三十5話・シンデレラ22
日常編です
朝食を済ませ、杏璃と杏と一緒に登校をし途中、杏と別れ見えなくなったのを確認すると杏璃が腕を組んできた。
歩く度に王子の腕に杏璃の柔らかくて豊満な胸━━━否、おっぱいが当たったりして、その気持ち良さに王子の脳内ではエロという字しかなかった。
学校の正門直前で王子と杏璃は腕を解き、正門をくぐり玄関まで来ると、なんだか人だかりが出来ていた。どうやら、掲示板に張り付けてある新聞部発行の新聞を、みんなが見ているようだ。
「おっ、やぁやぁ、そこにいるのは王子様ではないか」
駿が『王子様』というものだから、新聞を見ている生徒が一斉にこちらを見てザワザワとざわついている。
「あれが王子様?噂では聞いた事ありますけど、話で聞くより実物の方が格好いいです♪」
「ねぇねぇ、話し掛けてみれば?」
「無理よ、隣にいるのが彼女でしょ。馬に蹴られて死にたくないもの。だって、彼女………生徒会の一員で……あの顔と体型でしょ。絶対に勝てないって」
こちらを見てヒソヒソと女子生徒が話している。こっちにも聞こえてるんだけども━━━
「駿、王子様って何のことだ?お前は俺の呼び方はずっとキングだったじゃないか」
「だって、実際にそこに書いてあるんだからさ。それで何時夫婦になったんだ?教えてくれよ」
クラスメイトの駿が俺の肩を組んできた。あぁー、ウザイ。
「何を言って………」
駿が掲示板の新聞のとある記事を指を指した。そこには『学校の王子様にとうとう恋人が出来たのだ』と、大きく見出しが書かれ、写真もデカデカと俺と杏璃のツーショットで写っていた。それも今日の登校時で腕を組んでいる時のだ。もちろん、目の箇所はモザイクありでだ。
「………なぁ、駿よ」
「なんだい?キング」
「これ剥がしてもいいよな?」
「あぁ、それは出来ないね。ここに生徒会のハンコが押されてるから」
なんとも根回しの良いことだ。というか、早すぎじゃないか。告白されたのが昨日の夜で、この写真が今日の登校中だ。告白された事自体を知らないと、もともと不可能だ。
そうなると、新聞自体を作成したのは新聞部だろうが、情報を提供した黒幕は自ずと限られてくる。
「駿よ、誰が書いたか分かるか?」
「そりゃあ、新聞だし新聞部の誰かだろうぜ」
ごもっともな意見だ。さてと、黒幕には心当たりがあるが………ちゃんと白状してくれるかどうかが問題だ。
「それによ、お前の嫁さん嬉しそうだぜ」
駿が俺の隣にいる杏璃を指して俺も見ると、頬を紅く染めハートが無限に出そうな程クネクネと動いていた。若干、俺でも引くレベルだ。
「そんなに嬉しいのか?」
「だって………だって、これで堂々と大胆に、あんなことやこんなことや出来るじゃない」
「ぷほぉー、それはどんな事ですかな?姐さん」
駿は杏璃の言葉に興奮したのか鼻から血がタラーンと垂れた。
「何、興奮してんの!バッカじゃないの。近寄らないで」
「そ、そんな姐さん。シュン」
「さぁ、そんなヤツほっといて教室に行きましょ。タカちゃん」
悪いな、それじゃぁ先に行ってるからな。と、心の中で駿に軽く誤り杏璃と一緒に教室に向かった。
「おはよう」
ガラガラと教室の扉を開け、杏璃と一緒に入って挨拶をしたら皆の視線が一斉にこちらを向いた。
「なぁ、二人が付き合い出したって本当か?」
「あの新聞の事か?あぁ、本当だ」
「わぁー、おめでとう。杏璃」
「ありがとう」
「今までで何故付き合ってなかったのが不思議だったけどよ………とうとうくっついたって感じだよな。なぁ、みんな」
うんうん、と皆でうなずく。そして、皆がうなずく中で一人だけ、王子の視線から逃げる様に、そっぽを向く人物がいた。そこに王子はツカツカと歩いて行き、その人物の机の前で止まった。
「………ちょっと、いいかな?委員長」
「………な、何かな?王子君」
「………なぁ、あの新聞………情報元は委員長なんだろ?正直に白状しないと………」
「し、しないと………何よ?」
「あの事をばらす。そうだな、新聞部でも持って行けば高値で買ってくれそうだ」
あの事とは委員長こと宮崎シオンが俺もやってるVRMMOであるGWOをプレイしてる事を周りには内緒してるのである。
このクラスというか学校で知ってるのは、俺と一緒にやってる杏璃くらいだろう。
宮崎財閥の次期当主としてのプライドがあるんだろう、まぁ分からない訳ではないがな。
「………ふぅ、そうよ。私よ、だって面白いじゃない?」
観念したのか、白状した委員長。この学校では、新聞部は詳しくは分からないが、噂で生徒会や先生達よりも権威があるらしい。もしかしたら、校長先生も逆らえないという噂さえある。一体、どんなネタをつかんでるんだろうか?謎である。
情報のやり取りは、ここは学校なのでお金自体ではない。学生としては有難い━━━そう、お昼に使用する食堂だ。そこで使う食券でやり取りするのだ。
貴重な情報を提供して食券一年分を獲得した強者がいるって話だ。なかなか、バカに出来ない。
故に、情報提供者から見たらビジネスパートナーかもしれない。が、そのネタ元となってる人から見たら脅威そのものである。
「………それで、新聞部からはどれだけ報酬もらったんだ?」
コソコソ、と委員長は王子に耳打ちして教えた。
「えっ、嘘!そんなに!」
意外な高報酬で目が点に成る程、ネタにされた本人自身が驚いたのである。