CASE38 お兄ちゃん大好き!ってそれかよ!
おにいちゃん大好き!ギルドとブラックアウトの戦いが終了した。
戦闘終了と同時に、お疲れさまでした~という互いを労う声があちこちから聞こえてくる。あれだけ激しい戦いをした直後なのに、こういう風に言えるのって良いよな。
そんな戦闘後の光景の中、お兄ちゃん大好き!ギルドの女性アバターの人が門へとつかつかと歩いていく。たぶんあの人がギルドマスターなんだろう。だって、キャラクター名が
「お兄ちゃんLOVE」
なんだもん。
その「お兄ちゃんLOVE」さん(以下ラブさん)は、門の所にいる黒乃水言さんに話しかけようとしていた。
ラブ「あの、あなたが責任者ということでよろしいでしょうか?」
あれ?あれれ?これってなんか、クレームかなんか付けられる感じじゃね?責任者だれじゃゴラー!みたいな。
黒乃「いかにも、私が今回の防衛戦の責任者ですが」
さっきまで互いを労っていた双方のギルド員達も、一体何事かと二人の会話に注意を向けている。おいおい、なんか不穏な空気が流れ始めたんだけど、勘弁してくれよ~。
ラブ「本日は、私達のような弱小ギルド相手に、全力でお相手してくれて、本当にありがとうございました!」
そう言って、深々とお辞儀のポーズをとるラブさん。そして「やっぱりブラックアウトは強いですね」と、ニコッと表情を作っている。
黒乃「いえいえ弱小など思ってもいません。楽しい時間を過ごすことが出来てこちらこそ感謝したい」
そう言って微笑む黒乃さん。それが引き金となって、ふたたび喧騒に包まれだすローザ要塞の門周辺。あー良かったあ。責任者を確認してたから、戦闘中になんかあったのかと思ったよ。と言うか、この人めっちゃ良い人じゃん。
黒乃「所でその、大変興味を引くギルド名だが、何か意味が?」
く、黒乃さんそれ聞いちゃうんだ?すげえな、俺もずっと気になってはいたんだけど、聞いて良いもんかどうかわかんなかったからさあ。
ラブ「ああ、実は私、兄の事が凄く好きなんです。それで、名前もギルド名もこんな名前にしちゃいました」
エヘッと、可愛くはにかむラブさん。やべえ、この人超可愛いんですけど!ネーミングセンスはあれだけどね!
黒乃「ほほう、大変兄妹の仲が良いのだな。」
ラブ「それはもう、兄のこと食べちゃいたいくらい愛してます!」
ぶーーーーーーーーーーーーーーー!と何かを噴き出す音が里奈の部屋から聞こえてきた。たぶん、里奈か燈色が飲んでた飲み物を噴き出したんだろう。俺だって座ってた椅子から落ちそうになったもん。
俺はてっきり、ライトノベルかアニメのセリフか何かをギルド名にしたのかと思ってたんだけど、ギルドマスターご本人様のふか~いご意見が反映されてるとは夢にも思わなかったぜ・・・。
さっきとは違う理由で再びシーンとなるローザ要塞門周辺。お兄ちゃん大好き!ギルドの人達は「あー言っちゃった・・」みたいな雰囲気で、BOの人達は、「え?食べちゃいたいってあの食べちゃいたい?まじで?兄妹なのに?」と、動揺を隠せないでいた。
黒乃「う、うん。それでは、今日は本当に楽しかったです。また今度熱い戦いを繰り広げようじゃありませんか」
さすがに水言さんも、コレ以上の会話は危険と判断したのか、強引に話を終了させようとしていた。
ラブ「あ、すみません一つだけ教えてもらっていいですか?」
黒乃「な、なんでしょう?」
あの非常に男らしいというか、凛とした佇まいの黒乃さんが完全に及び腰になってる。こういう時普段の黒乃さんだったら「何かな?」って感じになると思うんだが、さっきからラブさんに対しては、完全に敬語になってるからな。
ラブ「こんな事、たった今戦闘した相手に聞いて良いものかどうかわからないんですが・・・」
ラブさんは、そう前置きしてからさらに言葉を続けた。
ラブ「今回の戦いで、私達が改善すべき点があれば教えて欲しいんです」
ラブさんが黒乃さんに聞きたかったのはこういう事だった。お兄ちゃん大好き!ギルドが要塞戦を始めたのはつい最近らしい。一応現在は、カルニスク要塞を所持しているが、それも取ったり取られたりの繰り返しなんだと。
なので、長期に渡り要塞を防衛しているブラックアウトと戦闘することで、色々と勉強できればと思い、今日攻め込んできたようだ。
黒乃「お役に立てるかどうかはわからないが・・・」
黒乃さんはしばらく考えたあと、こう切り出す。
黒乃「我々に布告してから実際に攻めてくるまで1分ほどの間があったと思う。あれを、布告と同時に攻めるように徹底すれば、門を抜ける確率はぐんと上がると思う」
ラブ「スピードが足りないということですか?」
黒乃「そうだな。例えば・・・」
黒乃さんとラブさんの党首会談が始まった。と言うより、ライバルギルドに助言したりするもんなんだなあ~という感想を見学席を出たもんの側で言っていると、エバーが話しかけてきた。
エバー「よ、お疲れ!」
ダーク「お前こそ、お疲れだったな。しかし迫力あるな~、お前のとこの防衛戦」
エバー「ははっ、そう思ってくれたなら嬉しいぜ」
いや実際、コボルト要塞で見せてもらったBOの防衛も凄かったけど、やっぱ、本格的な要塞戦での攻防は迫力がある。お兄ちゃん大好き!ギルドは、バトルギルドの中では「中小」ギルドに属するらしいけど、それでも俺らなんかより全然規模はでかい。
いつかは、BOやSKみたいに、普通の要塞所持ギルドになりたいとか考えてたけど、これはちょっと厳しい気がする。
エバー「ところでさ、お前この後時間ある?」
エバーがプライベートメッセージ(以下プラベ)で突然話しかけてくる。
ダーク「ん?ああ、大丈夫だけど。なんでプラベなんだよ」
エバー「まあ、いいじゃねーか。じゃあちょっと俺に付き合えよ」
ダーク「デートか?」
きもっ!っと返答し、また後でな~とエバーは去っていった。そして、すぐにメッセージ機能で、要塞内の会議室まで10分後によろしく!という文章を送ってきた。
ローザ要塞の会議室で俺に何の用があるんだ?俺は正直見当も付かなかった。だって、オンラインゲーム内の会議室とか使ったこともないし、どういう用途で使うのかもわかんねーよ。
里奈SKYPO「真司、これから燈色と千隼さんとで狩りにいくけどどうする?」
さっきのエバートのやり取りを知らない里奈が、俺を狩りに誘ってきた。
真司SKYPO「あー、俺パス。ちょっと呼ばれた」
里奈SKYPO「む!もしかしてあの黒乃って人!?」
燈色SKYPO「そうなんですか!?」
真司SKYPO「いやいやいや、エバーにだよ!なんだよさっきから二人して、俺がまるで黒乃さんに手を出そうとしてるみたいな事言いやがって」
里奈SKYPO「べっつにー!ただあんたが、鼻の下伸ばしてるのが気に食わないだけよ」
真司SKYPO「伸ばしてねーよ!」
燈色SKYPO「絶対伸ばしてたと思う」
里奈SKYPO「そうよね!」
こいつらああああああ!って、あれ?そういえば、燈色は家に来てるんで、PCないはずだけど・・・。
里奈「ああ、それなら燈色は私の横で見てるって」
なるほど。まあ、里奈のプレイ方法をじっくり見てみたいとは前から言ってたからなあ。参考にする気なんだろう。前、家に泊まりにきた時は、利公の騒動でろくにゲーミングキーボードの事も教えられなかったっぽいし。
と、そんな事を考えていると、SKYPOに正体不明の番号からコールがかかってきた。え?なんで俺の番号知ってるの?でたらヤバイやつか?そう思って、里奈の奴にその事を伝えると、
里奈SKYPO「あー、大丈夫大丈夫」
とだけ言いやがった。まあ、里奈の口ぶりからして相手のことわかってるんだろうけど、一体誰だ?
真司「はい、えっとどなたでしょう?」
「は~い、真司君おひさー!千隼さんこと桐菜お姉さんだよー」
なんと、SKYPOのコールは千隼さんの中の人「桐菜」さんだった。
真司SKYPO「え?桐菜さん?え?どうしたのこれ?」
桐菜「あははっ、真司君動揺しすぎ」
そりゃ動揺するだろう。自由同盟ギルドの中でも、俺の中の好感度No1の桐菜さんからのSKYPOだぜ?テンション上がるっつーの。
桐菜「あのね?最近真司君達と私と4人で行動すること多いじゃない?それで里奈ちゃんが、SKYPOで話しながら遊びましょうって提案してくれたの」
ああ、なるほどね。千隼さんも居る時は、なるべくゲーム内のチャットだけで会話してたんだけど、逆に千隼さんをSKYPOに誘えばよかったのか。盲点だったぜ・・・。
里奈SKYPO「その方が、意思の疎通も図りやすいし、お喋りしながら遊べるじゃない」
ダーク「そうだな」
俺は心のなかで「里奈GJ!」と叫んでいた。あいつもたまには良いこと考えつくじゃん。しかし、利公の奴が聞いたらすげえ悔しがるだろうなこれ。よし。週明けの学校の朝イチであいつに言うことにしよう!
さてと、じゃあ俺はエバーに言われた通り、会議室へ行くことにしますかね。一体俺に何の用があるんだエバーの奴・・・。




