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五十二話・シンデレラ39

「あなたを綺麗な姿に変身させてあげましょう」


 妖精フェアリーがそう呟くと杖を振り上げた途端に固まった。何か困った表情になっていき終いには蒼白となっていた。


「いやぁあはははは、呪文忘れちゃった」


 ガクーン、とみんなして転けそうになった。


「おい、自称妖精それで大丈夫なのか」


「自称じゃないもん。妖精だもん」


 プクゥっと頬膨らますフェアリー。

 こういう仕草は妖精に限らず女の子なら可愛いが、この自称妖精の正体を王子たかしは知ってる。だから、ジト目で目の前の自称妖精を見詰める。


「それなら呪文を早く思いだせよ。エラが困ってるじゃないか」


「良いんですよ、王子様。妖精さんもわざわざ私のために来てくださったのだから」


 なんて良いなの、俺泣きたくなっちゃう。絶対に舞踏会へと送り届けなきゃ。悪いヤツが行けてエラみたいな良心的な者が行けないなんて間違っている。


「でも、エラだって舞踏会に行きたいんでしょ」


「今日だけじゃないもの。諦めるわ」


 そ、そんなぁ。諦めるものか、絶対にエラを舞踏会へと連れて行く。


「アダラカタブラじゃなくて…………えーとえーと、そうです。ビビデバビデブゥ」


 ようやく、思い出したのか。呪文を唱え杖を振りかざすと、エラの薄汚れた服が嘘のように俺がプレゼントしたドレスよりも優雅で綺麗なドレスを身につけ、ガラスの靴を履いたエラがそこにいた。


「さぁ次は馬車と御者だね。そぉーれ」


 光の粉がカボチャに掛かると馬車へと変化し、あのエラの仲良しなネズミ二匹が馬に変身したのだ。御者として近くにいた犬が変身し馬車の操舵席へと着席し、これで出発する準備が整った。


「さぁエラこれで舞踏会へ行けるわ。ただし、絶対に守ってもらいたい約束があります。それは、十二時には戻ってくるように」


「妖精さん、分かりましたわ。必ず、約束お守り致します」


 エラが妖精フェアリーにお辞儀をし馬車に乗り込んだところでクエストが発生した。




 ・クエスト:エラをシトロンの城へ無事に届けろ


 ・クリア条件:エラをシトロンの城へ無事に届ける事


 ・失敗条件:エラが死ぬ事・二時間以内に到達しない事


 ・クリア報酬:EXP1000、エラの好感度+100、2000ゴル


 ・受けますか?イエスorノー



 えっ!ただお城に届けるだけなのに死ぬ事に合うのか。何かモンスターでも出てくるのかな?まぁどうにかなるか。


「どうやら、クエスト発生したみたいだ。準備は大丈夫か?」


「私は大丈夫にゃ。そういえば、赤ずきんちゃん…………シャルルがいにゃいようにゃけど?」


「そういえば、いないわね。まぁ私にとっていない方が━━━━」


 シュッパン


「ひぃゃぁぁぁぁぁ、一体何が起こったの!」


 地面を見ると、銃弾がめり込んで煙が立っていた。ここはまだ街内なのでアテナにはダメージは通ってないが、頬をかすったのである。


「あっ、言うの忘れてたけど、シャルルはスナイパーとして遠距離から俺達を見てるから」


「えっ!何それ…………怖いんですけど」


 アテナは周囲を見渡すが、シャルルは見つける事は出来ずにいた。だが、シャルルからはスナイパーライフルのレンズからはこちらの姿は丸見えである。


「まぁ俺達を守るためだから、我慢してくれ。何か嫌な予感がするんだ(この直感がハズレてくれれば良いんだけど)」


 王子たかしがそう言うのと同時に馬車は出発し、その横を三人(+一人)でついて行くように歩き出した。

 馬車のスピードは早歩き程度で、周囲を警戒しながらでも余裕でついて行ける。城までは街道なのでモンスターが出るとは考えずらいが、クエスト中なら出る可能性は充分あると年長者(ゲーム内で)のシャーリーが言うなら間違いない。


「もちろん、イエスしかないしょ」


「今回のクエストは楽勝かな?」


「油断は禁物にゃ。Sクエストは、にゃん易度が高くにゃる傾向ある気がするにゃ」


「Sクエスト?まさか、ストーリークエストの約とか言わないよね。あの情報屋が、そんな単純な事言わないよね」


「…………すまないにゃ。許してくれにゃ」


 モンスターが出現さないせいか警戒しながらも雑談する余裕すら出てくる王子たかし一行。その折、急にうっすらと霧が出始めて何かが出てきそうな予感というか絶対に出てくる直感がする。


「…………なぁ何か幽霊とか殺人鬼とか出そうな雰囲気なんだが」


「や、止めてよ。私そういうの苦手なんだから」


「ふにゃ、その予感当たったようだにゃ」


 ガシャンガシャンっと鎧のような音が前方から響いて来る。その音に「ひぃ!」とアテナが怯える姿も可愛いが俺の彼女だからこの時に守ってあげたいと王子たかしは心の中で張り切るのであった。

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