十四話シンデレラ1
シンデレラ編開始です。
王子が赤ずきんシャルルを仲間にするクエストクリア少し前に遡る。
「お待たせ」
「遅いですよ。初めてやりますが本当に現実と体の感覚がリアルなんですね。ここに兄さんがいるんですね」
「あははははっ、本当にタカちゃんは水臭いんだから」
「後で問い詰めてやります」
「ほどほどにね。さぁ、二人が待ってるよ」
杏と杏璃はお互いにアルタイルにGWOをインストールしログインした。アバターを作成し、GWOの世界の中心都市での初心者が多い宿屋・エルフの翼停で待ち合わせする事にした。
最初に待っていたのは杏でアバター名はフローラ、遅れてやって来た杏璃のアバター名はアテナである。
二人で宿屋・エルフの翼停を出ると残り二人を探した。残り二人というのは今日家に来た幼馴染みである小鳥遊渚とその友達の須藤雫である。
「あっ、あれじゃない?」
「むっ、間違いないです」
「おーい、お待たせ」
ベンチに座ってる二人組を見つけ、手を思いっきり振って近寄ってみる。ただ、座っているだけなのに目立つ。まるで、生けるランドマーク。
一人は女なのに妙にそこら辺の男よりも格好良い、同じ女でもキュンとトキメキが湧いてくる。そして、もう一人は艶やかさがあり文学少女が似合う。
「おっ、来たか。遅いぞ」
「すみません。こいつのせいで遅れました」
「こいつって言って指を指すな」
「四人揃いましたので、フレンド登録しません?」
「そうですね。はい、私はこれです」
全員のフレンド登録が終わった。後は今のところ唯一の男・王子だけである。
「渚さんのアバター名、メリッサと言うんですね。格好良いです」
「ありがとう。フローラも可愛いと思うよ」
「雫さんのアバター名はニムエですか。確か女神の名前ですよね」
「アテナは詳しいね。アテナも女神の名前ね。それにしても、メリッサとフローラって妙に仲良いと言うか違和感があります」
「それは一時的に恋人でしたから」
「えっ!それはつまり・・・百合というわけ・・・きゃーー」
百合というよりはレズビアンだろう。つまり、女性の同性愛である。
「ただ、フローラがタカちゃんの義妹になって、それで別れたのよね」
「それはつまり━━━」
「私の口からは言えない。まぁ、あの二人を見てればわかるでしょ」
「おい、俺は百合でもレズでもねぇ。ちゃんと男に興味ある」
「私もです。メリッサさんとお付き合いした事実はありません。それに私は兄さんラブです」
フローラとメリッサ二人は否定するが━━━
「ふーん、まぁそれは置いといて・・・タカちゃんを探しましょ」
「「事実無根ですから」」
「はいはい、分かってるから」
適当にあしらい、歩みを進め掲示板や他のプレイヤーに聞き込みをし情報を集めていった。
「ニムエは信じてくれるよな?」
「えぇ、親友だもの。信じるわよ」
だが、心の中では真実を知りたいと思っているが、目の前の親友がレズだとは信じられないとも思っている。
本人は否定してるし、今はそれを信じようと決心した。
四人が王子を探す事、数分間後、王子が赤ずきんの話世界から世界の中心都市に帰って来た所を見つけたのである。
「あぁぁぁぁぁ、やっと見つけた」
「えっ、なんでお前らいるんだ!」
「えっ、なんでじゃないわよ。一人だけでやるなんて水臭いのよ」
「そうです。兄さんだけズルいです」
「そう言われると・・・・辛いな。すまない。でも、杏━━いや、ここではフローラか。アルタイルはどうしたんだ?」
「それは父さんに頼みました」
父さん・・・・杏に甘すぎるよ。母さんにばれたら何言われるかわからないのに。御愁傷様とここにいない父親に手を合わせた。
「メリッサとニムエさんも来たんだ」
王子はあとの二人に振り向いた。
「まさか、あの王子がゲームやるとは思わなかったが・・・・ゲームの中まで王子とは、プククククッ、笑ってしまうよ」
「くっ、これはバグで仕方なく・・・・だから、笑うな」
「すまんすまん。でも、バグとは散々だな」
「私はそのままでも素敵だと思います。それで、そちらの方はどちらですか?」
みんなが気になって敢えて聞かなかった事をニムエはさりげもなく聞いた。他の三人は驚愕するが聞いてくれて助かったと心のなでは思っている。
「そうですの。さっきから兄さんにベッタリとべーたりとくっついて、なんて羨ましい」
「ふむ、赤いずきんに手にはバスケット・・・・おい、まさか━━━」
「あぁ、そのまさかだよ」
メリッサは王子にベッタリな少女の正体に気付いたようだ。
「メリッサ、何か分かったの?」
「分からないか?赤いずきんと言ったらあれしかないじゃないか」
「そうね。あれしかないわよね。赤ずきんちゃん」
ニムエも最初から分かっていたかの様に答えを言った。
「えぇ、そうよ。私は周りから赤ずきんと呼ばれてるわ。そして、王子様の嫁よ」
「「「「王子様!嫁!」」」」
四人ともシャルルの言葉に驚愕し、その場だけ時間が止まってしまったの様に呆然としている。
「ににににに、兄さん嫁ってどういうことですか!」
「お、落ち着けって。相手はNPCだぞ」
「で、でも━━━━」
「俺はいいぞ。流石に嫁と言った事は驚いたが仲間だととても頼りがいがあるのは中々いないだろう。それにしても、よく仲間にしたな」
「た、たまたまだよ」
「うーん、私も賛成かな。アテナと同じで最初のは驚いたけど、赤ずきんちゃんは可愛いし、それに未だに数%のプレイヤーしか仲間に出来てないみたいだしね」
「ニムエさんまで・・・・ジロ」
フローラは最後の希望━━━フローラ本人としては絶望だが藁にすがる思いでアテナの方に視線を向ける。
「うん?私は賛成だな」
分かっていた言葉にフローラはショックを隠せないでいる。
「フローラ、諦めろ。何がそんなに嫌なんだ」
「グスッ、分かりました。様子見にする事にします」
「良く分からないが、納得したようで安心だ」
「それで、次はどこに行く気なんだ?」
「次は・・・シンデレラの話世界に行こうと思う」
「シンデレラか。確か、町並みが綺麗でそこでギルドホームを持つプレイヤーが多いと聞くな」
「なら、そこでいいじゃないか」
そして、次の話世界はシンデレラに決まり進んだのであった。