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俺と姉貴がオンラインゲームの中で付き合ってる話  作者: 黒斬行弘
第二章 俺と姉貴と栄光の騎士
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CASE24 キレそうなんですけど?

 今日は姉貴の帰りが遅くなるというので、俺と燈色(ひいろ)千隼(ちはや)さんの3人で深淵(しんえん)の森へ来ている。千隼さんはいつもの武術家ではなく、本職の僧侶で参加中だ。


 いつも里奈の回復魔法を受けてる俺だけど、実はこの人も回復スキルは物凄い物がある。さすがにHPの回復量は里奈には負けるけど、正確さだったら千隼さんの方がたぶん上かも?と思う時もある。



ダーク「いやあ、千隼さんのヒール久しぶりにもらってるけど、相変わらず正確無比なカーソル捌きですねー」


千隼「ホント?ありがと~~♪」


燈色「うん、私も勉強になる」


 あ、ちなみに、燈色は奇術師(きじゅつし)を新しく作った際、名前を「燈色」にしている。本名で大丈夫なのか?って聞いたら、考えるのが面倒とのこと。そういや、僧侶も「ヒイロ」だったな・・。


千隼「燈色ちゃんにだったら、3倍増しでヒール発動するからね!」


 っく、全然羨ましくなんか、羨ましくなんか、羨ましいいいいいい!ちょっと前から思ってたんだけど、千隼さんて燈色に甘くねーか?マジでうらやましい!


「先輩」


 そんな事を一人考えていると、燈色に話しかけられた。


「何?」


「羨ましいですか?」


「え?また俺口に出してた?」


「さっきから全部聞こえてたわよー?」


「(〃▽〃)ポッ」


「じゃあ今日は、お姉さんが二人にたっぷり愛情のこもったヒールしてあげるからねー」


そんな楽しい会話をしつつ狩りを行ってる時だった。


「あれえ?おい、人いるじゃん!誰だよ、ここなら誰もいねーとか言ってた奴」


 千隼さんの緋色に対する寵愛(ちょうあい)の一部を俺にもわけて欲しいとうらやましがってたら、広場入口から声が聞こえてきた。


「まじで?こんな場末の狩場でレベル上げしてる人って未だにいるんだw」


「ばっか、俺らと一緒にしちゃかわいそうだろ?」


 なんか「むかっ」とするセリフが聞こえてきたが、こういうのは無視するに限るので、気にせず狩りを続けることにする。


 気にせず続けることにしようと思っていたんだけど


「あのー、悪いんだけど、ここって俺らがバトルの練習にいつも使ってる場所なんで、どっかいってくれない?」


 などと言う、あまりにも一方的な要求が自分の耳に入ってきてしまった。


 はあああああああああ?何そのお願いの仕方!普通は「すみません~」から始まるお願いが普通だろ?なんだこいつら。たまにいるんだよ。自分勝手な俺様ルールを人に押し付ける奴。そのくせ自分には適用しないルールなんだよな。


 そういうわけで、俺達はパーティーを組んでる者だけで出来るPTチャットで相談タイムに入る。


緋色「何あれ」


千隼「さあ」


ダーク「とりあえずどうします?突っぱねる?」


千隼「いやあ、それは止めとこうよ。非常識と関わってもろくなこと無いよ?」


ダーク「いやでもなんか、全然納得出来ないっていうか」


 俺達が黙りこくってるので、しびれをきらした彼らがさらに話しかけてくる。


「ねえ聞いてる?こっちはバトルの練習したいんだよ。はやくどいてくんないかな?」


「てか、ギルド名「自由同盟」って、お前聞いたことある?」


「大方ハンターギルドだろ」


「ぶっ!何あの紋章、真っ白な背景に大きく「自」って書いてるぜ。だっせーw」


 おいおいおいおいおい!なんだこいつら!なんかもう切れそうなんですけど俺!


 このゲームではさ、自分以外のキャラクターにマウスのカーソルを合わせると、そのキャラクターの名前と、所属ギルドの紋章が表示されるようになっている。


 で、俺達「自由同盟」の紋章は、さっきのムカつく奴が言ってたとおり、真っ白な背景に緑色で「自」の字が書いてるだけという、いたってシンプルなものだ。俺、結構気に入ってるのに!


 てか、こいつらはどこのギルドだよ!そう思って、奴らの一人にカーソルを合わせてみた。


 【キャラクター名:刹那 ギルド名:シャイニングナイト】


 え?シャイニングナイトって、グラマンと同じギルドのシャイニングナイト?そして昨日話してた、超大手のバトルギルドだ。黒の下地に真っ白な光が描かれていて、それをバックに高々と剣を掲げる3人の騎士たちが描かれていて、結構カッコいい紋章が目立っている。


 俺、てっきり、シャイニングナイトのようなバトルギルドって、グラマンのような糞真面目な奴ばっかかと思ってたら、どうもそういうわけじゃないみたいだ。いや、グラマンの場合は真面目とはちょっと違うか?


ダーク「こいつらシャイニングナイトだ。」


緋色「昨日グラマンが所属してるって言ってた?そういえば紋章が一緒かも」


ダーク「だな」


千隼「グラマンのとこと揉めるのもあれだし、一旦引きましょうか」


ダーク「え?ホントですか?」


千隼「後で、グラマンに正式に抗議しときましょう。たぶんグラマンから、ギルド幹部に報告されると思う」


 まあ、無駄かもしれないけどね。と、最後に付け加えたので、なんで?とも思ったが、とにかく一刻も早くこの場を離れたかったので、俺は帰還の魔法が記されたスクロールを素早くクリックした。


団長「それは大変だったねえ」


 深淵の森から街に帰還してしばらくすると、団長がログインしてきたので一部始終を報告してやった。


ダーク「ホントですよ!もうすっげえ腹立つのなんのって!」


団長「でもよく我慢してくれたね。」


ダーク「ああ、それは千隼さんが冷静だったんで、それでなんとか。」


団長「そっか、シャインちゃんありがとね」


千隼「いやいや~」


 あ、ちなみに「シャインちゃん」とは、団長が千隼さんを呼ぶ時の呼称だ。なぜシャインちゃんなのかは知らないけど、結構古くからの付き合いみたいだし、俺の知らない何かがあるんだろう。


団長「よし、じゃあこの件は、僕があっちのギルドに正式に抗議しとくよ。」


ダーク「ホントですか?」


団長「うん。でも、あんまり成果は期待しないほうがいいかもね。」


ダーク「え?」


 そういや、さっき千隼さんも似たようなこと言ってたな。とか思ってると、団長が詳しく説明してくれた。


 簡単に言えば、サーバートップクラスのバトルギルドともなると、バトルで勝つために個々のプレイヤーが強くなること、これが何よりも最優先にする所もあるらしい。なので、多少プレイヤー個人に問題があっても、ある程度黙認(もくにん)されるんだとか。


ダーク「えー、そんなの有りですか・・・・」


団長「まあ、そういうわけだから、あまり(たち)が悪いようだったら、すぐにその場を離れる事が肝心だよ?」


 なんか納得はいかないけど、俺がどうこう出来るもんでも無いと、無理やりその日は納得することにした。それにしても里奈の奴があの場にいなくて良かったぜ。絶対ブチ切れてただろうからなあ。


 まあでもグラマンの奴ああ見えて、結構古参のギルドメンバーって聞いたことあるから、それなりにまとめてくれてるんじゃないかな~等と考えてた時期が僕にもありました。


 結果としては、そんなうまい具合には全然いかなかったんだよね。


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