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貧乏な村から親子が城に向かって歩いていた。
「ねぇお父さん……」
「……よし、少しここで休憩しよう……」
父は娘にパンを渡し、岩に腰掛けて休んでいた。
城まではここから徒歩で3日の道のり……
リュックにはまだ3日分の食料が入っているが、父は食べない。
リュックの中身は村のみんなで集めた食料……
「ねぇ?お父さん、もう一度抱き締めて?」
父親は娘を力一杯抱き締めて涙した。
「済まない……」
男手一つで育てて来た……
納品期限には早いが、今年は不作で納品量が少なかった為、馬車を借りる金もなく歩いている……
村は若い娘を売る以外に税金を納める方法がなく決断し、この親子に白羽の矢がたった……
娘を育てる上で村人達に迷惑を掛けてきた……
本末転倒だが断る事は出来ない……
断れば……
「ありがとう……私は平気よ?お父さんも食べて」
娘は父を気遣いパンを渡したが、父は娘に押し戻した。
「これはお前が食べなさい」
娘はパンを静かに平らげた。
「さぁ、そろそろ行こう」
親子は再び歩き出した。
しばらく行くと森から5人の山賊がゾロゾロ道に出てきて親子を呼び止める。
「ヒヒヒヒヒヒ……何処に行くんだい?」
父は立ち止まる。
「何だ……あんた達は!」
「わかるだろ?……イヒヒヒヒ」
「良い娘連れてるじゃないか」
「いや!」
「触るな!」
娘の顎を触る男の手を父親は払った。
「コノヤロォ!ふざけやがって!死ね!」
「お父さん!やめて!」
父親は山賊達にリンチされ、リュックからは食料が溢れる。
「なんだぁ?……食料かよ!」
「ふざけてんな!荷物がすくねぇから銭かと思ったのによ!」
「オラ!テメェ!舐めてんのかよ!」
山賊達はパンを齧りながら、父親を罵り、蹴飛ばす。
父親は蹴られながら、山賊達に土下座した。
「うぐっ!食料はあげます……どうか無事に通してください!」
「はぁ?……最初からそういう態度とれや!」
「よっしゃ!許してやろうぜ!」
「そうだな!よし来い!」
山賊は娘の手を掴んで連れて行こうとする。
「お父さん!……痛い!離して!」
「離さねぇよぉ〜」
「イヒヒヒヒ!」
「やめてください!」
「うるせぇ!」
父は必死に山賊に掴みかかったが、棍棒で殴り倒される。
「テメェ!全然わかってないようだな!」
「うぐぅ!」
山賊はナイフを取り出して父親を掴み寄せ、腹を刺した。
「ああ!お父さん!」
娘は倒れる父親の上で泣いたが、父親は痙攣しながら呟く。
「は………はや………にげ」
「え?お父さん!なんて?聞こえないよ!」
「おい!誰か来るぞ!」
城の方から馬車が走ってくる、馬車は少し離れたところで止まった。
「兵士か?貴族か?」
「いや、紋章はねぇぞ」
「商人か?ちょうど良いぜ!」
馬車から3人降りてこっちに走ってくる。
「やべぇぞ!全速力で走ってくるぞ!」
「くそ!護衛か?商人のくせに生意気だな!やってやるよ!」
「ひぃ!何だこいつら!」
走って来るのは三体のスケルトンで、一体のスケルトンにはツノが生えている。
山賊達はスケルトンを待ち受け構えた。
「おわらぁ!……うぐぇ!」
山賊aは剣を力任せに振ったが、スケルトンはそれを受け流して山賊aの腹を切りつける。
「こ……こいつら、変だ!……あっ!……ギャァァァア!」
山賊bの剣は絡め取られて地面に落とされ、背中を斬りつけられた。
「に…逃げろ!」
山賊cdeは全速力で走ったが、スケルトンは執拗に追いかけてくる。
「はぁはぁ……おい!…あんたら!もう許してくれぇ!……ギャア!」
山賊は走りながら命乞いしたが、スケルトン達は許さなかった。
次第に山賊は疲れて失速し、追いつかれて殺された。
スケルトン達は森に逃げた山賊達を殺すとむ親子の方へ走って来る。
「ヒュー……ヒュー……ゴフッ……」
「お父さん!あぁぁぁ!」
父は血を吐いていた……娘は死を覚悟した。
娘はスケルトンに父から引き離され、父はスケルトンに押さえ付けられている。
ああ……神様!助けて!
「無事でしたか?お嬢さん……落ち着いてください」
「な……何で……スケルトンに父が…助けて……」
「ああ……村から来たのですね?私は城で商人です……大丈夫、スケルトンは傷を見てるだけですよ」
「え?……」
商人は馬車を近くまで動かし、止めていた。
父親は暴れないように2体に押さえつけられ、娘を抑えてたスケルトンは馬車から箱を持って父親へ向かう。
「きっと大丈夫……救急箱を積んでありますから、スケルトン達が手当してくれます」
「スケルトン……が?」
「混乱されるでしょう?……何と説明すれば良いのか……私が信仰している宗教の……神の使い何ですよ……このスケルトン達は……」
骨達は父親の傷口を軽く消毒し、針と糸で内臓や傷口を縫っている。
「ウガァォァ!……ハァハァ」
「ああ!お父さん!やめて!悪魔!」
父親は娘の手を握りしめた。
「いや……大丈夫……少し、楽になった……ほら、血が止まっているよ……」
スケルトンは紙に字を書き、商人に見せた。
『内臓損傷の為、生存の確率薄し』
「そんな……」
商人は娘の顔が見れなかった。
紙に書かれた字を読んだ父親は商人の服を掴み、必死に口を開いた。
「刺された時に……覚悟はしてました……申し訳ないが……はぁ……馬車で城まで……お願いできませんか?」
「あなた字が……」
「はい……読む事は出来ます……お願いです……」
「わかりました……」
スケルトンは山賊の死体と父親を馬車へ乗せた。
「ひぃ!スケルトンは死体を……食べるの!?」
「ああ……違いますよ……街へ行き、埋葬するのです」
娘は馬車に乗りたくはなかったが、既に父は乗せられてしまった……覚悟を決めて馬車へ乗る。
馬車に揺られて街へ向かう。
「ああ……カジロウ様にFAXしなくては……」
商人は紙に文字を書いてスケルトンに見せている。
スケルトンはすぐに返事を書いていた。
『急病人あり……』
『わかりました……善行を行いましたね……』
父親は不思議そうな顔でそれを見ていたが、すぐ商人にお礼を言った。
「商人様……ありがとうございました……娘よ……私は長くはないかも知れない……もし死んだとしてもこの方を責めてはいけないよ」
娘は父の胸で泣き続けている。
「そんな……死なないで……」
商人は父親に話しかける。
「いえいえ、当然の行いですから」
「何ですか?スケルトン達は?」
「ああ……最近、城下町で新しい宗教が誕生したんですよ……これが聖書です」
父親は聖書を眺めた。
「これは……ここに書かれている奇跡は……本当に?いや、ありえない……」
「……それが本当と思うしかないんですよ……
実際にブリアン教に処刑された聖人が生き返りましたし……
信者が何人もスケルトンとして生まれ変わってます……
つい先日なんて偉い学者がペテンを暴いてやると息巻いて、財産をダイヤルロックして隠した後に自殺してスケルトンになったのですが……
結局、私が間違っていたと書き記して財産を回収してましたね」
「……この……宗教に入信する為には莫大な寄付が必要なんでしょうか?」
「いえ、寄付金は善行として、みんな競ってしてますね……司祭様が強要しているところは見た事がありませんね、今では家族が死んでから財を成す人が増えてますね」
「そうですか……知りませんでした」
父親は震えながら俯いて何か考えているようだった。
「まぁ実際に司祭様とお逢いすると良いでしょう」
「そんな……いきなり行ったら……気分を害されるのでは?」
「FAXで連絡しましたし、ブリアン教の司教の様な、感じではないので大丈夫だと思いますよ」
ーーーーーーーー8時間後
「さぁ着きました……ああ!司祭様……それにゼスタ様も!」
カジロウとゼスタは門の外で待っていた。
「商人さん……ご苦労様でした……」
父親はスケルトンに木製タンカーに乗せられ、娘と手を繋ぎながら墓地に作った病院へ運ばれて行く。
「司祭様!お話が!」
父親は運ばれながらカジロウに叫んだ。
「わかりました、安心してください、病室へ後で伺いますよ……それでは山賊達の転生葬をしましょう」
山賊達はゼスタの祈りを受けた後、骨兵へ変えられた。
「商人、善行をつみましたね……このスケルトンをお願いしますね」
「はい……」
骨兵の内、一体は商人の元で孝行する事になり、商人と共に馬車で去って行った。
カジロウは残りの骨達を連れて、ゼスタと共に親子の元へ向かう。
「カジロウさん、信者がまた人を助けましたね?」
「ああ……人は自分の利になると思えば、多少の苦労は我慢するからね」
「またそんな事言って……利がなくても助けてましたよきっと!」
「ないな……特に商人だろ?一番利を求める生き物じゃないか、きっと人手が欲しかったんだよ」
「そんな事ないでしょう?」
『ギュギュッ』
こいつ……また怒ってんのか……
「そうだね、ゼスタの言う通りだ」
……まぁどっちでも良いけどな、俺は骨をばら撒くだけだ
もっとメグロの経済が活発になれば、周辺諸国も黙っていないだろう……
今までメグロは弱小国だったからな……
そのイメージで無茶苦茶な要求をしてくれたら、王に進言して即戦争だ……
楽しい事になるぞ!何たってメグロの国民は死を恐れないんだから……ククク!
カジロウは病室の扉を開けると親子は食事を取っていた。
カジロウを見ると親子は食事を止め、体を硬直させている。
「どうですか?容体は?」
「えぇ良いです……食事もとても美味しいです……あの!司祭様!」
「何でしょうか?」
「お願いが!スケルトンにして頂きたいのです!」
「お父さん!やめてよ!」
「良いんだ!自分でよくわかる……私は長くは無いんでしょう?」
ゼスタと娘から『酷いこと言わないで』という目線がカジロウに刺さった。
「正直、現段階では絶対死ぬとも死なないとも言えませんね……
山賊のナイフはあなたの腸を傷付けていました……一応ハブ草のエキスを掛けて滅菌し、傷自体はすぐ縫い合わせましたが、内容物が漏れ出して傷口に入った可能性が高いです……
悪くすれば2、3日で傷口が腐って死ぬでしょう」
「そんな!酷い!」
「カジロウさん!本人に言うなんて!」
……酷いったって嘘ついて死んだ方が酷いだろうが……
抗生物質の作り方なんか知らねーし、縫合だって正しいのか知らないよ……
俺には漫画『ブラックチャック』軽く読んだ程度の知識しかない、骨医者も死亡率は経験則みたいだしな……
「まぁそんなに焦らずに……」
「税金があるんです!すぐにスケルトンになって奴隷に!……うっ」
父親は傷口を抱えて苦しんだ。
骨にしたいのは山々だけど……ゼスタと娘が見てんだよなぁ〜
「わかりました……ではこうしましょう……税金はウダゼ教で負担するので……」
「それでも……スケルトンに……お願いします……私は娘を人並みに育てたい!」
「お父さん!いやよ!」
「大丈夫……少し形が変わるだけだよ……違うなら……お前にはすぐわかるだろ?」
はぁ……娘が早く納得しねーかな……疲れてきたよ……痛っ!
ゼスタは呆れ顔のカジロウを睨みつけ、腰をつねった。
「わかった……でももし!父でなかったら!」
「はい、司祭を八つ裂きにして良いですよ?ね?カジロウさん」
やっと納得したか……そろそろ魔力回収に行くかな?
「ああ……では祭壇へ……」
カジロウは父親を祭壇で隊長にした。
娘は隊長が抱き締めるまでカジロウを睨みつけていたが、何かを感じ納得したようだ。
「じゃあ税金は肩代わりします……これは皆さんに差し上げていますので……」
カジロウは小隊長に木製のリアカーと標準装備一式を渡した。
「カジロウ様……父の事……税金の事……ありがとうございました」
父スケルトンはお辞儀をした後、山賊で作った小隊長1体にリアカーを引かせて、娘と共に村へ帰って行った。
あの娘は良い宣伝になるな……
カジロウは見送りながらほくそ笑んだ。
娘は村に帰ってから驚く村人をなだめ、ウダゼ教の事を話した。
父スケルトンは娘や村人の為に休まず働き、村の生産効率は格段に上がって村全体が裕福になった。
隣の芝は青く見える……次第にメグロの村では、死人が出ると、必ずカジロウの元へ連れて行くのが常識になり、
税金の時期が終わる頃にはウダゼ教の印の付いた装備をしたスケルトン達が村に居るのが一般的な光景になっていた。
「良かったですね……」
「ああ……村の警備にもなるしなぁ……さて、俺はちょっと出掛けるよ」
ゼスタは怪訝な顔でカジロウを睨む。
「またですか?ちょくちょくどこへいってるんです?」
「ちょっと秘密の場所で精神修行にね……これを怠ると聖スケルトン様が力を貸してくれなくなるんだよ」
カジロウはゴブリンダンジョンを3個保有させていた……もちろん魔力回収の為だ。
基本的に信者に気取らせない為、カジロウは骨化するときのルールを決めた。
野党、無縁仏、モンスター……骨兵、小隊長
家族や知人の持ち込み……隊長
小隊長でも充分な気はするが、雰囲気が違うなどいちゃもんつけられては信用ががた落ちだ……
モンスターの遺体を冒険者に持って来させているが、それでも過剰な隊長作成で、元々墓地にあった遺体が底をついて……
骨兵のストックが少なくなる……
ゴブリンには少し気の毒だが、魔力回収と骨兵化の二役を買ってもらっている……
ーーーーーーーー冒険者ギルド
「ねぇ受付……ここの3つの下位ダンジョンはいつも見るけど?」
「ああ、それですか?……調査や攻略を受けた人が軒並み行方不明になるんですよ……報酬と難易度の引き上げを今ギルド長が検討してるんですよ」
「こ……怖いね……」
「最近は受ける人が居ないですね……まぁ引き上げられればBランクやAランクが受けるでしょうから……」
カジロウはそんな事は知らずに、今日も魔力回収に精を出していた。
ーーーーーーーーーーーー拠点
メグロ城下町 墓地
ーーーーーーーー死体
モンスター1225
ーーーーーーーー
メグロ城下町の質屋
ーーーーーーーー死体
無し
ーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー総戦力
隊長14(戦士6、ハンター1、聖職者1、シーフ1)
隊長1(医者)
隊長692
小隊長 2605
小隊長 各1(商人、彫刻家、裁縫士、床屋、鍛冶屋、大工)
骨兵 13390
骨犬266
ーーーー所持戦力
隊長1
小隊3
骨犬2
ーーーーーーーーーーーー本
骨兵 召喚 9p
効果時間:永久
説明:人や動物の死体を生贄に人型の骨を召喚する。
骨犬 召喚 29p
効果時間:永久
説明:人や動物の死体を生贄に犬型の骨を召喚する。
骨小隊長 召喚 99p
効果時間:永久
説明:骨兵と死体一体を生贄に
人型の骨を召喚する
10体まで骨兵を統率する
その知識は死体側の物を引き継ぐ
骨隊長 召喚 499p
効果時間:永久
説明:骨兵20体と死体一体を生贄に
人型の骨を召喚する
5体の小隊長を統率する。
その知識と思考は死体側の物を引き継ぐ
骨将軍 召喚 9999p
効果時間:永久
説明:骨隊長と骨兵1万体を生贄に
人型の骨を召喚する
隊長を統率する。
その知識は生贄全てから、思考は隊長側の物を引き継ぐ
魔力注入 1200p
効果時間:永久
説明:骨系兵士1体に魔力を注ぎ、魔法の使用を可能にする。
トイドール 5p
効果時間:任意
説明:召喚した骨系兵士を1/10サイズに変換する。
骨罠 召喚 5p
効果時間:3時間
説明:動物に噛み付く罠を地面に設置する。
爆弾スケルトン 50p
効果時間:滅した瞬間
説明:付けた骨兵が条件を満たした瞬間、起爆する爆弾を付ける。
ゾンビ化 100p
効果時間:3日
説明:死体を生きた物に対して、無差別に噛み付き仲間を増やすゾンビに変身させる。
酸ゾンビ化 20p
効果時間:1時間
説明:死体を酸を吐きながら直進し続けるゾンビに変身させる。
骨大砲 召喚 20p
効果時間:5分
説明:骨兵を打ち上げる大砲を地面に設置する。
ラブネクロ 100p
効果時間:発動時
説明:骨やゾンビの位置を瞬時に入れ替える(最大11体)
魔力回収 25p
効果時間:発動時
説明:召喚した対象を破壊する事で、召喚時に必要なポイントの半分を得る。
オーバーヒート 15p
効果時間:10分間
説明:骨系兵士の能力を一時的に3倍にする、オーバーヒートした骨系兵士の身体は徐々に破壊され、10分後には完全に滅する。
スケルトンエコ パッシブ
効果時間:永久
説明:骨系魔法の消費ポイントを1p下げる
魔力上昇10 パッシブ
効果時間:永久
説明:マジックポイントの回復量を50上げる
魔力最大値上昇12 パッシブ
効果時間:永久
説明:総マジックポイントを600上げる
現在のマジックポイント180059/817
EXP 13/1452
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