五十五話シンデレラ42
遅くなってすみません。
「待ってくれ!」
エラが走り出口の階段に差し掛かる時に追い掛けて来たリヨン王子がエラの腕を掴んできた。
「きゃぁぁ、何をするの!いゃぁ~、離して」
それはもう、リヨン王子の目が狂気じみてエラじゃなくても怖すぎてキモい。それに…………汗臭くてエラには耐えられない。
「私の妃になっておくれ」
「ハァハァ、おぉ!やっと…………やっと王子にお眼鏡にかなう女がおったぞ!これで我が国は安泰じゃ」
リヨン王子の後を追い掛けて来た大臣らしき男が泣きながら嬉しそうに言う。それを聞くだけでは、今までリヨン王子の方が女性の方をふってきた風に聞こえる。
「とりゃぁぁぁ、エラを離せ」
リヨン王子に何の躊躇入れず王子は蹴りを入れ吹っ飛ばした。その衝撃でリヨン王子は口から舞踏会で食べた物が吐き出されて臭い匂いが充満してる。
「ぐふ、おうぇぇぇぇ。私の何処がいけないんだ!」
「それは……………」
「それは?」
「デブで太って汗臭いし」
「グッハッ」
「私より三十歳も年上なんですもの。そんなの嫌です」
ということは、エラの年齢は十八歳だからリヨン王子は四十八歳か。
うーん、そんな歳の差婚は昔の貴族王族や芸能人ならたまに聞く話だけれど、普通に考えて一般市民には無理だよね。中には金に目がくらんでていうのはあるかもしれないけれど。
「しっくしっく」
エラの言葉にリヨン王子は膝をつき泣いてる。だが、自業自得?な気がする。
「…………大臣よ、あやつらを殺せ。私を辱しめ、ふった事を後悔させてやれ」
「はっ!御意に」
えぇぇ!フラレた腹いせに殺すとかそんなのありなのか。やってしまったのはしょうがない。丁度、クエストが発生したみたいだし、やってやるか。
クエスト発生!
━━━城の兵士を倒せ━━━
・クエスト:エラを守りながら兵士を倒す。
・クリア条件:兵士を全員倒す。
・失敗条件:エラが死亡又はプレイヤー全員死亡
・クリア報酬:EXP5000、エラが仲間になる
・受けますか?イエスorノー
エラが手に入るならイエスに決まってるだろう。ノーなんて考えられない。これで成功すればシャルルに加え二人目だ。
「悪いな、巻き込んでしまって」
「何を言ってるの、タカちゃん。あれは私だってやっていたと思うし、今更だよ」
「ニャハハハ、その通りにゃ。これで初のシンデレラをゲットにゃ」
「新しい女が加わるのは不満ですが、私は王子様が決めた事なら良いです」
スナイパーとして遠くにいたシャルルまでも来て大乱戦というクエストが始まった。
「おらおらおら、真空斬・乱れ打ちだぁ」
クエストを始める前、王子は新たな刀のスキルを取得していた。前のクエストでレベル18にスキルポイントは25に上昇、そこから5ポイントを使い取得したのだ。
飛ぶ斬擊である真空斬は何人もの兵士を巻き添えにして飛んでいく。本来なら兵士はNPCのはずだが、こういうクエストの場合だけモンスターと分類されるらしく倒された兵士は…………モンスターと同様ポリゴン化して消滅していく。
「ふにゃふにゃふにゃ、八卦・空烈掌」
さすが……………格闘家の最終職である武神だ。兵士を拳一発で倒してる。ただ、猫族だからか、兵士が倒れる際につく拳の跡が肉球の形になっている。それだけ見ると可愛いと思ってしまう。
見た目はともかくとして、これでもトップランカーの一人だ。まぁこの中では古株で圧倒的なレベルだからな。
えっ?年上とは言ってないよ、リアルで同年代なのにそんな事言ったら………………殺されてしまうよ。
バンバンバンバンバンバン
と、シャルルも二丁拳銃で兵士の急所を狙い負けじと一発で仕留めている。
「……………フッハハハハ、死ね死ね死ね死んじまぇ」
なんか、シャルルはシャルルでだんだん戦闘狂に近付いてきてないか?頼もしいが俺の可愛いシャルルが遠いところに行きそうで嫌だが『そんな戦ってるシャルルも俺は好きだ』と叫びたい。
「うぅ、私の矢がなかなか通らないよ」
モンスターとは違い兵士の鎧や剣に矢が弾かれアテナの攻撃が届かないでいた。
「こうなったら、奥の手を出すしかないかな。出てこい、カレン」
『呼んだかしら、マスター』
な、なんと!アテナが呼んだというか召喚したのが、前に暴走した清浄なる化心が出てきたのだ。
また暴走しないか恐怖はあるが、今現在はアテナに従順みたいだし問題ないだろう。それにしても…………名前を付けたのか。
うーん、名前に反して化け物のような気がするが…………ブルブル、何か寒気がしたような気にしないようにしよう。
「一緒に戦ってくれないかな?」
『えぇ、マスターの命令なら構わないわよ』
「それじゃ、行くよ」
「『化心融合』」
王子が寒気を感じてる間にカレンが光の球に変化しアテナの体に吸い込まれる形で合体したのだ。アテナの髪が白く変わり頭にウサミミが生えていた。