二十一話・シンデレラ8
「………なぁ、委員長ちょっといいか?」
「なーに、このケーキ美味しいわね。こんなに美味しいなら早くくれば良かったわ。何か損した気分よ。パクっ」
無我夢中でケーキを食べる委員長だが、何故俺のバイト先である童話喫茶・子ウサギの隠れ家にいるんだ!
少し時間は遡り王子が学校の門を出た数秒後、門前に黒塗りの高級車が停車しその車に委員長が乗り込む。
「渡辺、今日は家に帰る前に寄りたい所があります。ここにお願い」
委員長は渡辺と呼んだ人物に場所を書いた紙を渡し命令する。
「了解致しました。お嬢様」
そして、数分後に王子よりも早く童話喫茶・子ウサギの隠れ家に着いたという訳だ。
「という訳よ」
「はぁー、俺よりも早く着いた理由は理解しました」
今さらだが、この委員長という人物を紹介しよう。
彼女は俺のクラスの委員長こと宮崎シオン、みんなが知ってるかは知らないがかの宮崎財閥のご令嬢で次期当主様である。
ヨーロッパ系の血が入ってるのか白い髪でウェーブがかかっており、肌も人形の様に白い。目が悪いのか眼鏡をかけており、王子的には眼鏡よりもコンタクトの方が似合うのではないかと一回言った事がある。しかし、理由を言わないまま断れられたのである。
「あら、私のようなサブキャラまで紹介してくれてありがとう。満足だわ」
委員長が突然天井にしゃべり出した。
「うん?委員長は何処に話し掛けているんだ?」
「気にしなくても良いのよ。それよりも、早く着替えて接客しなさいな。どんな服装でやってるのか楽しみなのよ」
王子は着いて直ぐに委員長の席に呼ばれて、学校の制服のままだ。
「はぁー、分かった。少し待ってろよ」
王子は更衣室に向かおうとした瞬間、更衣室の手前にあるキッチンに誰かに腕を捕まれ引き込まれた。
「ねぇ、今日の美人さんは誰なの?白状しなさい。そうしないと、杏璃と杏ちゃんにばらすわよ」
「はぁ、先輩急に何ですか。彼女は━━━」
「何だって!」
「まだ、何も言ってませんよ。先輩はお笑い芸人でも目指してるですか?」
「つい、ノリで?」
「何で疑問系なんですか?まぁ、良いですけど。それで、彼女は俺のクラスの委員長です。それに先輩は生徒会長なんですから、知ってるのはずですが」
「も、もちろん知ってるわよ。からかっただけよ」
ジトーーっと疑いの目で三浦先輩のことを見詰める。
「う、疑ってるわね」
「イイエ、ソンナコトアリマセン」
と言うと王子は更衣室に行って着替える事にしたのだ。
「何で棒読みで片言なの!それに、立ち去ろうとしてるし待ちなさい………えっ、店長まだ話終わっては━━━━」
何やら三浦先輩は店長に捕まったらしく、追い掛けては来なかった。
「お待たせしました?何か増えてる!」
「失礼なヤツだ。俺達はGか鼠みたいと言いたいのかな?」
「いいえ、失礼しました。注文はお決まりでしょうか?」
「ふん、本当に失礼だと思うなら今日は奢れよ。もちろん、雫の分もな」
「渚、それはいくらなんでも………」
「はぁー、今日だけだよ」
「タカシ、話分かるじゃないか。俺はこのオススメのケーキと紅茶で、雫は何にする?」
「王子様、本当に良いんですか?」
雫が王子を王子様と呼んだ事に委員長が「プッフフフフ」とそっぽを向き噴き出していた。
「あぁ、構わないよ。後、そこ委員長笑うな」
「だって、まさか本当に言う人がいるとは思わなくて………プッ」
どこか笑いのツボに入ったのか再度笑い出す委員長━━━こういう姿を見るとお嬢様とは思えない。何でうちの高校に通ってるんだろうか?他にお金持ちの学校が合ったろうに。
後で聞いた話によると、親の方針らしい。高校までは普通の学校に通わせ、普通の勉学や友達を作らせ普通の暮らしを体験させてやろうという事らしい。うん、金持ちの考えはいまいち分からん。
「それじゃあ、私はね━━━」
「なんで委員長もついでにみたいに頼むつもりでいるんだよ」
「えっ!そんな………私はそんな子に育てた覚えありません」
「こっちだって育てられた覚えねぇよ」
何故か王子と委員長で漫才をやることになったのか。今度は大人しい?雫が笑いのツボにハマったらしく口を押さえながら小刻みに震えてる。
「お、王子様がツッコミをしたよ。プッフフ」
漫才よりも王子が委員長にツッコンだのが受けたらしい。
「それで、雫さんは何か決まりました?」
「私は………マスターオススメセットでお願いします」
「はいよ、少々お待ち下さい」
「私は━━━」
委員長の事はスルーして早く注文を厨房に伝えるため、委員長が言い終わる前に奥に引っ込んだ。
「あっ、待ってー。私も頼むから!自分のは自分で払うから」
と、委員長は王子の後を追いかけ注文を直接伝えたのである。
そして、注文の品を王子が運んで来て、それぞれの前に注文の品を置いた。食しながら委員長とある提案をする。
「そういえば、まだ自己紹介してなかったわね」