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Clair de Lune〜月の光〜
「月が綺麗だね。」
「死んでもいいわ。」
目を閉じると、駅前のバスロータリーの喧騒や、まぶたの裏に差し込む街灯の光さえも、あの日のもののように感じる。
目を開けて、夜空を見ると、そこには明るい満月が。手を伸ばせば届きそうな気がしてならない。
時折、吹き抜ける秋風が涙に濡れた頬を冷やす。
「お願いだからあの人のそばに連れてってよ。」
睨むように満月を見つめた。それでもなお輝き続けるそれは、まるで私を嘲笑っているようで。
私は涙を拭いてエンジンがかかったバスに飛び乗った。