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ーーーーーーーーメグロ街 ブリアン教会
ブリアン教の司祭は街を走り抜け、ドアを乱暴に開いた。
「司教!大変です!」
「どうした?騒々しいぞ……で?寄付は集まったか?」
司教はお祈りを中断して司祭を見た。
「はぁはぁ……町民が……はぁ……次々と改宗を……」
「何だと!他の町民に伝えて考え直させろ!」
「司教……もうその段階では無いのです……外を……外を見てください」
司教は急いで教会から出た。
街にはウダゼ教の開園と
人形を寄付額順に10組と
抽選で10組にプレゼントする事を伝えるポスターが大量に貼られていた……
「何だと!これはどういう事だ!」
「カジロウです!あいつが昨日の内にポスターを……」
司教は教会の壁に貼られたポスターを破った。
「カジロウめ……こんな所にまで貼りおって!司祭!直ぐに王に会うぞ!」
「はい!……シスター達、来るんだ!」
司祭は信者を6人お供に付けて司教についていく。
司教は早足で城へと向かう。
道中では人形がポスターを配ったり、武器屋や仕立屋等の開店準備を手伝っている。
「まぁ……優しい人形達ですね……」
「お黙りなさい!」
人形を絶賛する新米シスターを古米シスターは叱責する。
「くそっ!何でこんなになるまで放置した!」
「それは……昨日までは……何も……」
「そんな訳ないだろう!こんな大々的に布教されたんだ!……必ず違和感があったはず!それを放置しおって!」
「そ……そんな……」
直ぐ近くで町民達が噂話して、それが司教の耳に強調されて届いた。
「おい……新聞見たか?ウダゼ教の聖人だってよ……『王公認』だな」
「何だと?貴様ら!それを寄越せ!」
「あっ!司教様」
「おい……俺らはもうウダゼ教なんだ、何を萎縮してる?」
「そりゃそうだな!あははははは!お前の教は寄付ばっかり募ってよ!少しはカジロウ様を見習って天使に店を手伝わせたらどうだ!」
司教は答えず、新聞を握り潰した。
神に次ぐ存在……聖人……だと?……王は何をやっている!
「急ぐぞ!」
「はい!」
司教達は駆け足で城へ向かう。
「おーい!司教!神に言っとけよ?……金だけ集めてねーで、信者を助けろってな!」
「お前……そんな事してると、スケルトンになった後、苦労するぞ?」
「何言ってんだよ!金の亡者に注意するのは清い行いさ!」
「そりゃそうか!」
『あははははははは』
司教は歯軋りした。
「あっ!司教様!」
城の衛兵は敬礼をする。
「王に……通せ!」
「あっ……えっと……」
「王は貴方にお会いする事はありませんよ」
ロビンスが庭園から身を出して司教に話しかけた。
「ロ……ロビンス殿!それは一体!」
「王はウダゼ教の聖人なのです……ブリアン教の司教である貴方がお会い出来る存在ではありません」
「ふ……ふざけるな!」
「ロビンス……下がれ……良いのだ、ちょうど散歩中だった……」
「はっ!」
ロビンスは王に肩を叩かれ、王の後ろに跪く。
「国王!何故です!貴方はブリアン教の……」
「私はウダゼ教の聖人だ……小さき頃、不治の病にうなされた時、私は神を見ていた……ブリアン教の神と思っていたが、違ったようだ」
「国王!そんな邪教に心を奪われてはなりません!」
「民は喜んでいるようだが?」
「そんなのは今だけです!騙されてはなりません!きっと牙を剥き……」
王は優しく問うた。
「では私をブリアン教の最高位である教皇にして頂けるのかな?」
「そ、それは……」
「あっ!カジロウ様!」
カジロウは泥のように眠った後、国王に呼ばれて城に向かっていた。
司教達は振り向き、カジロウを見つめた。
「どうぞ!お入り下さい……」
「おう!カジロウ!こっちだ……」
「失礼……」
カジロウは司教達を掻き分けて門の中に入った。
「国王陛下……聖人様……こちらが特別製の人形になります……どうぞお納め下さい」
「急な催促悪かったな、カジロウよ、息子達が気に入り過ぎて催促されてしまってな!」
「お父様!カジロウ様が来たんですね!」
王子達が城から駆け寄ってくる。
眠気眼のカジロウは服を引く王子達に優しくプレゼントを手渡した。
「はい……どうぞ、これがスケルトン様からの贈り物ですよ……」
プレゼントは綺麗な包装紙に包まれていた。
「お父様!開けて良いでしょうか!」
「ふふ……仕方がない奴だ……開けてみなさい」
王子と王女は包み紙を開けてお互い、自分のプレゼントと相手のを交互に確認していた。
王子の箱からは金銀の鎧を着た、11人の騎士が透明のフィルム越しに見えていた。
王女の方は虹色に輝くドレスを着た11人のプリンセスが見えている。
「わぁ〜可愛いお人形!ドレスも!でも……」
「こっちはカッコいいなぁ……でもそっちのドレスも良いな……」
お互いに相手の服を狙っているらしい。
「お互い……表面からは見えてませんが、鎧と服は入っていますからね……取り合いをする必要はありませんよ」
王子達は箱をビリビリ破いてそれを確認して満足したようだ。
「良し!王子隊!突撃〜!」
「さぁお茶会を始めましょう?」
人形達は立ち上がり、王子達と共に去って行った。
「カジロウ……ご苦労だった、子供達が喜んで私も嬉しいよ……」
カジロウは城の外で眺める司教をチラリと見て国王に目線を戻す。
「それでは失礼致します」
「ああ……明日の開園とより一層の布教を期待しているよ」
「ちょっと失礼……」
カジロウは再び司教達を掻き分ける。
カジロウは立ち止まった。
「ああ……興味があれば……いつでも改宗待ってますからね……」
「馬鹿者!改宗するか!」
カジロウは笑いそうになる表情を必死に抑えた。
……ふふふ……司教め、相当堪えてるな……
カジロウが去るのを睨みつけ、司教は国王にもう一度話しかけた。
「国王!」
「何だ?」
「もう一度お考え直しを……」
「……まだわからんか……お前はそこに居て……カジロウは目の前まで来た……それが私に対する、距離なのだよ」
「司教様!」
司教は肩を落とし、司祭に支えられて帰っていく。
くそ……カジロウめ!
「おい!司祭!確かゼスタは奴隷の子を救っていたな?」
「はい!」
「暗殺隊に子供達を可能なら捕獲、無理なら殺せと命じろ!」
「司教……本当に?」
「ああ……ただし、スケルトンがやった様に見せる為、誰にも姿を見られるなよ?」
「了解致しました」
「それと早急にゼスタを呼べ!」
見ていろ邪教め……叩き潰してやるぞ!




