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「ふぃ〜…………」

カジロウは温泉に浸かり、身体を休める。


『戦況伝えろ!……魔王軍優勢……』


カジロウの頭には常にラジオの様に魔王軍に派遣した骨達や農作業をする声が聞こえてくる。


骨達は……意外と楽しんでいる……これも悪くはない……か?


常に頭に声が響き疲れるが、これはこれで……悪くは無いな……


温かいお湯は気持ちが良くてカジロウは

ついつい転寝を始め、眠ってしまった。


……ああ……ねむ……い……


「カジロウ様!」

「誰だ!」


カジロウが目を見開くと目の前には裸のドリーとゼスタが居た。


「なんだお前ら!勝手に入って来るな!」


忘れてた……こいつらも勝手についてきた事を……混浴だってわかったら一緒に入ろうとしたから街を見学させてたのに……恥じらいが無いのか!


「何故です?私達だって浸かりたいですし?混浴でしょう?何の問題があります?」

「カジロウ様、浸かりながら寝ると危ないですよ、気をつけて下さいね」


「街を見て時間潰しとけって言ったろ!ゆっくりさせろ!」


「ゆっくりったって、もう1時間も入って……流石に我慢の限界ですよ?」

「まぁ我慢は別として湯船で溺れでもしたら大変です……さぁ背中を流してさしあげましょう」


「もう出るから!」


カジロウは怒って立ち上がり、タオルで身体を拭いて1人で部屋に戻った。


風呂場に残された2人は石鹸を泡立て、静かに身体を洗っていた。


「ゼスタさん……一つ聞いてもよろしいでしょうか?」

「なんです?」

「わたくしは今迄に数々の殿方を虜にしてきましたので、少し容姿には自信がありましたが……もしかして、カジロウ様は男色の趣味があるのでしょうか?もしそうなら魔力で性転換して差し上げなくては……」


「う〜ん……子供が好きでしたね」

「幼児趣味ですか……それなら魔力で……」

ドリーは小さな女の子になって見せた。


「でも養子のパエリに性的なって感じでは無かったですね……

そう言えば骨犬の様なペットなら喜ぶかも?」


ドリーは再び大人に戻って考え込んだ。

「ペット……それなら心当たりが、ですが犬派でしょうか?猫派でしょうか?」


「それは本人に聞いてはどうでしょう?」

「そうですね!」


ドリーは風呂から上がるとカジロウの部屋に入って質問した。


「カジロウ様」

「なんだ!また!勝手に部屋に入ってくるんじゃない!」


「カジロウ様は犬派ですか?猫派ですか?」


ドリーはカジロウの顔が緩んだのを見逃さなかった。


「え?……猫派だよ……可愛いよね……猫って……あの耳とかハムっとしたくなる」


そう言えば実家で飼っていたプゥ……元気にしているだろうか……

耳をしゃぶるとピピピピピッと耳だけ動かして抵抗したり、嫌がって軽く爪たてたりしてくるのが、

たまらなく可愛いんだよなぁ……


「なるほど……わかりました、お任せ下さい!3日後に猫を連れてきますので!」


ドリーは羽を生やした浴衣姿で窓から飛び立ち、遠くの彼方へ飛んで行った。


「あれ?カジロウさん……ドリーさんは?」

「飛んでっちゃった……家に帰ろう……」

「へ?まだ食事も……」


「うるさい!帰ってトイレと皿を用意してあげなきゃ!」


カジロウは馬車を走らせ、急いで帰宅して受け入れの準備をしてドリーを待った。



チバの森の中にひっそりと存在しているキャッターと言う猫人間の住む村があった。


彼等は短い体毛と猫耳を生やした種族だが、体毛と猫耳を除けば、少し小さいくらいで人間と体の作りは大差無い。


ある猫が畑を耕しながら遠くを見た。

「うん?何だにゃ?」


遠くから半裸で服をヒラヒラさせた人が翼を広げて飛んでくる。

「悪魔だにゃ!みんな!逃げるにゃ!」


猫人間達はあたふたと家から飛び出した。


その悪魔は猫人間が逃げる間もなく村の中央へ降り立つと、周囲を確認した。


「ほぅ……中々数がいるな……私は骸王様の補佐であるドリーだ!若い者は前に出ろ……」


「な……何だお前!骸王!?

お……俺たちに何の用だミャ!」


「意気のいいやつだ……だが、欲しているのはメスだけ……これ以上時間を掛けると……」

ドリーの手に炎と闇属性を含んだ黒い炎が灯し、近くの家に放った。


炎は家と地面ごと焼き尽くし、クレーター状にえぐれてしまった。


「あぁ……悪魔だみゃ!」

「村ごとこうなるぞ?力の差が分かったか?私は急いでいる!

……返答無しか……いいだろう……

……そうだな……お前だ、お前が良い」


ドリーは一番毛並みが綺麗なメス猫の肩を掴んだ。


「マタミー!!クソ野郎ぉ!」

「マタオさん!」


ドリーは抵抗するマタオに手を向け、炎を握る。

「そうか……死にたいか……骸王様に煮立て付いた罪は重い……村人全員死刑だ!」


「やめてぇ!私は行くニャ!みんなには手を出さないで!」

「ほぅ?自ら奉仕すると言うのか?良いだろう!」


ドリーはマタミを袋に入れ、即座に飛び去った。


「マタミィィィィィ!ウォォォォォォォォ!」

マタオは飛び去るドリーに対して、只々……手をかざして大粒の涙を流すことしか出来なかった。


マタミが袋の中から地面を見ていた……

あぁ……生まれ育った村が……

どんどん離れていってしまう……婚約者と共に……

もう帰れない……

あぁ、マタオさん……みんな……さようなら……


マタミもまた、袋の中で大粒の涙を流していた。

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