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四十六話・シンデレラ33

『はーい、どなたですか?』


『俺だぜ。エラ開けてくれ』


『まぁネズミさん、いらっしゃい』


 ギイィギイィっと扉が開き俺とエラの目と目が合った。突然の来客にエラは頭の処理が追いつかないのか固まってしまう。その来客が別の国の王子様と思ってる俺ならなおさらだろう。


『この人間なら大丈夫だ。エラの味方だよ』


「えぇ、大丈夫よ。突然の事でビックリしただけ…………それにしても何故王子様がネズミさんと一緒に?」


『ここで立ってもなんだから、中で話さないかい?』


「あっ、すみません。気づかなくて………どうぞ」


 エラの案内で部屋の中に入る。想像通りに質素な内装で簡易的なベッドと蝋燭が置ける位の小さなテーブルしかない。


「汚いけれど、お座りになって」


「いや、汚くないよ」


「うふふふふ、ありがとう。それで王子様がどうして?」


『それはエラにプレゼントを持って来たんだよ』


 ネズミがそう言うと王子たかしに視線で例の物を早く出せと訴え掛けてきたのでイベントリから取り出した。


「はいはい、実はエラにプレゼントがあるんだ。これを」


 王子たかしの両手の中には真っ白な大きい箱が掲げられており、それをエラに渡した。


「これを私に?」


「良いから、開けてみて」


「えぇ、まぁ素敵なドレスだわ」


 箱を開けるエラは素敵なドレスを前にうっすらと涙を浮かべ頬の上に伝った。


『か、悲しいのかい?』


「いいえ、嬉しいの。こんな素敵なプレゼント初めて貰ったから」


「これを着て今度の舞踏会に行ったらどうかなって」


「まぁ素敵………えぇそうするわ。ありがとう」


 ━━━クエストクリア━━━


 ・クリア報酬:EXP1500、エラの好感度+100


 エラが感謝の言葉を口にした瞬間、クエストクリアのアラームが鳴り、ようやく長目なクエストが終わった瞬間だった。


(クエストクリア出来たのは、みんなのお陰だから何かお返ししないと………というか何かオネダリされそうな予感がする)


「後、まだあるんだ」


 王子たかしがイベントリから取り出したのは、まるでピザ配達に使用されるような箱を小さなテーブルの上に置いた。


『人間これは何だ?』


『何か良い匂いがする。ジュルリ』


「開けて良い?開けて良い?」


 子供みたいにキラキラと目を輝かせながら、エラは俺に聞く。プレゼントや贈り物を貰った経験なんて皆無なんだろう。だから、こんなにはしゃぐエラを見て俺は可愛いと思った。


「あぁ、これは俺がエラのために作った物だ」


 エラが二つ目の箱を開けた途端、膨満な香りが部屋全体に充満した。出来立て時よりは香り落ちしてる、というかしてないと困る。また、匂いによってゾンビ化するかもしれないから。


「ふわぁ、何この香りは………食事取ったばかりなのに、お腹が減っちゃうよ」


『おい人間………お、俺達も食べて良いか?』


『食べて良いのですか?』


「あぁみんなで食べよう」


 王子たかし自らナイフでアップルパイを切り分け一切れを皿に分けネズミ二匹の側へと置いた。

 ネズミは小さいし一切れで良いよな。一切れのアップルパイが置かれた皿を慣れた手つきで二匹で持ち上げると、ネズミ穴から出て行った。


『後は若い二人でごゆっくりして下さいね』


 ネズミの片方が穴からヒョッコリと顔を覗かせそんな事を言う。ネズミにそんな事言われるなんて屈辱だが、エラと二人きりになれた事には感謝かな。つうかネズミは三年位しか生きられないのに言われたくねぇよ。あっ、人間換算したら結構な年になるのか?


「もう、ネズミさんったら…………ねぇ、王子様は私と一緒に居て楽しい?」


「うん?当たり前じゃないか。こんな可愛いと一緒に居られるなんて男冥利に尽きるものだよ」


「か、かわ………可愛い………私が可愛い………」


 エラが可愛いと連呼する度にヤカンが沸騰するかのように顔全体が真っ赤になっている。他人に褒められる事に慣れてないんだろ。こういうとこも可愛いく思えてしまう。


「王子様、私にお世辞を言わなくても良いんですよ?」


「いや、お世辞じゃないんだけど………」


「私よりも素敵な方はいますよ。例えば………私のお姉様とか」


 えぇー!あの姉二人が………あり得ないって!姉二人を選ぶ位ならまだ豚の方がマシじゃないか。


「そんな事ないよ。エラのお姉さんは、エラに意地悪するよね。そんな事やるヤツは俺は嫌いだ。エラは外見と内面、両方美しいし可愛いと俺は思うよ」


「うぅ、王子様って意外に意地悪です。私の何処が可愛いって言うのですか!」


 プウゥゥっと頬を膨らませ、そっぽを向いてしまった。そんなとこも可愛いのだけれど、口に出したらさらに不機嫌なりそうだしどうしようかな?


「可愛い………家にお持ち帰りしたい」


「えっ!今なんて………」


「あっ………つい、本音が出ちゃった」


「………王子しゃま、本当にひゃたしの事………ひっく可愛い思うのにゃら………証拠を………ひょうこを持ってきなひゃい」


 えぇー!もしかして………エラ酔っ払ってる!どういう事なの?

 良く見るとエラの口周りには、何かを食べたカスが付いていた。ここにあるのは一つしかない。アップルパイだ。

 食べやすいようにワンホールを一切れサイズに切ったのだが、一切れ分のアップルパイがいつの間にか二口程食べたようだ。


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