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リトラクト・エネミー  作者: ヘッド・S
軌道線上の戦士達
18/25

行間 リトラクター 2


「揃ったか」


「ええ、僕らが最後です」


 クロムハーツはそう言うと、椅子のようなジェルに座った。背もたれがあり、座り心地は中々だ。なにでできているかは気にしていない。


「これより始める」


 発言したのはこの中で権力を持つイグシストハーツ。

 強固な金色が錆びたような色合いの装備を全身に身にまとっている。ギザギザと、それに加え丸みも持っている。不思議な防具だ。


 イグシストに従っているのは力での証明が影響している。戦闘狂ゆえだった。

 命令は従う、だが拒否権はある。遅れても何も言われない。

 それぞれに権利があり、独自行動ができる。そういう仲間たちだ。

 そんなことをあの地球人に言われ、僕は取り乱したものだ。ここは重要だ、誰にも渡したくはない。今後に影響する。いつもとは違う。

 手に入れば、イグシストといえど勝てなくなることだ。


「何分で。私は忙しいのですよ」


 バレットハーツ。

 こんな場だと言うのに武器を見せている。自分らとは違い、何とも奇妙な武器だ。シンプルとかではなく、地球の情報でみかけた武器に似ていた。それを大きく、強力にした感じだ。


「なに、明日のことだ。一分で終わる」


 イグシストは人差し指を立てる。


「そうか。ならいい」


「オマエは時間が惜しいのか? やることでもあるのか」


「私のことは随分と知っているはずだ。身長、体重、この外見は何を元にしたか。それをあなたは知っている。私は奇妙な男だと自負していますよ、とても」


 その通り。いまこの場で顔を明かしているのはバレットハーツぐらいだ。堂々と見せながら、座っている。ルールなどあいつには関係ない。


 度々、その顔を変えていると聞く。もの好きなのか。しかし、変わったところはいつも見ているがないように思える。

 白人と言った人間の種類の顔。鼻が高い。

 確かフランス人といった、その種族の顔に近い。


「オマエは明日、自由に行動するのか」


「もちろん。自分の興味をそそる場所を見つければ向かいますよ。仲間がいれば、それを倒します」


「私でも、か?」


「ええそりゃあ。アンタに勝てる確率はゼロじゃない」


「ゼロじゃないか。ならレーガンを見つけても、か?」


 ここでそれを出すのか。あいつが触れてはならない話だ。


「レーガンは……まあ確に。アンタが持っちまえば、面倒くさくなる」


「だろ、面倒くさくなる。私が手に入れても一つだ、他は君らにあげるとも」


「そりゃあどうも」


 薄気味ぐらい円形の部屋では彼らは一段と大きく感じさせた。

 目元が不気味に光っては動いている。


「レーガンですか」


 隣のゼッケンハーツだった。また興味とやらに惹かれたらしい。


「ああレーガンだ、レーガンの書だ。我々に更なる力をさずけてくれるものだ」


「これ以上の力が必要なので?」


「言うこともわかる、ゼッケンハーツ。我々がこれ以上も力を求めることは必要がないのかもしれない。今の地球とやら、私が以前に訪問した。その際に地球人に痛手をもらったものだ」


 イグシストはヘルムの傷跡をなぞる。

 あいつの装備には全体と言っていいほどに傷跡があった。僕らが戦う前に、それはあった記憶がある。それはその地球に行った時なのか。そしてその傷跡も。


 その頃はハーツなどといった組織的なものはなかった。民がいて、兵士がいた。その頃に奴はむかったのだ。あいつは兵士だったのだ。

 王に従う兵として向かったのだろう。

 その王も……残すは一人。我々はその王に従うことなく行動している。緊急事態だったからだ。王を決めなくてはいけない、王に値するものを。


「珍しい。あなたが地球人に怪我とは」


「あの時、私は若かった。若さゆえの感情の暴走だ。今となればバカだと思うよ」


「ハッハッハ、バーカ! バーカ!」


 イグシストが目線を変えた。その先に、メイロンハーツがいる。

 メイロンハーツはおちょくるのが大好きだ。しかし、知性に溢れている。それはバレットハーツの次だと思う。なぜ知性があると、こんなにも変なやつが生まれるのだと生んだやつが不思議だ。


「バカだよ、私は。バカで結構、そのバカにオマエは負けたんだ。バカなのはどっちだ?」


「ヘッヘッへ、オレもバカ、オマエもバカ、ハッハッハ。……はぁ~、それもそうなんだよな。なんでオレは負けたんだ」


 ほら冷静になった。


「連携だろ。俺たちはそんなことは考えていないからな」


 答えたのはクレイハーツ。セレクターズと書かれたロゴが薄れながらも肩にみえる。

 あいつも兵士だ、イグシストと同じに。


「クレイハーツ……オマエもそう思うのか」


「俺は元兵士だ。だからその重要さは知っている、そこで偉そうにしてるやつと同じにな」


「オマエも兵士だってことは知っている。兵士ならではの答えだということも知っている。だが……」


「連携は必要ない、でしょ」


 僕も口を挟んだ。これまで何も言わなくて、何か言いたかった。

 メイロンハーツはこちらに首をむけた。


「俺たちはこれでも残ったやつらだ。残ったからといって何が言いたいことじゃないが、生き残ったからには自由になりたい」


「今だって自由じゃないのか」


「自由? ……まあそうだが。それにしても、俺は連携はしたくないんだ! 拒否反応を起こしている」


「もしかしたら私を倒せるかもしれないぞ」


 あざ笑うようにイグシストハーツは言った。

 あいつもあいつらしい。それでオマエを倒せるもんかよ。

 バレットハーツをみた。あいつはそんなことに興味なく腕を組み、頭を若干伏せている。

 興味なしか。


「いややめとく。オマエは自分自身で倒す」


「そうか。残念だ」


 そう言うと間が生まれる。


「長くなった、明日のことだ。明日は合同作戦の決行日だ」


「本来だったら一週間後なんですよね」


 僕はそういった。

 驚くことなくイグシストはいう。


「ああそうだ、あいつらは一週間後と思うだろうな」


「わざわざダミーを?」


「一度、奇襲というものは必要だろう。だからだよ。これで崩れればそれまでさ」


「なるほど。それで場所は」


「各自任せる。くれぐれも被りのないよう、散らばってくれ」


 そう聞くと最初にバレットハーツがムクッと立ち上がり、そそくさと出ていった。


「さあ行くとしましょう」


「ああそうだな」


 そういうと僕らも部屋を出ようとした。

 残る部屋にはイグシストとクレイハーツが残っていた。



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