第七話 期待
俺は山に入ると茂みに身を隠した。
ここで敵を撒いて家に帰るか、迎え撃つか、その二択だった。
少し時間が経ち、足音が近づいてきた。
俺は茂みから足音のした方向を覗き見た。
黒のレインコートはこちらに背を向けていた。
やるなら今なんじゃないのか…?
おれは男根をしごいた、音がならないように…
今しかない…!
俺は茂みから身を乗り出し、レインコートの背中めがけて精子で作ったロープを放った!
精子は命中し、黒のレインコートを拘束した!
しかし次の瞬間、黒のレインコートを拘束していた精子ロープは切断され地面に落ちた。
それと同時に敵の身体を隠していたレインコートもビリビリに破れ落ちていった。
黒いレインコート着た人間の正体は、グレーの髪をした男だった。
腕からは刃のような物が生えていた、どうやらあの刃でロープを切断したようだ。
「そんなところに隠れてたのか。」
グレーの髪の男は言った。
「俺の名前は霧林カスヤ、さっさと死ね。」
男は腕から生えた刃をこちらに向けた。
俺は逃げ出した。
「クソッ拘束が通用しないなんて、相性が悪すぎる!!」
俺は山の中を走り抜ける。少し前まで降っていた雨のせいで地面がぬかるんでいる。
いつしか俺は山中の道路に出ていた。
その時、足に激痛が走った。
足にはナイフが刺さっていた。霧林が投げた物だ。
これ以上逃げるのは無理のようだ。
ここで迎え撃つしかない。
「お?もう逃げないの?」
霧林は言う。
「もう終わりにしようか」
霧林はこちらに向かって走り出した。
「…そこ足元、気をつけろよ?」
俺は言った。
霧林の足に何かが引っかかった、霧林の足元には精子ロープが張られていた。
霧林は勢い余って水たまりに両手をついた。水たまりには切断された電線が浸かっていた。
「ンゴゴゴゴゴゴゴギギギギギギポヤシミミミミミミミミミ」
霧林は感電し、声にならない断末魔を上げている。
俺はすかさず霧林の頭部にナイフを突き立てた。
…霧林は動かなくなった。
「なんかこいつイシツブテみてえな顔してんな」
俺は傷ついた足を引きずり家に帰った。