四十二話・シンデレラ29
シャーリーの鑑定結果を何度見ても結果は変わらない。ワタルの料理スキルは取得する際に1ポイント使用しただけでレベル1のはずだ。それなのに、ワタル作のアップルパイは最高ランクを記録した。
「………なぁ、シャーリー聞きたい事あるけど良いか?」
「うんにゃ?予想つくけど言ってみるにゃ」
「俺は初心者だから分からんけど、最高ランクのアイテム作ったプレイヤーっているのか?」
自分で初心者とは言ってるけど、もう周りからは"何処が初心者やねん"とツッコミが来そうだ。それだけ短時間に実力が急成長している。
「自力で作ったという前例はないにゃ。それもスキルレベル1でにゃんて聞いた事ないにゃ」
自力?自力で製作する以外にどうやって手に入れるっていうんだ?まさか、NPCから買うとは言わないよな!
「んにゃ?その様子だと有料アイテムを知らないのにゃ?」
有料アイテム?実際にお金が掛かる━━つまり、課金ってことか?まぁ、俺は課金には興味ないしな。
「つまりはその有料アイテムの中にランクアップアイテムがあるんだ」
メリッサが補足する。つまりはこう言う事らしい。例えば、Aランクの剣があるとしよう。Aランクの剣にランクアップアイテムを使用すれば、1ランク上のSランクの剣が手に入る訳だ。
「んにゃ!私が言おうとしにゃのに」
「悪い悪い」
「だにゃ、ランクアップアイテムは武器や防具に使っても料理や回復アイテム等の消費アイテムには使用はしにゃいのにゃ」
メリッサに負けじとシャーリーは補足を付け足す。
シャーリーの説明は理解出来るかるかもしれない。誰だって長く使用する武器防具ならランクを上げて強化しようと思う。しかし、消費アイテムをランクアップしても一回切りなのだ。効果が強くても一回切りだと割に合わないだろう。
「それにしても、これを売ったら高く売れそうにゃ。にゃふふふ」
「ダメだよ」
「にゃふん(-_- )」
「みなさん、こんなとこにいたんですね」
そんなところにシュタっとくノ一のように屋根から着地するフローラ、どうやらアップルパイは売れたようだな。
俺が作った訳じゃないけど………だって、材料がもったいないじゃないか。あのまま俺が作り続ける訳にはいかなかったし、食材には罪はないのだから。
「さてと、フローラも戻って来た事だし………フェアリーの所へ行くか」
「すみませんが兄さん」
「あそこには近づきたくないよ」
「以下同文」
「さらばにゃ」
「ごめんね、王子様」
みんなして、同行拒否する。シャーリーに関しては即ログアウトしやがった。そんなに、イヤか。希望がもう一人いるが━━━
「………シャルルは━━」
「王子様、私は用事があるので………」
用事って、シャルルお前は俺からそんなに離れられないじゃないか。
「そ、そうか。じゃあ、行って来る」
結局は全員に拒否られ一人寂しく、装飾職人フェアリーのとこへとぼとぼ向かうのであった。
べ、別に一人だから寂しくないんだからね。グスン、あそこは某遊園地のお化け屋敷より雰囲気があって怖いんだもの。
「ふぅ、入りたくないな。でも、入らなきゃクエストは進まないしな。悪魔の城へいざ行かん」
ギイィィっと扉を開ける。最初に来た時と同様、中は暗く雰囲気が丸出しである。
「お、お邪魔しまーす」
キラっ━━ヒューン
何かが光ったと思ったら、こちらに向かって来た。
「痛っ」
落下した物を拾うとオタマだった。何でオタマ?当たった頭を擦ってると━━━
「誰が悪魔だ。誰が」
奥から現れたのは少女のフェアリーだった。現れたと同時に照明が灯り明るくなり店の中が鮮明になった。
「き、聞こえてたんですか?」
「当たり前だよ。私は地獄耳なのは周知の事実だからね」
いや、知らんけど。
「す、すみませんでした。あっ、これが報酬の料理です」
イベントリからSSSランク・女神が作りし魅惑なアップルパイ王子作を取り出しフェアリーに渡した。
「うぉ、何だ!この魅惑な香りは!これをお主が作ったと申すか」
何かアップルパイの香りにやられてないか?口調が変わってるぞ。大丈夫か、この婆さん━━ゲフンゲフン、フェアリーさん。
「そうだけど、ドレスは出来てるのか?」
「そう急かすな。これでいいんじゃろ」
テーブルの上に箱が置かれ、中身は畳まれたドレス、ダイヤで装飾されたティアラとイヤリングが入っていた。見ただけで腕は良かったと感心する。まぁ、これはクエストアイテムだから、プレイヤーには装備出来ないがな。
ドレス一式の箱をイベントリに仕舞うとクエスト更新のアラームが鳴った。確認してみると━━━
クエスト更新
・クエスト内容:ネズミ二匹に会え
・クリア条件:エラの家にいるネズミ会う事
・クリア報酬:???
どうやら、またクエストが更新されたようだ。これは直ぐ終わりそうだ。
「それでは、フェアリーさんありがとうございました」
「また、来なさい。土産も忘れずにの」
「あはははは、それじゃぁまた」
もう二度とこんなとこ来るか!みんなを待たせてるし、急いでエラの家に行くか。