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カジロウ率いるメグロ軍は勝利した後、シナガワの砦へと少し歩を進めたが、魚人達が襲いかかってくる事は無かった。


……魚人達は意外と頭を使ってるのか……襲って来たら二、三作戦があったのにな……もっと正確な情報が必要だ!


時刻は18時、夕日が落ちている。


「よし!ここは平坦だな……ロビンス、野営だ!」

「はっ!」

ロビンスは貴族や骨と共に無数にテントを張っていく。


ゼスタは後続のメグロ兵に歩き出すカジロウを気に掛けた。

「どこ行くんです?」


「……ちょっと捕虜達に話を聞きに……ゼスタは今日の死魚達の葬儀を大至急してくれ……」


「ん〜?……いいんですけど?」

「なんだよ?」

何を怪しんでるんだか……ゼスタめ!


「あんまり酷い……」

「戦争だ……そりゃ多少酷い作戦もあるかもな……だが、降伏は受け入れたろ?それだけでも良心的だ!」


ゼスタはじっとカジロウを見ている。


なんだよ……まだ何か引っかかってるのか?しかし今回ばかりは理は俺にある……


「今はメグロ兵を助けるだけで精一杯だ、死魚達をスケルトンにしなかったらより多くのメグロ兵が……」

「わかります……でも同志に討たれる魚人達が少し気の毒では?」

「中途半端にやって魚人達もメグロ兵も死にまくって泥沼化させたいのか?……一番苦しむのは誰だ?貴族か?敵将か?ゼスタか?カジロウか?」


「いえ……」

「敵もメグロも誰が働いた金で戦争してるだ?……ふざけるな!民衆だろ!?

シナガワとミナトの王はメグロから摂取した金を少しも分け与えない……それなのに敵軍は民兵ばかりだ……

じゃあシナガワとミナトの国力を落とす作戦に変えるか?

川から海に水銀を大量に垂れ流して他の国との国境に軍を張り、強制的に断絶する……それでもいいが、戦争とは比べ物にならないくらい、海を必要とするシナガワやミナト民は打撃を受けるぞ?」


ゼスタは黙って俯いている。

カジロウはゼスタの肩に手を置き、優しく語る。

「ゼスタの言う事も一理ある……悪いのは悪政を強いる王達だ……それなのに戦うのは民……俺だってもどかしいさ……」


カジロウは黙ってゼスタの返答を待った。

ああ……さっさと骨にしたい……


ゼスタは沈黙を破る。

「そうですね……確かに、変な事を言いました……ごめんなさい」


「良いんだよ、その愚直な優しさが、お前の長所なんだからさ……

しかし、今回は分かっておくれ?」


「はい……」


「じゃあ、よろしく」


カジロウは捕虜の元へ向かった……捕虜達は縄に縛られ、テントに放り込んであった。


カジロウは衛兵に話しかけた。


「おいおい……なんだこれは?これは酷いよ」

カジロウは捕虜達の縄を解いてやる。


「ガガウ……ガガガ」

(酷い扱いをしてしまった事を許してくれ)


捕虜達は驚いた顔……なのかは魚目でわからんが……みんなこっちを見てる、多少は恩を感じたかな?


「ガガウ…」

(お前達の仲間を弔いたいので、軍勢と顔見知りが多い者は名乗り出てくれ)


名乗り出たパワックとシータクを連れて、儀式を行っているゼスタの元へ連れて行った。


死魚は4万人……流石に将兵を見つけるのは苦労したが……

「ガガウ……」

(彼等が将兵です……)

「ガガウ……」

(了解した……心配するな……捕虜は無傷で帰れるよ)


カジロウは骨達に捕虜をテントに戻らせた。


カジロウは死魚達を誰もいないテントへ運び、将兵を小隊長にした。


……敵将はパワックの【クロダイとクロポン】兄弟

……シータクの【ハゼフィッシュとダボフィッシュ】兄弟か……

シータク達は知恵者、パワックは少し直情的で今回の突撃もパワック達の案か……


シータク達は今は少数派……あまり策を採用してくれないらしいな……

今回死んだ将兵達は互いに仲が良く、各種族を纏めていたようだな……


む!……ミナトから更に10万の援軍が来てるのか……

ふーむ……ダボハゼ兄弟がちょっとじゃまだなぁ、どうするか……



ーーーーーーーーシナガワ砦


ダボハゼ兄弟とダイポン兄弟が軍議を行っていた。


お互いの弟が喧嘩する。


「だから反対したのですよ!」

「おいこら!てめぇら!俺らのせいにしようってのか!」


「無策で突撃して……5万の兵も失って!」

「くらぁ!こらテメェ!」

クロポンは机を叩き割って怒っていた。

「だから慎重にと言ったでしょう?全く」


クロダイも次第に我慢できなくなり、口を挟んでは怒鳴った。

「てめぇ……文句あんのか!あんな奴等は川渡って挟撃してやるよ!」


「ふん!馬鹿の一つ覚えみたいに!前回成功したからって何でもそれで良いはずないでしょう?」


「なんだぁ?文句あんのか?テメェ!」


ハゼ兄は宥めて話した。

「まぁまぁ落ち着きましょう……クロダイさん、貴方達の作戦は失敗しました、今回は私達の案を採用してください」


「くっ!分かったよ!どんな作戦だ!」

「人間は夜には明かりを必要とします……野営を探し出すのは容易……今日の戦と行軍で疲れているはず、5千の兵で夜襲をかけましょう」


「俺らは人間よりは夜目が利くからな!暗くなったら副将!お前いけ!」


「はっ!」


副将は夜が更けるのを待ち、5千の兵士を連れて森に入る。


「クロパサク様!敵陣営の明かりが見えません!」

「何だと?よく探せ!」

兵士達は必死に辺りを探し、やっとの事でテントから漏れる小さな光を見つけた。


副将クロパサクはそれを見て笑いをこらえた。

「馬鹿な人間共……そんな明かりで陣を張って……夜襲を想定していないのか?……カハハ!それでは近付かれても気がつくまい……よし!行くぞ!」


クロパサクの指示で5千の兵士は突撃の準備をした。

「全軍!突撃!」

突然、一本の矢がクロパサクの頭を射抜く。


「副将!くそぉ!」

クロパサクの軍勢は既にスケルトンに囲まれていた。


「将兵は死んだのだろう?無駄な抵抗はやめて降伏しろ……」

カジロウは暗闇の中で降伏を要求し、魚人達は従い、捕虜となった。


カジロウは直様、クロパサクを小隊長にして情報を得る。

……フフフ……手柄を立てたくて、大分焦っているな……もう夜襲は無さそうだな……


カジロウは陣営に戻り、宴会を行った。


メグロ兵は快勝に心躍らせ、スケルトン達が警備する中、心を緩ませまくって飲みまくった。


「ギャハハ!」

……兵士達に気疲れも無いようだな


「みんな!少し話がある!」

「何ですか?カジロウ様……」


「今日はみんなご苦労だった快勝に終わって良かったが、相手も知能を持った魚人……捕虜達にもご馳走しようと思う……彼等を優しく迎えてくれないか?聖スケルトン様もそれを望んでいる」


「カジロウ様!勿論です!」


「しかし、流石に1万程を全て話すわけには行かない……今日はシータクのみを連れてくる……パワック達は後日だ!」


「了解です!スケルトン達が居れば怖くないしな!ギャハハはは!」


シータク達は混乱した……最初は毒でも盛られたのではないかと警戒したが、捕虜の彼等は好意を無下にする訳にもいかない。


自分達に出された味は故郷の懐かしい味……人間達と同じ料理ではなく、シータク向けに調理してある……


「おい!旨えな!こんなはらいっぺぇなの久しぶりだ!」

「ああ……でも何だって俺達をもてなすんだ?」

「わっかんねぇ……でも毒じゃないんだ、別に良くね?」

「まぁな……」


シータク達は腹一杯、食事と酒を楽しみ……捕虜のテントへ戻って行った。



ーーーーーーーーシナガワ砦


クロポンはイライラしながら砦の扉を睨む。

「何時になったら帰ってくるんだ!」

もう既に空は白けてきているのに……副将は帰還しない。


「兄貴!もうシータクの作戦なんか信用出来ねぇよ!潜水の計で挟撃しようぜ!」


ダボフィッシュは意を唱えた。

「悪戯に兵を動かしてはいけません!何か妙です、援軍を待ちましょう!」


「うるせぇ!てめぇらの言う通りにして副将を失ったぞ!」


「一時の感情で動かしてはいけない!彼等におそらく知恵者がいる!潜水の計は前回も使った作戦!恐らく読まれています!」


「かっ!弱気な魚だぜ!水の中で俺らに勝てる人間が居るのかよ!」

「それは居ないとは思いますが!とにかく援軍を!」

「援軍援軍うらるせぇな!てめぇらの援軍が来ると砦が生グセェンだよ!」

「な……」

「兄貴!」


弟に催促され、クロダイは静かに口を開いた。

「ダボフィッシュ殿……夜襲は貴方達の作戦だ……それは失敗、今回は我々の作戦を採用してもらおう……」


「わかりました……ですが、不穏な空気を感じたらすぐに退却を……」

「ふん!いもひきやがって!」


「では、ハゼフィッシュと共に……」

「ふざけんな!魚くせぇ奴は陸から行け!」

「兄様……私もこんな単細胞と一緒に進軍したくありません……」

「兄貴!信じてくれよ!俺は単身でやれるぜ!」

「ダボフィッシュ殿……仕方がないですな……弟には部下を沢山つけて川を行かせます」


クロポンは部下を連れて川に潜り進軍、クロダイは陸からシータクと共にカジロウ達の陣へ進軍して行く。

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