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リトラクト・エネミー  作者: ヘッド・S
確率のカウントダウン
20/25

17、始まりか、終わりか―2



「どこなんだ。奴らは……」


 瀬賀克治は川本響と共にビル街を捜索していた。

一般市民はもう避難している。後は奴らを見つけて殺すまでだ。ことは見つかれば早く終わる、見つからなければ遅くなり市民を更に危険にさらす。


――早く見つけなければ。


「レーダーだとこの辺なんですけど……」


 隣の川本が腕の端末をみながらいう。

 目の前に高層ビルが見える。腕に付けた端末のレーダーからもそこだと示している。

 赤い点。緑の識別反応は出していない。


「用心しろ、川本。奴らは四体だ、単体で動くはずがない。連携してくる」


「分かってますよ、瀬賀先輩。しかし単体で動いてくれている方が僕らにとってはいいですよね。いつものようにすればいいし」


「ああそのとおり――」


 瀬賀は高層ビルの屋上からこちらに飛び降りてくる物体を捉えた。

 数は二。

 眼下には運悪く川本がいる。あいつは気づいていない。


くそッ、間に合うか!


「川本ッ! 上だ!」


と瀬賀は即座に斜めに掛けていたブロンズ色の槍を手に持つ。

そして「リトラクトォォォオ!」と敵の着地めがけ呟きながら走って行く。

徐々に人間の姿の上から鎧が姿を現す。

 蛇を模した鎧、武器も蛇を模していた。槍の先端には蛇特有のものとみられるものが付いている。それが瀬賀の得意とする技の一つでもあった。


 川本は上をみようとはしなかった。その時間さえ欲しかった。

 瀬賀が来ることを見越して斜め後ろにジャンプする。


 自分が先程いた場所には敵の武器が貫き、硬い地面に穴をあけていた。

 退いたはずの川本の胸には傷が出来ていた。

 遅かった、それほど奴らの攻撃は速かった。


「リトラクト!」


 遅れて川本も変身をする。

 腰の二刀のタガーを手に持つとやり易いように、一度回し逆手持ちにした。

 川本の鎧はさそり。彼の二刀のタガーにも特有のものが備わっている。


「ハアッ!」


 硬い金属音――。

 それは鎧を貫く音ではなく、リトラクターが攻撃を防いだ音だった。

 リトラクターの武器は太い肉切り包丁のようなもの。鎧は黒く禍々しい。


「甘いな、リトラクターッ!」


 瀬賀は槍の蛇の口のような先端から別の武器を取り出した。

 短い槍。

 元々持っていた方の槍は柔軟性をもちやらかくなっていた。それを相手の両腕に巻き付かせる。一見やらかそうでちぎれやすそうに思えるが、これは外見とは違い中々頑固にできている。   

 キツくキツく槍は縮まっていく。それは相手の鎧など気にせずに食い込んでいった。


 拘束した。武器を持つ手が緩まった。これでは攻撃はできまい。

 瀬賀は少し距離をとり助走をつけ他のスーツにない恩恵をかりると、通常では成し得ない 早さで無防備なリトラクターの頭を突らぬいた。


「危件ですよッ!」


 着地した瀬賀の元へ攻撃がきていた。右からきた攻撃を川本は防ぐ。

 集中していてがこいつに気づかなかった。もう一体もきやがったな――。

 二対二か。なんともフェアなことで。


「大丈夫ですか瀬賀さん!」


 背中を合わせた川本はいう。


「それで大丈夫って言えるのか?」


「かすり傷です――!」


 川本と瀬賀は同時に迫っていたリトラクターを蹴り飛ばす。

 リトラクターは蹴りがくるとは想定していなかった。

 しかし後ろに飛ばされながらも体勢を保っていた。


「さぁあどうするか。敵は二。こちらも二なわけだが」


「ここは片方ずつでどうですか?」


「うーん……そうだな――!」


 合図に瀬賀と川本は互いに敵に向かって行く。

 金属音がこだましている。

 だが彼らは戦闘に気をとられ、最初に疑問に思っていたことを忘れていた。

 敵が四体いるのだということを――。

 四体目は一体目が降りた屋上から再び降下しようとしていた。

 処刑人のような巨大なハンマーを持ちながら……。 



「二人の生命反応が消えただと?!」


「――はい。瀬賀克治、川本響、両名の生命反応LOSTしました」 


 女性オペレーターが冷徹な報告をする。

 喜納は立つ。プルプルと体が震えていた。


「すまない……すまない……! 瀬賀ッ! 川本ッ! こんな俺の無謀な作戦に……!」


 帽子を外し机に手をつきながら、涙を流す。雫がポトポトと机上に打ちつける。

 喜納は涙を手の甲で拭くと、帽子をズボンの後ろポケットにしまう。

 そして部屋を出ていこうとする。


「何処にいくのです――喜納司令!」


「弔い合戦だ、これは俺の責任だ! どのみちこの作戦が成功しようが失敗しようが俺は罪に問われる」


「だからって行くのですか! お一人で!」


「一人じゃない、瀬賀と川本がいる」


「…………、」


「いうことはそれだけか、真凪」


 脚を再び動かす。このままでは、喜納司令一人で行ってしまう。

 無謀だ、一人で行くのは。

 相手は三体もいるかもしれない、そこに隊員一人は無理がある。

 喜納指令を見殺しにしていいのか。


「私も行きます!」


 声を上げたのは実里だった。


――彼女がどうして……?


「なぜ君がくる? 君は来ないほうがいい。こんな私の為に死ぬのは嫌だろう」


「いえ、司令の為ではありません。街の為、家族の為です」


「そうか……なら一緒に来い」


「自分行きます!」


と真凪も声を出そうとするが喉から声がでない。いつもなら出せるはずだった。


 自分は行きたくないのか? 死にたくないのか。

 このまま実里を……喜納さんを無くしていいのか! いいはずないだろ!

 司令たちは部屋を出て行く。

 実里は何かをいう。その表情は自分に生きてと言わんばかりのものだった。


 遅れて真凪は立ち止まった足を動かした。

 真凪は廊下に期待を込めながら、まだ……まだいるはずだ! と思いながら出るがその姿はなかった。



更新は毎週日曜になりそうです。

遅れてしまい、申し訳ないです(_ _)

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