三十六話・シンデレラ23
「おい、新聞部。誰かいるか」
王子は昼休みに、素早く昼飯を食べ新聞部部室に来てるのである。
新聞部は学校全部活と比べると、情報提供者が来やすいようにオープンで部室の場所は誰でも知ってるって言うか有名である。
「いらっしゃい…………あなたはまさか!王子様かね」
「まぁ、そう呼ばれる時もありますね」
そこまで驚くのかと、若干引きぎみに肯定した。だが、それが後悔する事になるとは王子は、この時思ってなかったのである。
「いやー、本物が来るとは、思いもしなかったな。これからインタビューさせてくれないか」
えぇー、そういうの苦手なんだけどな。
「な、なんで俺なんかを」
「自分をそんなに卑下しなくても………あなたは、学校で━━━いや、この町では………違うな。県クラスで有名だよ」
はぁー!?えっ、俺ってそんなに有名なのか!うーん、そういえば俺目当てに、全く知らない女性客がバイト先に何度か来てたっけか。
「あはははははっ、俳優や歌手とかじゃないと普通自覚ないよな。すまないね」
この新聞部部員はスマホを取り出し、操作しとあるSNSを見せてくれた。そこには、バイト先で不思議の国のアリスに出てくる帽子屋に扮して接待している俺が写っていた。
コメントを見てみると━━━
《王子様、今日もクールでカッコいい》
《このラテアート王子様が描いたんだって、超器用》
《今月の衣装は………不思議の国のアリス?》
《うん、そうだね。確か帽子屋?》
《今度の王子様のバイト日っていつ?いつ?》
《王子様とツーショット超撮りたい》
《王子様って彼女いるのかな?》
《うーん、女の噂聞かないよ》
等々、全部見てたらキリがない。それほど、コメントが寄せられている。それも、どれもが女性ばかりだ。
「………これマジですか?」
王子のバイト写真一枚に全部は見てはいないが、コメントのカウント数が、なんと一万は軽く越えていた。
「超マジ卍」
新聞部部員にスマホを返し、ここまで有名なのは王子も予想外だ。なるほど、委員長に支払われた報酬額にも納得かもしれない。
「だからさ。インタビューしたいんだよ。ダメかな?報酬だすよ」
「………うーん、どうするかな?」
「これなら、どうだ?」
電卓を取り出し、ブツブツと何やら計算すると俺に見せて来た。なんだ?この数字は?
「インタビューを受けたら、こんだけの報酬をやろう」
報酬って言っても食券だけどな。しかも、学校では珍しく一般人も利用出来るのことだ。
たまに、学校外からも情報を食券で買い取る事もしてるらしい。学校での部活動だから直接お金でのやり取りは、さすがに御法度みたいだがな。
「えっ、こんなに!うーん………だが、断る」
「そ、そんな━━━」
「と、言ったら?どうする」
ズッコーっとお笑い芸人さながらのズッコケた。そういえば、まだ名前聞いてなかったな。つい、忘れていた。
俺の名前を相手が知ってるものだから、俺も相手の名前を知ってると思い込んでいたな。
「そういえば、名前聞いてなかったな」
「言ってませんでしたってけ?」
「ああ、まだ聞いてない」
「僕が、この新聞部部長の岡田慶之助です。お見知り置きを」
「えっ!部長なのか」
まさかの部長本人とは、驚きである。確かに、あんな報酬をポンっと出せるなんて平部員なら無理か。
「それで、インタビューの了承を取れたと認識しても良いのかな?」
「あぁ、それで構わない。ただし、条件がある」
「条件?」
「このSNSの事はご内密に頼む」
「彼女には知られたく無いってか、良いぜ」
「悪いな。それで聞きたいことってなんだ?」
「まずは、これを見てくれ」
再び部長は自分のスマホを操作して、とあるサイトを王子に見せて来た。そのサイトとは━━━
「これは………WGOの掲示板?」
24:無名の魔導師
例の新人が赤ずきんの話世界から出て来たぞ。
25:無名の剣士
あの王子様か?それで結果は?
26:無名の拳闘士
赤ずきんちゃんをゲットしたようだぜ。
27:無名の騎士
おぉ、これで何人目だ?
28:無名の剣士
俺の記憶が正しけりゃ………五人目だ。比較的に多い方だな。
29:無名の暗殺者
おっ、噂の王子様が女性プレイヤーと………ひぃ……ふぅ……みぃ……四人とパーティー組んだようっす。
30:無名の剣士
なにっ!
31:無名の魔導師
ガタッ
32:無名の拳闘士
ガタッ
33:無名の騎士
ガタッ
34:無名の剣士
>>29
み、見間違いじゃないのか?
35:無名の暗殺者
見間違いじゃないっす。スクショ添付しときます。
36:無名の剣士
リア充爆発しろ
37:無名の魔導師
リア充死ねよ
38:無名の拳闘士
こんなに不公平なんだ
39:無名の騎士
俺なんか童貞=年齢なのに!
40:無名の剣士
>>39
あっ、うん。それはわかってたわ
41:無名の剣士
>>39
そんな顔だし
42:無名の魔導師
>>39
下心丸見えだし
43:無名の拳闘士
>>39
(彼女)出来ない限り安心するわ
44:無名の騎士
おっ、お前らいい加減しろよ!泣いちゃうからな
「知ってるって事は、やってるんだよな。こんなスクショも添付されてるし」
「……………」
スクショも添付されて、アバタは丸っきり俺そのものだからな。否定しても、信じて貰えないだろう。誰だよ、こんなスクショ撮ったヤツは。
「ああ、やってるよ。この王子様っていうのも俺だよ」
少し逆ギレ気味に、声を荒げて答える。
「おぉ、まさか自分から白状するとは」
「俺のクラス委員長から聞いてるんでしょ」
「そうか、聞いたんか。まっ、こっちは裏を取れて良いけど………」
「報酬は忘れるなよ」
キーンコーンカーンコーン
昼休み終了のチャイムが鳴り、急いで教室に戻った。