四十八話・シンデレラ35
「アァン、モグモグ………ゴクン」
えっ!まだ食べちゃった?!それもさっきの比じゃなく二切れ程を一気に食べたのである。
ワタルは急いでエラのステータスを確認すると、案の定エラのステータスには状態異常:酔っ払いと記されていた。
「ヒック、王子しゃま………りゃたしのことしゅきしぇすか?」
「………あぁ、好きだよ」
何とか会話は成り立つようで王子は答える。酔っ払いとしては軽度と王子は判断した。ただし、酔っ払いというのは何を仕出かすか分からないのが厄介であるのを王子は知らない。
「そうれすか…………りゃら、ひょうこを見せてくらさい」
「しょ、証拠!」
一体何をすればいいんだ!無茶ぶりじゃなきゃ良いんだが………というか酒の匂いがしない酔っ払いって違和感ありまくりである。まるでコーヒーで酔っ払う蜘蛛やマタタビで酔う猫のようだ。
「証拠ってどうすれば良いのかな?」
酔ってるからか目元がトローンと半分くらい閉じ、妖艶な雰囲気をかも出してるエラからワタルは冷や汗を掻きながらジリっジリと後退して距離を取る。
「はれ?ぼうして、ふぁなれるの?」
相変わらず呂律が回ってないが妙に威圧感があるのは何故だろうか。俺以外の者がここにいたならば同じ事を感じたと思う。
「いや、それは━━━」
酔っ払い状態のエラが王子の右腕を掴み引っ張りベッドに押し倒した。そして、押し倒した反動でエラと王子の唇の距離がゼロとなった。
「んむっ!」
「チュルレロ」
数秒間の時間のキスだが、してる本人からしたら数分間………いや、もしかしたら数時間と二人は感じてるかもしれない。
そんなキスから唇と唇が離れエラが上半身を起こした時に着崩れたのかボロい服から左側の胸が露になった。
「ひゃっ!しゅ、しゅみません。王子しゃまにお見苦しい物を」
服の着崩れを直す発想が無かったのか掌で隠すが隠しきれず零れ逆にエロいかもしれない。所謂、手ブラ状態な感じだ。そんなエラの姿に王子は「ゴクン」と唾を飲み込んだ。
「そんな事ないよ。綺麗だよ、触って良いか?」
王子自身もエラのエロさに頭を殺られたようで冷静な判断が出来ないでいる。つまり、エロ煩悩化となっているのだ。
「うん、王子様なら良いよ………ひゃん」
服の上から分からなかったが、おそらくDカップ…………Eカップはあるかもしれない。俗に言う隠れ巨乳というやつか。というか、俺の周りにいる女性(妹以外)って巨乳多くないか?
まぁそれはさておき、エラの胸…………違うな、メロンちゃんを揉んでいく。うん?何故メロンちゃんと言い直したと?それはな…………親に聞い…………いや、それは不味いか。では、今の時代スマホやパソコンという利器があるのだ。自分で調べたまえ、わっははははは。
と、バカな事を王子が考えてる途中で正気に戻り、エラの胸から手を離した。
「ハァハァ、一体全体俺は何をやってたんだ?エラ大丈夫か?」
エラは王子の上に覆い被さる形で「スゥスゥ」と寝息をかきながら寝ていた。王子が何度か揺さぶっても起きる様子がない。
「仕方ない、エラはこのまま寝かせて一旦みんなの所に戻るか。さてさてさーて、問題はこの家から無事に出れるかだな」
王子はエラに掛け布団を掛けベッドから降り、ドアに向かうとした時に気づいた。誰かがドアの向こうにいる気配がすることに。
ギィギィギィバタバタバタ
ドアのノブを回すと同時にドアの向こうにいる誰かは大慌ててで下の階に降りていったのである。
うーん、今までやり取り全部聞かれていたか?まぁこの家には、エラを除いて継母と姉二人しか居ないはずだ。その三人の誰かだろうが、後々面倒事にならなければ良いが…………
それよりも、今はこの家から脱出が先だ。スキル"気配遮断"を掛け慎重かつ素早く下の階に降りる。
「よし、誰も居ないな」
廊下に誰も居ない事を確認するが、端から端まで月明かりのみでシンデレラの話はホラーではないが、エラの部屋に居た時とは大違いで地味にホラーっぽい雰囲気になっている。
学校や病院等々昼間は怖くないが夜になると、怖くなるよね。それと同じ事だ。
「ゴックン、流石に何も出ないよな。ここは………一気に通り抜けるべきだな」
薄暗いが階段のある箇所を確認し駆け出した。べ、別に怖いからじゃないからな。早くしないと出会って見つかるリスクが高くなるからだ。
王子は出来るだけ背を低くし一歩一歩の歩幅を広くし階段まで走り抜け一階へと降りるのである。
そして、誰も来ない内に台所近くの倉庫に着く事がどうにか出来た。後は外に出るのみである。
「や、やっと外に出る事が出来た。もうこんなクエストは………やりたくないな」
エラと良い雰囲気になったが、その分ホラー系が苦手な王子としてはリスクが高いクエストだった。