうにゃ。あんたのは、ただのおんにゃ好きにゃだけにゃ。ただの変態にゃ」
「な、なんだと!我の何処が変態だと言うのだ!女性を優しく扱い紳士として振る舞う。これの何処がいけないと言うんだ!」
シャーリーの言い分にキレ気味に答えるリヨン王子。何かオーラの量が増え色も更に黒くなってるような気がする。あれって何かに憑依されてるってパターンじゃねぇか。
「さっさと正体を現すにゃ。色欲に溺れし者」
「……………何故、我の正体に気づいた?」
「それは教えないにゃ♪」
実を言うと、シャーリーは話してる間に鑑定をやっただけである。それにより、相手の正体が判明したのだ。
ただし、暗黙の了解で一般のプレイヤーに鑑定を使うのは御法度になってるので注意が必要だ。ただ、レッドプレイヤーつまり、犯罪プレイヤーはその限りではない。
「ふふふふっあっははははっ、良かろう。正体を見破ったご褒美だ。我の本当の姿をお見せしよう」
「見せなくて良いにゃ、さっさと居なくなれにゃ」
「そうだな。変態とこれ以上関わりたくないものな」
「ハチの巣になりたくなかったら、消えて下さい」
シャーリーに便乗して煽る。まぁ内心、もう戦いたくないということもあるが。
「…………ふぅ、嫌われたものだ。しかし、ここで姿を現す我である」
リヨン王子を覆っていたドス黒いオーラが剥がれ人の形に変形する。見た目は五十代程のダンディーな男性で、顔上半分に仮面舞踏会で着けそうな仮面を着けている。
一番特徴的なのは全身を覆うマントだ。まるでバラエティー番組で着替えた服を見せる前に着けるあのマントみたいだ。
「これが我の本当の姿ぞ」
いや、別に誰も期待はしてないから。
「そして━━━」
また何かあるのか?
「これが我の真の姿ぞ」
色欲に溺れし者は、そう叫ぶと羽織ってたマントを投げ捨てるように上空へと放り投げた。
「本当に変態だったよ。名前からして変態だけど」
「これは…………酷いにゃ」
「……………ガチャ、バンバン」
マントの中身は…………女性物の下着だった。本当に変態…………変質者であった。
この姿に対してシャルルは無言で銃を撃つ。うん、どんどん撃っても構わないから。
「ちょっ!痛っ痛っ、止めっ止めて。止めろって言ってるだろうが」
杖をまるで剣のように扱い斬擊を飛ばしてきた。それに驚いたシャルルは間一髪で避けたのは良いが、弾が当たってるのに無傷の事実に衝撃を覚える。どんだけ硬いんだ!