三十一話・シンデレラ18
何とも言い訳ぽい理由だな。まぁ、それは捨て置いて話を先に進める。
「今は怒れる化心とやらは出てないようだが………」
出てない代わりに赤いオーラと側頭部に悪魔を想わせる角が生え見馴れない装備を装着しているくらいに見えるが━━━くらいって言ってるけど、随分変化してるからね。って何処からかツッコミが聞こえた気がした。
「怒れる化心と融合して"化心融合"してしまってるにゃ。こうにゃってしにゃっては、もう異常回復は出来にゃいにゃ。倒すことしか………」
王子は覚悟を決め、ウルフソードを手にし構える。
「いいのかい?王子様」
「皆こそ大丈夫かい?」
「正直辛いさ。だけど、仲間━━━友達だからこそ、止めなきゃならない時がある。そうだろ?」
ポンっとメリッサは王子の肩を叩き微笑む。
「私は王子様の命令に従うまでです」
「兄さんのためなら、何だってやりますよ」
「みんな………」
ウルウル、みんなの言葉に一瞬涙を流しそうになるが━━━
「それより、二人とも服を着てくれ。目のやり場に困る」
「「あっ、イヤーン。兄さん(王子様)のエッチ」」
フローラとシャルルはわざとらしく胸やアソコを隠した。隠した方がエロく感じるのは何故だろう。何時聞いたかは忘れたが、全部見えてるよりは一部隠れてる方がエロく感じるのが男の心理らしい。
それはさておき、二人はイベントリから服装備を選択すると一瞬で着替えが終了した。そこはゲームなので便利なのは良いんだけれどね。
着替えまでも、現実にしたら女性プレイヤーから批判きそう━━絶対に来るからな。
「ヴウゥグガッガガガガガ」
「ありゃー、もうほとんど、自我残ってないにゃ。気をつけろ、あれはもはや敵や仲間なんて関係ないにゃ。周りを破壊するだけの狂戦士と化してるにゃりよ」
「どうすれば、止まる?」
「方法は倒す事だけにゃ」
本当にマジかー、念のために聞いてみたけども、あれを倒せるイメージが湧かないんだけど………もう、やるしかないか。
「俺に任せろ。ニムエ援護を頼む」
「はい、お任せを」
真っ先に飛び出したのは、メリッサだ。スピードは盗賊に劣るが騎士にも引けを取らない速さで、暴走したアテナの懐に入り込んだところで、タイミング悪くアテナの通常の数十倍に当たるストレートパンチがメリッサを襲う。
「グガアァァァァ」
「三重障壁」
メリッサの前に三枚の透明な障壁が出現し、アテナの攻撃を防いだ。しかし、一枚につき十秒しか持たなかったが、その時間があれば充分だった。
障壁で稼いだ時間で、メリッサはアテナ背後上空へとジャンプしてスキルを発動した。
「攻撃上昇+背鎚嘗うおぉぉぉいけえぇぇぇぇぇ」
ドカアァァァァン、と爆弾を落とした様な音がし、アテナは膝を着いていた。やったかと誰もが思ったが数秒でアテナは立ち上がった。
「ハァハァ、クソッ足りなかったか………えっ!ちょっま」
スキル使用で直ぐに動けないメリッサの片足を持つと砲丸投の回転投法みたく、グルグルと回り勢いがMAXになった時離した。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ、目が廻るぅぅぅ。気持ち悪いぃぃぃ」
「メリッサ危ない!」
「「きゃあぁぁぁぁ」」
ニムエがメリッサを庇い後方の大木に叩きつかれHPは半分まで減り、二人共にグッタリと気絶異常になってしまった。
「よくも二人を殺ってくれましたね。二人の恨み」
いやいや、メリッサとニムエはまだ生きてるからね。勝手に殺さないようにね。
「シャルル行きますよ。私とシャルルの取って置きを見せる番が来ました」
「あれをやるのね」
あれって一体何だ?フローラはナイフを構え、シャルルは二丁拳銃をアテナより、やや斜め上空へと銃口を向けた。
「「はああぁぁぁぁあああぁぁぁああぁぁ」」
ババンババンババンババンババンババンババンババンババンババンシュンシュンシュンシュンシュンシュンシュンシュンシュン
ババンババンババンババンババンババンババンババンババンババンシュンシュンシュンシュンシュンシュンシュンシュンシュン
ババンババンババンババンババンババンババンババンババンババンシュンシュンシュンシュンシュンシュンシュンシュンシュン
「グワっ!」
「ふぅ、これくらいかしらね」
「えぇ、充分ね」
どれくらいナイフと銃を撃ったのか皆目検討つかないが、どれ一つもアテナに今はまだ当たっていない。
何故なら、アテナの周りをナイフと銃の弾で出来たドームが覆ってるのだから。
「「合技・時限式協奏激(ガンマん+盗賊系職種ver)」」
停止していた時間が動き出したかの様に一斉にドームを形成してたナイフと銃弾がアテナに向かって降り注ぐ。
ドドドンドドドンドドドンシュパシュパシュパシュパシュパシュパドドンドドドンドドドンシュパシュパシュパシュパシュパシュパドドンドドドンドドドンシュパシュパシュパシュパシュパシュパドドンドドドンドドドンシュパシュパシュパシュパシュパ
「グガッグゲグガアアァァアア━━━ちょっま、いたいたいたぎゃあぁぁぁぁぁ……プスプス」
アテナは途中で意識は戻ったようだが、車は途中で停まれない如くスキルや魔法は発動したらキャンセル出来ないのだ。
「「フィ、終劇」」
倒れたアテナは頭の角は無くなり、装備も元に戻ってる。どうやら、化心融合は解けてるようで安心した。
HPもギリギリ残っており、気がついたニムエにヒールを掛けて貰い気がつくまで待つ事にした。