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メグロ軍は前日の4万の死魚を味方に道中を進んでいた。


砦迄の道程の地中に骨兵を忍ばせた……骨兵は地中に居てもレーダーとしての役割は果たしてくれる……

お!魚人達も出たな……ついに我慢しきれずに一部は川を行ったか……


川に5万……残り9万ちょっとは陸から来るか……


『カイゼンハーツ!準備は良いな?』

『はっ!何時でも』


カジロウはメグロ兵全体を鼓舞する。

「この戦いで勝利すれば!メグロ軍と魚人達の数は逆転する!あと一押し、踏ん張るぞ!」


『おお〜!』


「骨兵を前面に押し出し、人間は弓矢で援護に専念しろ!」


元村人の隊長や元魚人の小隊が

軍の最前線に出て、進軍して行く……人間はそれを追うように弓矢を持って進軍する。


カジロウの隣に控えていたロビンスがカジロウに話し掛ける。

「カジロウ様……お願いしたい事があります」


「何だ?」

「私も最前線に……」

「ロビンス……味方の矢は無差別に降る……死ぬぞ?」

「この戦いが終わった後……どのくらい戦争は続くでしょうか?……大きな戦闘は今日を逃してありますか?……」


まぁ順調に行けば……王宮と援軍で……後2,3回はあるか……


「あと2、3回はある……功を焦ると死ぬぞ?……ちょうど敵も……」


隣で話を聞いていたゼスタはカジロウの肩を掴む。

「痛っ!」

……こいつ……掴む力強いって!


「カジロウさん!ロビンスさんに行かせてあげましょうよ?護衛をつけてあげれば良いでしょう?」


ゼスタが指差したのはカジロウの近くに常に置く護衛隊長……それはダメだ!恐ろしい事を言う奴だな……


「ゼスタ……俺は戦闘能力が低いんだから……」

「だからって4体も使って守ることないでしょう?マジックアイテムまで持たせて……」


「ふざ……」

カジロウは反論しようとしたが……何となく意味のない事だと悟った。

こいつは何が何でもゴリ押しする……良い言い訳も思い浮かばないし……無駄な問答はやめよう……


「わかったよ……ロビンスは護衛を背後に付けて前面に……死ぬなよ」


「ありがとうございます!」


ロビンスは護衛隊長を背後に乗せ、馬で走って行った。


クロダイは挟撃ポイントでメグロ軍を待ち構える。

「よし!ここで敵を待つ……一旦突撃し、その後予定ポイントまで後退後、再び戦線を維持!クロポンの挟撃を待つ!」


「果たして……敵がうまく乗ってくれると良いですがね……」

ハゼフィッシュは嫌味を垂れ流したが、ダボフィッシュに注意を促される。

「ハゼフィッシュ……やめておきなさい、今は作戦に集中するのです……仲間割れしたらそれこそ取り返しがつかない……」


「来たな……薄汚い人間どもめ!昨日の雪辱!晴らしてくれるわ!」


『全軍突撃!』


メグロ軍と魚人達はお互い進軍し、軍勢が重なり合って大乱戦になる。


戦場にはメグロ兵の放った矢の雨が無差別に降り注ぐ。


「ガガウ!ガウガウ!」

(クロジョ副将!こ……こいつら!スケルトンだ!それに……矢も落ちてくる……)

「ガウガウ!」

(怯むな!関係ない!ぶっ潰せ!……打上げた矢など!我らの皮膚にそう深く刺さるものではない!)


クロジョ副将は斧で小隊を叩き潰していく。


「ガウガウ!……」

(ふははは!軽い軽い!多少腕に覚えがあるようだが!所詮はスケルトンよ!がははは!)


骨隊長は馬でクロジョを討とうと馬を操作するが、横からロビンスが飛び出していく。


「私が行く!……骨隊長は見ていろ!」


「ガウガウ!」

(なんだぁ!?てめぇ!芋引いてない人間が居るのかよ!)


クロジョとロビンスはお互いの格好を見て将兵だと理解する。


「我の名はロビンス!将兵と見た!貴様の首貰い受ける!」


「ガウガウ!」

(ふははは!か弱い人間が!良い度胸だぜ!)


クロジョは斧を力任せ振り回し、ロビンスに振り下ろした……ロビンスはそれを受け流してクロジョの頭を割る。


「グ……グペ……」

クロジョは地に伏した。


周りのパワック達はひるんでいる。


「悪いな……敵将はこのロビンスが……」

突然、斧が飛んできてロビンスの背後に乗る護衛が盾でそれを防ぎ、落馬する。


護衛を弾いた斧は風に乗り、ブーメランのようにクロダイの手元に戻る。


棒の両端に斧の刃が付いた武器を構えたクロダイがフナ虫に乗り、突撃する。


「ガウガウ!ガガウ!」

(副将を討ち取って良い気になるなよ!人間が!このクロダイ様が!相手をしてやるぜ!)


クロダイは斧を荒々しく左右に振り回し、一撃がロビンスに炸裂する。


「くっ!お!重い!……殺られる!」

ロビンスは馬上で必死に打ち返し耐えるが、次第に体勢を維持できなくなり、よろけた瞬間、クロダイの一撃が飛んでくる。


【オーラーシールド】!

護衛隊長はシールドにオーラを纏わせ、クロダイとロビンスの間に割って入った。


「ガウガウ!」

(ほう……中々硬そうだ……だが!この魔斧の一撃を受け切れるか!)


斧は豪風を纏い、その一撃は護衛隊長の盾と鎧を砕き、大穴を開けた。


その威力は護衛を貫き、

ロビンスは馬を崩されて落馬した。


間髪入れずにロビンスに一撃を加えようとする。


「姫様!……約束!守れませんでした!」


ロビンスが死を覚悟した瞬間、クロダイの一撃は二体の骨隊長の槍によって止められた。


クロダイは骨隊長を睨み付ける。


「ガガウ……」

(なんだぁ?……てめぇら!)


ロビンスは骨隊長に見つめられて言葉を失う……ロビンスには骨隊長の言葉は届かなかった……


『若い将兵よ……諦めるにはまだ早い……』

『そうだぞ?……』


骨隊長はクロダイを見つめた。

『敵の将よ……前戦争で受けた雪辱!その身をもって腹させてもらおう!』


クロダイと骨隊長二体は互いに打ち合った。


「ガウガウ!」

(何だこいつら!……なかなかやるじゃねぇか!)


クロダイは動きを読まれたても暫く互角に打ち合っていた……が、ロビンスが参戦し、次第に押し負けていく。


ダボフィッシュも参戦し、クロダイに注意を促す。


「ガウガウ!ガガウ!」

(敵に戦線を押されてこれ以上は持ちません!作戦通り後退しますよ!)


「ガッ!ガガウ!」

(くっ!……仕方ない!全軍!退却しろ!)


クロダイは背を向けて交代していく。

それに呼応して他の魚人達も後退した。


「逃すか!」

ロビンスはそこらに居た隊長の馬に乗り、あとを追おうとする。


『気を付けろ……若造……』


クロダイは突然振り向き、口を開く……クロダイの牙に、腕輪型マジックアイテムが装備されていた。


【魔炎弾】!


クロダイは口から炎を吐き、骨隊長はロビンスを掴み寄せる。


ロビンスの馬は炎に包まれ、悶え苦しみながら焼死した。


「くそっ!」

骨隊長に地面に置かれたロビンスは悔しがって地面を叩いた。


「よし!今が好機だ!追撃するぞ!」

カジロウは追撃を命令し、戦線を押し上げていく。



その光景を見たクロダイやハゼフィッシュはニヤリと笑う。


人間達は背後の川辺から敵が来ることも知らないで……挑発に乗って突っ込んでくる。


「ガガウ!」

(よし!ここの戦線を維持するぞ!意地でも引くな!分かったな!)


「ガウ!」

(おう!)


再び、メグロ兵と魚人達は交戦する。


「くっ!何だこいつら!さっきよりも気力が漲っている!全然引かないぞ!」


『良し!カイゼンハーツ!やれ!』


ーーーーーーーーメグロ川 水中


「そろそろか……進軍するぞ!」

クロポンとその配下は水中を進んでいく。


ダボハゼめ!こんなに川は穏やかじゃねーかよ!

知恵者がいるだぁ?馬鹿じゃねーか!


クロポンはいつもより静かな川を登って泳いだ。


クロポン達は上陸ポイントに着いて初めて違和感を感じた。


「あん?何だこりゃ!」

「クロポン様!ここはもう少し水位があったはず……」


川上から流れてくる水量が極端に少ない。


轟音が鳴り響き、川上から大量の水と大木、それに大岩が流されてくる。


【火炎砲】!


「ひぃぃぃ!グロボロざま……」

「グォォォォ!くそっ!ガポポ!」


クロポンの渾身の一撃も虚しく、火球と共にクロポン達を巻き込み、捻り潰して……死体を海まで押し流していく。


『カイゼンハーツ!良くやった!』

カイゼンハーツは1ヶ月の間、魔法で川の水を一定量氷に変え続け、ダムを作り出していた。


タイミングを見て魔法を解除し、作り出された鉄砲水はクロポン達を飲み込み、


その衝撃と水飛沫はカジロウやロビンス……クロダイやダボハゼフィッシュの所まで届いていた。


「ガウガウ!グッ!」

(何だ!これは!クロポンは!弟は!グッ!)

クロダイの右眼にオーラを纏う矢が深々と刺さった。


「ガウ!」

(全軍退却!砦まで引くぞ!)


クロダイは勝手に退却命令を出したハゼフィッシュに右目を抑えながら掴みかかった。


「ガウガウ!」

(ふざけるな!退却など許さん!ここで弟の仇を討ってやる!)


「ガウガウ!」

(クロダイ殿!冷静に!兵士達も音に怯え、挟撃の失敗を察したでしょう……ここで無駄に命を失えば!クロポン殿の仇を討つ事は出来ません!……さぁ早く戻って傷の手当てを!)


「グォォォォォォォォ!」

クロダイは巨大な雄叫びを上げて……カジロウはビリビリ震えた。


「全軍……」

カジロウの声は耳をふさぐメグロ兵には聞こえない様だな……

仕方ないか……決着をつける!


カジロウはメグロ兵を置いて、先に骨達で追撃を掛けようとしたが、ゼスタに肩を掴まれ止められた。


「カジロウさん……骨達だけ行ってしまったら、メグロ兵達は不安になります……少しです……落ち着くまで待っていてください……」


メグロ兵達が我に帰った頃……魚人達は既に砦へ到達していた。


カジロウ達が近づくと砦の扉はすべて固く閉ざされてしまった。


……籠城か……その場合の手は既に考えてあるさ……


カジロウは捕虜にしていた1万5千の捕虜を連れて砦に近づいていく。


「ダボフィッシュ殿!ハゼフィッシュ殿!」

ダボハゼ兄弟とクロダイは城壁の上からカジロウを確認する。


「ガウガウ?……ガウガウ!」

(何だ?……クロダイ殿!私達がやります……目の手当てを……)

「ガウガウ!」

(うるさい!あの人間は……?何で捕虜を連れている?)


カジロウは魚人達の言葉で話し掛ける。

「ガウガウ!ガガウ!」

(捕虜をお返し致します!)


クロダイとダボハゼ兄弟はカジロウを不思議そうに見て考えている様だった。


カジロウは再び人間の言葉で話し掛けた。

「ダボフィッシュ殿、ハゼフィッシュ殿!約束通りに……」


カジロウはそう言うと捕虜を置いて自陣に走り出していく。


クロダイはダボハゼ兄弟に質問した。

「ガウガウ?」

(何だ?今のは何という意味だ?)


「ガウガウ!」

(わかりません……後で人間の言葉がわかるものに聞きましょう……しかし何故……捕虜を?)


クロダイはダボハゼ兄弟を少し不審に思うが捕虜を確認した。


……まさか捕虜を入れている隙に攻撃しようとしているんじゃねーだろな……


メグロ兵達は夜営のキャンプを建て始めていてそんな感じは全くない。


「ガウガウ!」

(入れてください!)


「ガガガウ!」

(よし!入れてやれ!)


捕虜達は砦へと入っていく……クロダイは警戒したが、メグロ兵は少しも動かなかった……

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