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ザンガン達を護衛にカジロウは飛行船へ向かって歩き出す。
「カジロウ殿……腰に付けてるそれは?」
「ああ?これ?」
ザンガンはカジロウがベルトをたすき掛けして装備しているサブマシンガンを指差した。
「これは私の魔法の杖ですよ」
「ひょ〜!変な形の杖だなぁ」
ウザ男が口を挟んだ。
昔、映画で見たことがあるストライプの派手なスーツで葉巻を咥え、ポーカーをしている奴らに撃ちまくるあれだ……
まぁドラムマガジンの代わりに信者から納品された上級マジックアイテムを削って形を揃えたアイテムを付けるようになっているからから鉛玉は出ないが……
手から火を出すなんでイメージが上手く出来なくて今まではダーツやボウリングのイメージで攻撃魔法を使っていたが、
銃が火を放つイメージ……これなら簡単にイメージ出来たので造らせた。
「ああ……見てみます?」
「ぜひ一度拝見したいですなぁ」
「俺も見てー」
カジロウは少し離れた所に骨を立たせて銃を構え、葉巻を咥える。
《ドドドドドドドドド》
カジロウから炎の玉がばらまかれて雨霰と飛んでいき、骨隊長を地面ごと穴だらけにして見せた。
くう〜〜……肩いてぇ……ロビンスにも見て絶賛された兵器だ!
しかしこの反動が欠点だ……改良しなくては……
風のマジックアイテムで風を逆噴射して反動を殺すか?……
「う……こりゃ避けれねーよ」
「ほぅ……威力は程々として速度と数、それに弾の形が素晴らしいですなぁ……この形ならそこそこのモンスターの体にも食い込みますなぁ」
「ザンガン殿にそう言われると心強いな……」
プロペラの動力はボムオイルを爆発させて得た力で回していた。
非常時には船内の骨達が手動で回すことも可能だし、ハングライダーを船内に用意しているのでいざとなれば風魔法で何処へでも飛んでいける。
「骸王補佐のドリーです……皆さん、シートベルトを着用ください」
「あれ?これ?どうやんだ?……あっすんません」
ウザ男はドリーにシートベルトをつけてもらっていた。
飛行船はカジロウ達を乗せて飛んでいく。
「うおー!風魔法を使わないで飛んでるぜ!見ろよ!地面が小さい!」
「五月蝿いわよ……ふんっ」
「私もそう思う」
……少し寝るか
ザンガンは骨達の装備に興味を示してカジロウに質問する。
「……何故スケルトン達も剣と共に同じ武器を装備しているので?もしや魔法が?」
「ああ……あれはボムスライムのエキスを使って鉛を飛ばす武器です」
「ほぅ……この飛行船と言い……時代ですなぁ……」
既に銃や汽車……アメリカの開拓時代位の技術なら再現可能だった。
自殺した学者やカイゼンハーツを骨にした時点でアメリカの開拓時代位の技術は再現可能だったが、あの時は大々的に動けずにいたが、今俺は王だ……実験するのに遠慮はいらない。
「そうそう、たまに爆発してるよな!」
「ああ、最近聞こえるわね」
「あれはですねジェットエンジンを作りたいのですが……中々難しくてね……それと近々電気の供給もしますよ」
「電気……ですと?」
「あ!琵琶湖だ!」
「本当……水上都市って初めて見たわ」
ウザ男の叫びで一同は窓を見た。
琵琶湖の中心に都市が形成されている……なんだあれは?
「ドリー、なんだ?あの都市は……」
「シガ国に存在する水上都市ビワですね……所属は魔王軍ですからご安心ください……現在はシガ国王と拳王様が共同で政治をなさっていま……」
「拳王って冒険者ギルドのバーテンだろ?俺一回あいつにぶっ飛ばされた事あるんだよねぇ……ははは」
「ドリー、拳王は強いのか?」
「ユニークスキルを持っいて、魔王軍が水上都市を責めた時に……」
「ああ……魔王軍が大量に攻め込んでも冒険ギルドだけはどうしても落とせなかったって噂……あれ本当だったのか……ヨタ話だと思ってたぜ」
「本当ですが……私からは能力について、これ以上は申し上げるわけにはいきません」
「ふーん……少し寝る……ついたら起こせ」
カジロウは腕を組んで目をつむって居眠りをした。
「かしこまりました……ごゆるりと……」
カジロウ達が水上都市を上空から眺めていた時、地上からもカジロウ達を見ている人物がいた。
拳王がパーカーを着て凸凹道を左右にステップしながら走っていく。
「ハヤトさん……少しは馬車に乗って休んだら?」
「フゥッフゥッフゥッ……体は鍛えなくちゃな……ん?…………ほぅ?懐かしい……飛行船か?……」
「……来た方向からして魔王達の末席に抜擢されたと言う骸王でしょうか?」
「かもな……別に興味はないが……それよりお腹は大丈夫か?1人でも良かったんだぞ?」
「私は貴方の側に居たいから、それにそれが一番安全でしょう?」
「まぁな……辛くなったらすぐに言うんだぞ?」
「はい……」
しかし、骸王も現代社会から飛ばされて来た様だな……
拳王はステップでキョウトまで嫁を乗せた馬車を連れて走っていく。




