エピローグ
その日の俺は、朝から浮かれまくって・・とまではいかないものの、それなりにはしゃいではいたかもしれない。
実はつい先日、団長こと、桐原さん夫婦から俺の携帯に直接電話がかかってきたんだ。話の内容は、割とご近所さん同士、たまには飯でも食わないか?とのお誘いだった。もちろん即答で誘いを受けたよ。
今日集まることになっているのは、俺、里奈、燈色、千隼さん、明海さん、そして団長の6人・・・に加え、なんとグラマンも参加する事が判明した。
最近知ったんだけど、団長や千隼さんは、SK時代からグラマンと面識があったらしい。まあ、その可能性はあったよな~とは思う。
しかしグラマンのリアル中の人って、全く想像できんのだが・・・。どうしよう、中の人がリアルまであのまんまだったら!
いや、それはそれで面白いかもな。
そしてもう一つニュースが!なんとグラマンの奴、自分でギルドを立ち上げたんだ。名前は「B・M・A」とかいう、なんか某ドイツ車みたいな感じの名前だった。意味は聞いたけど忘れたんでまた今度な。
もちろん、メインはバトルギルドとして設立したんだと。そして自由同盟とは、友好ギルドとして、イベントやらなんやらで付き合っていくこととなった。まあ、設立者同士が元同じギルド出身で、考え方も似てるからな。詳しいことは今日のプチオフ会で、と言う事になっている。
俺がそんな事を考えていると、里奈の奴がリビングに入ってきた。キッチンの棚から、ミルクココアの元を取り出しマグカップにお湯を入れて、ふーふーと冷ましている。
俺と里奈は、つい最近、オンラインゲーム「ブラックアース」の中で、恋人宣言をしてきた。もちろん、本気で付き合ってるわけじゃなくて、ゲーム内アイテム「レッドリング」を使うためだ。
そして約束通り午後8時に、ソメイヨシノをモチーフにした桜並木の中、俺と里奈は待ち合わせた。
俺はゲーム中で待ち合わせのつもりだったんだが、里奈の奴、8時ちょっと前になったら俺の部屋にノートPCを持ってきて、予備のLANケーブルをつなぎやがった。
いや、本人目の前にして恋人宣言するの?と一瞬思ったが、奴はどうやら本気らしい。
準備も出来て待ち合わせの場所で里奈と合流する。千隼さんから狩りのお誘いがあったのだが、今日はちょっと用事が・・と言って断ってしまった。
最初は、二人きりになって、妙な間とか空いたら嫌だなあとか考えてたんだけど、その心配は杞憂に終わった。
いやあ、恋人宣言する場所に、あんなに人がいっぱいいるとは思わなかったわ。俺が心配してたようなロマンチックな雰囲気など全くなく、俺たちは若干拍子抜けしながら、列の最後尾にならんだ。
「それにしても・・・」
並んでいる画面をぼーっと見ていると、里奈が話しかけてくる。
「ブラックアース始めたころは、まさかあんたと恋人宣言するはめになるとは思いもしなかったわ」
「そりゃ俺のセリフだよ!まさか、エリナ師匠が里奈だとは思いもしなかったしな」
「そのまま返すわよ」
俺が自由同盟に入ってからすぐに一緒に狩りに行ってくれたのが姉貴だった。もちろん姉とは知らなかったわけだが、当時でもそれなりのレベルにあった里奈が、初心者の俺にあれこれ世話を焼いてくれたのを思い出す。
「まあ、今だから言えるけど、当時のあんたのプレイ、酷いったら無かったよね~」
「おい、初心者だったんだから仕方ないだろ!」
そんな「昔話」をしながら画面見つめてると、ついに俺達の番になった。和風の祭壇の上に二人分のリングを置くと、両者の画面に本当に恋人宣言をおこないますか?という文字と、一定期間解除は出来ない旨の注意事項が表示された。
「いい?押すわよ?」
「おう」
そしおて二人同時に「はい」ボタンをクリックする。すると、祭壇に乗せてあったリングが赤く光りはじめ、二人のアバターの元に返ってきた。装備を確認すると、指の部分にリングの表記があった。
そして、次の瞬間周りに居た人達から「おめでとう!」との声が次々に飛んできた。二人でありがとうございます!って答えながら、さっききたソメイヨシノの並木道を帰っていく。
「なんか」
並木道を抜けた所で、里奈が話しかけてきた。
「なんか、けっこう何事も無く終わっちゃったね」
「まあ、そういうもんだろ」
「なんか、あんたと恋人とか変な感じ」
「・・・・だな!」
そう言いながら、二人で爆笑してしまった。恋人宣言する前は、ギクシャクしたり、微妙な雰囲気になったりしたらどうしよう?とか考えてたんだけど、当然そんなわけはなく、これからしばらくは、なんら変わること無く、俺と姉貴がオンラインゲームで付き合ってる話は続いていくんだと思う。
「ん?」
突然、俺と姉貴の両方のPCからSKYPOの呼び出し音がなり始める。呼び出し人は燈色だった。
里奈「どうしたのよ燈色」
燈色「どうしたもこうしたも、ギルドチャット見てないんですか?」
真司「ギルドチャット?」
燈色の声に若干の焦りの色が見えたので、俺は急いでギルドチャットに視線を移動させる。
真司「なんだこりゃ・・・・」
自由同盟のギルドチャットは、俺と里奈の恋人宣言へのお祝いや呪いの言葉で埋め尽くされていた。
真司「な、なんで、俺達が今日恋人宣言したってみんな知ってるの!?」
燈色「全然ギルドチャット見てなかったの?」
真司「うん」
だって、ずっと里奈と昔話やらで盛りあがってたからなあ。
燈色「チャットのログを遡って」
燈色に言われて、俺は自由同盟のギルドチャット遡ってみた。里奈の方を見ると、完全にパニックになってて、「ど、どうしようこれ」とかずっと言ってる。
「えっと、ログ・・ログ・・・っと・・・・・・・は?」
結構な所までログを遡った俺はとんでもない物を見つけてしまった。
「サーバー管理:このガイドは、自由同盟のギルドチャットのみに表示されています。」
という、サーバーのシステムからの案内表示の後、
「サーバー管理:エリナさん、ダークマスターさん、恋人宣言おめでとうございます。末永くお幸せに」
こういう文章が、突然、自由同盟ギルドチャットに表示されていたんだ。
真司「それで、このお祭り騒ぎか・・・」
燈色「そう」
知らなかった。恋人宣言すると、ギルドチャットに案内がでるのかよ・・。後で聞いた話だと、システム設定でオフにも出来たらしい。逆に、サーバー中に宣伝もOKなのだとか。サーバー中とかじゃなくてマジで良かった・・・。
千隼さんなんか、「だから私との狩りは断ったんだー。妬けちゃうなあ♪」などと、完全に冷やかしモードである。それにしても、何か挨拶しとかないとまずいだろうなあ。
「おい里奈、とりあえず挨拶だけでも・・・」
エリナさんがログアウトしました。
「ちょ、お前何やってんの!?」
俺が里奈に話しかけてる途中で、突然里奈がログアウトした表示が映しだされた。
俺は驚いて里奈の方を見た。その瞬間SKYPOからもログアウト。LANケーブルを引き抜き、ノートPCを閉じ、ダッシュで自分の部屋へと戻っていった。
燈色「逃げましたね・・」
真司「逃げたな・・・」
俺はその後、突然ログアウトした里奈についての弁明と、恋人宣言へのお祝いや呪いへの返信に明け暮れた。里奈については、恥ずかしくてログアウトしてしまったと説明。めっちゃ大変だったぜ。
「何よ?人の顔をジロジロ見て気持ち悪い」
そんな事を思い出しながらココアを飲む里奈を見ていると、そんな暴言を吐かれてしまった。誰のせいで俺一人忙しかったと思ってるんだこの女王様はあああああ!
「あ、そろそろ来る時間かな」
俺のそんな心の怒りを知ってか知らずか、壁に掛かっている時計を見てそうつぶやいた。今日のお呼ばれには、燈色も一緒に行くことになっている。3人で駅で待ち合わせしたって事にしとけば、一緒に行っても何の不思議もないしな。
ピンポーン
ちょうどいいタイミングでインターホンの音がなった。里奈の奴がはいは~いと玄関まで走っていく。たぶん時間からして燈色だろう。
「こんにちは、お邪魔します」
小さな声でちょっと控えめな挨拶の後、廊下を歩く音が聞こえてくる。そしてリビングのドアがガチャリとあいて、燈色と姉貴が楽しそうに会話をしながら入ってきた。
「よ、いらっしゃい」
俺と姉貴がオンラインゲームの中で付き合ってる話 第一部「完」
第二部「俺と姉貴がオンラインゲームで付き合ってる話 しーくえる」
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よろしくお願いします。




