二十四話・シンデレラ11
宿屋に戻った王子とシャルルは今はまだ誰も来ていない事を確認すると自分が借りてる部屋へと戻りゲーム内で休憩とはオカシイとは思うが精神的に疲れて休憩である。
「何か疲れたから少し休もうか」
「はい、王子様」
ガチャリとドアの鍵を掛けるシャルル。
「うん?何故鍵を掛けるんだ?」
「それはゆっくりと休むためです」
「何故上着を脱ぐんだ?」
「それは暑くなってきたためです」
シャルルの上半身は所謂キャミソールの状態だ。軽く屈んだだけでも胸の谷間が見えそうで若干エロいかもしれない。
「なんで近くに寄るんだ?」
「それは……王子様とイチャイチャするためです」
シャルルが王子の隣に座り、王子の肩に顔を傾け軽く乗っける。
「ねぇ、何で顔を近づけるの?」
唇と唇が数㎜で届きそう━━━くっつく距離だ。
「それは……王子様とキスするためです。チュッ」
くっつき離れては、またくっつく。シャルルの両腕が王子の頭を離さない。シャルルの舌が王子の唇を強引に開け進入する。お互いの舌と舌が絡み合い、口と口を離したところでシャルルが王子をベッドに押し倒した。
「何で俺の上にシャルルが乗ってるの?」
「それは……これから楽しい事をするからよ」
シャルルがそう言うとキャミソールをへそが見える辺りまで両手で捲し上げたところでバーンと鍵を掛けたはずのドアが勢い良く開いた。
「シャラープ……杏キーック」
突然、ドアを開き真っ先に中に入った杏がクルッとジャンプしてラ○ダーキックを思わせる見事な片足のジャンプキックでシャルルの後頭部に命中した。
シャルルは弓で矢を射る様な感じで真っ直ぐにぶっ飛び窓ガラスを突き抜けて落ちた。確か………ここは三階のはずだ。まぁ、ここはゲーム内で死にはしないだろうが心配だ。
「……兄さん、大丈夫ですか?」
杏は王子の事を心配してるが、王子はシャルルの方が心配である。やっぱり、妹よりも恋人の方が大事だ。それが二次元でも………。
「兄さん、何処を見てるのですか?私が折角心配してますのに」
「あ、いや、すまん。でも、シャルル無事かな…………と」
「そうですか、そうですか。私よりもあの赤ずきんをとるのですか。ウフフフフ………」
ぎゃあぁぁぁ、杏の背後に般若がおる。あの時の般若がこちらを見ている!
ガタガタと王子は逃げよとするが震えて動けないでいた。そんな時に割れた窓から誰かの腕が見えた。
ここ三階だぞ。と思っていた矢先、この部屋へと這い上がって来る。体全体が入るとぶっ飛ばされたシャルルだった。しかし、三階から落ちた衝撃で服や髪がボロボロで、まるでゾンビや貞○を思わせる程だ。
「良くもやってくれましたわね。折角、王子様とお楽しみだったのに」
「へぇー、兄さん金髪貞○さんがそんな事言ってますけど、どうなんですか?」
シャルルが床を這いずり回り、こちらに近づいて来る様は本当に貞○を思わせる様で怖い。加えてあの音楽が流れてきそうだ。
「ハァハァ、あ、杏早いよ」
丁度良いところにアテナが来てくれた。おっ、他に渚と雫も来て全員揃ったようだ。
「おや、この状況はなんだい……どうやら俺達は部屋を間違えたようだ」
「おーい、メリッサさん待って!間違えてないよ。助けてください」
「だって、君……あれを止めるなんて俺には出来ないよ」
そんなー、見捨てないで。渚の隣にいるニムエも苦笑いしている。というか、フローラの背後にいる?般若に恐怖を感じ動けないでいる。
「兄さん、聞いてるんですか?」
「王子様、二人で逃避行しましょ」
いつの間にかボロボロの服から着替えたシャルルは王子の左腕を掴み、フローラが右腕を掴み引っ張り合っている。般若はヒャアァァァと威嚇?かは分からないが、その怖い顔で近寄るのは勘弁してほしい。
「ニムエ、俺達は俺達で街の中を見てこようか」
「えっ!あの………あれ良いんですか?」
「俺は何も見てないよ。さぁ、行こうか」
「あっ、はい。王子様、ごめんなさい。この埋め合わせはきっと━━」
メリッサに引っ張られニムエも宿屋の一階に降りて行く中、王子は最後の希望としてドア付近にいるアテナに目配せで『助けて!』と送るが『いや、無理。ごめんね』とメリッサの後を追って行った。
メリッサ達が宿屋を後にしてから十数分後、王子がドヨーンと疲れた様子ということで代わりにフローラがメリッサ達に合流の連絡をして集まった。
「あのー、王子様大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫ありがとう。いやー、ニムエはこのメンバーの中で清涼剤のようだ」
ニムエの頬が赤く染まり「あぅあぅ」と動揺と言葉にならない。
「「「「ほぉー」」」」
みんなの瞳がキラリと光り王子に一斉集中にさらされた。
「兄さん兄さん、私はどうです?」
「フローラ、抜け駆けはズルいよ。タカちゃん、私の方こそどう?」
「いえいえ、皆さん何を言ってるですか。私の方こそ癒し系です」
「俺は………別にいいや。ニムエが清涼剤という事は普段は騒々しいってことかな」
メリッサに暴露され王子は嫌な汗が止まらず、再度皆の視線にさらされ、この場から逃げたしたい王子である。