五十三話シンデレラ40
前から歩いて来たのは、遠目から見たら一見どこかの兵士と間違うかもしれない。だが、近くに寄ると全然違う。
骸骨が鎧や剣を装備して歩いてる。よくファンタジーで出てきそうな骸骨のモンスター、スケルトンと呼ばれるアンデット系のモンスターに酷似していた。実際、それなんだろうけど王子は鑑定使えないから分からずに戦っている。
お化けやパニック系が苦手なアテナはというと━━━━
「イヤぁぁあぁぁぁ、こっちに来ないでぇぇぇぇ」
叫びながらでも流石は弓術士だ。一定の距離を常に取りほぼ百%で矢を命中させていく。だが、相手が悪い。
アンデット系モンスターを倒すには、体を粉々にするか、光又は聖属性の魔法かその属性が付与された攻撃で浄化させるしかない。
それに対してアテナの攻撃は、矢による点の攻撃だ。それでは、粉々に破壊するまで時間が掛かりすぎる。
悲鳴をあげながらも矢による攻撃の弱点を悟ったアテナは攻撃しながらもスキル取得するという器用な真似をした。
「もうさっさと死になさい。"光の恒弓雨"」
上空に光輝く矢を一本放った。本来ならその光の矢が弧を描き落下してくるはずだが、何十何百との矢になり敵にのみ降り注いだ。名前の通り光属性が付与されてるようでスケルトンは一匹も逃さず全滅していた。
「にゃしか、弓術士が習得出来る光属性中級戦闘スキルだにゃ。しかし、今のアテナのレベルで取得出来たかにゃ?そんにゃはずは…………ブツブツ」
「まぁアテナのお陰で結構時間的に余裕出来たんじゃないか?」
「えっへん、もっと誉めて撫でて」
「あぁ偉い偉い。ありがとな」
フローラがいないせいか、いつもよりも甘えてくる。まぁ俺としては嬉しいけど…………すごい後方から殺気が伝わってくるんだけど、視認出来る範囲には誰もいない。
アテナの頭を撫でて…………実際に手触りが良く撫でてる方も飽きないというか癖になる。
それが仇となったかもしれない。ここにはもう一人いるのだ。ジト目で王子とアテナのやり取りを見て何を思ったのか急にパシャパシャとスクショを撮り始めた。
「ち、ちょっと何を撮ってる!」
「にゃ♪ここにいにゃい連中に見せようと」
ちょっ!そんな危険な真似をして何になる!
メリッサとニムエならまだしも、フローラに見られたら何を言われるか。
それにさっきから後方の殺気が強くなってるのだが…………犯人は一人しかいない。
それが答えだと言わんばかりに銃声が遠くで鳴り響き銃弾が俺の頬を掠り地面に跡を残す。「いつでも殺れますよ」と声が聞こえてきそうだ。
このゲーム内で、こんな遠距離攻撃が出来るのはガンマンである赤ずきんシャルルのみだ。嫉妬だけで撃ってほしくないものである。
「さぁ、敵はいなくなったし早く行こう」
霧が晴れ、あんなに見えなかった城が視認出来る様になった。これで時間内には着くだろう。前のクエストが難すぎて今回は何か呆気ないというか楽すぎる気がする。そう思ってると━━━
「うっへへへへ、金目の物を置いて行きな」
スケルトンの次は盗賊?みたいなのがぞろぞろと現れ始めた。馬車の前を塞ぐ形で、これでは倒さない限り前に進めない。もし、プレイヤーなら倒しても大丈夫なのか?倒しちゃっても別にレッド(犯罪者)プレイヤーにならないよね?
「にゃぁ、にゃれは盗賊にゃね」
それは誰から見ても分かってる事だから。シャーリーとしては珍しく分かりきってる事を言ってるんだと王子とアテナは思ってるが、言葉の意味が違った。
「にゃふ、ふにゃりは勘違いしてるにゃ。にゃれは盗賊というモンスターにゃ」
「「えっ!」」
も、モンスター!一見、レッドプレイヤーの集団だと思っていた。そんなに出現率は多くないが、他のモンスターと違う点がある。装備や金を置いて行くと見逃してくれるらしいのだ。
「なるほど、強いのか?」
「強いにゃ。にゃが、我々の後ろには、にゃれが控えてる?」
ガンマン……………今はこう呼ぼう。スナイパー・シャルルと。
バンバンバンバン
「おい、どうした!おめぇら」
「目に見えない攻撃です。お頭」
「そんな訳あるか!目の前の馬車と護衛の装備を奪え…………ぎゃぁぁ」
「「「お、お頭!」」」
どうやらリーダー核の男…………モンスターか、見た目が人間と同じで躊躇してしまうがモンスターだと分かれば容赦する理由がない。
「おぅりゃぁ、なめんなよ」
「ぎぃやぁぁぁ、強いすぎる。に、逃げるか」
もう一つ、他のモンスターと違う箇所がある。それは戦闘の途中で逃亡する時かあるらしいのだ。
だが、そんな逃亡を許さない。
バンバンバンバンバンバン
逃亡の予備動作をした盗賊を真っ先にスナイパー・シャルルが自慢のスナイパーライフルで撃ち抜く。