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二十二話・シンデレラ9

「そういえば、まだ自己紹介してなかったわね」


 委員長が突然そう言い出すと王子たかしは驚いた。一緒に座ってるものだからお互いに知ってるかはなして話しているものばかりと思っていた。


「なんだ、まだしてなかったのか?」


「だって、オレ達が来たらタカシと同じ制服着てるヤツを見て、つい同じテーブルに座った感じだからな」


「私は止めたんですけど………」


 チラッと雫は委員長を見ると委員長本人はレモンティーをチューっと飲んでおり、プハーっとコップを置いた。


「私が許可したのよ。渚さんだっけ?この人の瞳を見たら何か話したくなったのよ」


「あぁ、そしたら意気投合してな」


「俺が着替えて戻ってくる間でいくら何でも早くないか!」


「それが渚の良いところです。引っ込み思案な私も連れ出してくれて感謝してます」


「そういや、昔に俺も連れ出してもらったな。そうなると俺も感謝しないとな」


「おいっやめろって。なんか肉癢こそばゆい感じになるからやめてくれ」


 渚の頬が僅かに赤く染まってるのを王子たかしは見逃さない。


「あっはははは、珍しく照れてるな」


「なっ!照れてねぇし、お前はまだ仕事中だろ。さぁ、行った行った」


 相変わらず男口調で話す渚は王子たかしを門前払いするかの様に追い払おうとする。逆にそれが可愛いと王子たかしは思うのである。


「渚さん、照れて可愛いです」


「し、雫まで!」


「あっはははは、これ以上は怒られそうだから奥に引っ込むけど、ゆっくりしていってな」


 二時間後、王子たかしがバイト終了し、みんなと一緒に店の外に出ると黒塗りの高級車が停まっていた。


「それでは私はここで失礼しますわ。天童君はまた明日学校でね」


「あぁ、委員長また明日な」


「今日は天童君のお陰で楽しかったですし、こんなものまで撮れましたしね」


 そう言うとシオンは自分のスマホを王子たかしに見せると、そこには不思議の国アリスに出てくる帽子屋のコスプレ=バイトの制服を来ている王子たかしが写っていた。


「なっ!いつのまに!」


「これが撮れただけで今日は収穫があったわ。それじゃーね」


「あっ、ちょっと待っ━━━」


 ブルルルと止める前に走り去ってしまった。明日、学校に行ったら消して貰おうと決意する王子たかしである。

 ポンと王子たかしの肩に渚の手が置かれ「ドンマイ」と他人事の様に言われ、王子たかしは「はっ!まさか」と渚も共犯だと気づいた。


「ニッヒヒヒ、気づくのが遅いよ。いやー、頼まれてさ。ダチの頼みは断れないよ」


「す、すみません。私は止めたんですけど………」


「最初の内はね、でも途中からはとある取引があって結局こちら側に来たよ」


 ジロッと獲物を捕らえる肉食獣の様な鋭い眼光で王子たかしは雫を捕らえていた。


「あうあう、だって王子様のお宝写真くれるって言うから」


 今までに委員長ことシオンに写真撮られた記憶がなく「一体いつ撮ったんだ」と後で拷問━━━ゴホンゴホン、聞く事にしよう。そして、実際に写真があったら削除又は燃やそう。


「今日も夕飯頼むぜ」


「えっ!今日も家に来るのか?」


「なに、当たり前の事を。あんな美味しいのを食べたら他のは食べたくなくなるよ。それにほら、雫だって行く気あるよ」


 指を指した方向へ向いたら雫が「グヘヘヘヘ、王子様の家でディナー………ブツブツ」と喜んで━━━いや、喜んでいるだろうがとても話し掛けずらい。家に着くまでそっとしとこう。


「なぁ、委員長に俺の写真を消去しろとお願いしてくれよ」


「それは無理だ。オレも報酬貰ってるから、シオンの事裏切れないんだ。悪いな」


「なっ!渚は一体何を貰ったんだ」


 王子たかしに聞かれた渚の目が泳いで冷や汗をかいて王子たかしと目を合わせないようにしている。

 これは何かあるなと気になり、家に着くまで何度か聞くが渚も話題を変えようと必死で結局聞けず終いで王子たかしの家に到着していまった。

 後で王子たかしが渚の部屋を見て驚愕し、渚自身は羞恥心に 苛まれる事になるが先の話である。


「ただいま」


「タカちゃん遅いよ。私、もう腹ペコでお腹と背中がくっつくとこだったよ」


「そうですよ。兄さん、遅すぎです。我が家の家訓をお忘れです」


 天童家家訓その二:朝食と夕食は皆で食べましょう


「あぁ、分かってるよ。昔からそうだったからな。杏璃はおじさんは仕事なのかい?」


「うん、そうだよ。まぁ、私からしたらこうしてタカちゃん家で食べれるからラッキーだけどね」


 ここにおじさんがいたら、泣きそうだな。おじさんは杏璃に溺愛してるからな。それなのに、よく俺の家に来る事を許可をしたもんだ。まぁ、家族ぐるみの付き合いだし理解は出来るがな。


「いつまで、そこに突っ立てるのよ。食べれないじゃない」


 ピョコッとダイニングから王子たかしのお母さんが顔を出してきた。


「あっ、おば様今晩は」


「あら、いらっしゃい。そちらは雫ちゃんだったわね。賑やかになって嬉しいわ」


 ゾロゾロと皆で上がりダイニングに向かうと料理はもう出来ていた。全員席に着き「いただきます」と手を合わせ食事が始まった。


「兄さん、アーンです」


「えっ!杏ちょっと皆が見てるのに恥ずかしいよ」


「いいじゃないの。家族なんだから」


 母さんが杏を後押しする。家族━━━兄妹だから逆にマズイと思うのだが、それは俺だけたろうか。


「そうだよ、往生際悪いよ。タカちゃん」


 えっ!杏璃まで!こういうの怒るというか杏と張り合っていたような気がしたんだけど、どんな風の吹き回しだ。


「次に私もやるんだから」


 お前もか!まるで前門に虎、後門に狼━━━この場合は前門に杏、後門に杏璃か。


 王子たかしは諦め、杏の言う通りにアーンと口を開け食べた。その後、杏璃も待ってましたと言うばかりに王子たかしの口に料理を運んだ。さらに、これに便乗して普段は大人しい雫までもがやる始末である。流石に渚はしなかったが、羨ましそうに見てたのは誰も気付かなかった。


 色々騒がし食事は終わり、片付けは杏と杏璃に任せ王子たかしは渚と雫を送って行ったのである。

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