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4話 パリューゲン

 飛翔種、数居るドラゴンの中でも飛ぶことに関して誇りを持つドラゴンの中で最も数多い存在。

 彼らは地を這う地竜や水中を泳ぐ水竜を見下し、また自分自身も地を歩くという行為恥じる気難しいドラゴンである。


 そんな飛翔種たるバルバランド姿のリョーマは地を這っていた、アーシャが乗る竜馬車を引いて。

 アーシャ曰くこれは罰なのだ、花園でクリムゾンローズヴァイパーと戦った際竜馬車を切り離した時に、咄嗟の事で力の加減ができていなかったらしくアーシャは衝撃で気絶したらしいのだ。

 リョーマとしてはヴォルケーノヴァを見られずに済んだとか色々思うところもあるが、気絶させたことについては悪かったと思うので謝罪したのだが、ドラゴンの状態のリョーマには大して優しくないアーシャは彼に飛翔種の状態で竜馬車を引くように言ってきたのである。

 リョーマとしては別に誇りも何もないので簡単に承諾したが、これはアーシャにとっては意味が違ってくる。

 竜使いにとってドラゴンとは何か、敬うべき目上の存在、平等なる仲間、従えるべき従者、皆それぞれ違うのだがそれは竜使いで階級とドラゴンの階級によって変わってくる。

 使い手の階級が低くドラゴンの階級が高ければ目上、使い手とドラゴンの階級が等しければ仲間、使い手が上級、ドラゴンが下級であれば従者なのだがアーシャは良くて下級、悪くて最下級か初心者といったところだ、それに引き換えリョーマ、バルバランドは最上級……アーシャからしたら雲の上の存在そんなドラゴンが飛翔種でありながら地を歩き竜馬車を引いているのだ。

 すれ違う馬車に乗っている者たちは思う、一体あの竜馬車にはどんな凄腕の竜使いが乗っているのだろうかと。


 今、リョーマ達が進んでいる道は花園を迂回した先にある街道で、割と他の旅行者とすれ違うそんな目立つ馬車だ。


「見えてきたぞ、パリューゲンの城門だ、今頃城の連中は慌ててるんだろうな、何せ予定では三日は早く着いてるからな」


 アーシャの機嫌も大分落ち着いてきたと判断したリョーマは話しかけてみた。


「そうですね、歓迎の用意ができていなければそれを理由に出国すれば問題ないですね」


 まだ若干ご機嫌斜めらしくトゲのある事務的な返事が返ってきた。

 これではパリューゲンに入ってから先が思いやられるとリョーマは思った。



 一方その頃、パリューゲンでは。

 花の貴公子とも言われる第一王子フローレンスは苦悩に顔を歪ませていた。

 国の特産で輸出品である花園原産の花々やそれを使った蜂蜜などが花園の謎の大火事のせいで入手できなくなったという知らせが入ったのだ。

 何故そのようなことになったのか分からないがこのままでは国が滅んでしまう、そんな一大事の中追い打ちをかけるように彼の執務室に兵士が入ってくる。


「ご、ご報告します、ドラガルドの王女、アーシャ姫様がお見えになりました」

「何!? 予定ではまだ三日あったはずではないか? 何故こんな時に……姫の愛竜のバルバランドを入れる竜舎すら完成していないというのに、このままではあの美姫を取り逃がしてしまう」

「姫様の護衛が一人も見当たりません竜馬車と契約竜のみです、どうやら花園を一気に突き抜けてきたようなのですが……」


 兵士の報告にフローレンスは顔をしかめた、何故姫一行が姫とドラゴンだけなのか、そしてアーシャの契約竜バルバランドは火竜種、それと謎の大火事、それが意味することは――――。


「どうやらアーシャ姫はここに嫁ぐつもりはないらしいな……しかしだからといって国の唯一の収入源を駄目にされて素通りさせるわけには行かない、皆の者迎撃準備だ、姫とその契約竜を捕縛する」


 フローレンスは側近をひきつれ、アーシャ立ちが来るであろう南門へと向かった……そこにアーシャ達が居ないとも知らずに。


 同時刻――――リョーマは空を飛んでいた、アーシャにようやく許してもらったので地道に歩くのが面倒くさくなりパリューゲンの城まで竜馬車を抱えて飛ぶ事にした。

 ゲーム時の感覚だった為の行為なのだが、勿論入国手続きなど正規の手段を取っていないので彼らの罪状知らず知らずのうちにさらに増え続ける。

 都を一望するためにリョーマは高高度を飛んでいた、国といってもリョーマが居た元の世界とは違い一つの大きな都市で王族を名乗る者が住んでいれば国扱いされる為そこまで広大なわけではないが、一応ヴァルキュの花園もパリューゲンの領地とされている為数ある国の中で一番の面積を誇っている。

 そしてその面積の三分の二が花園だった訳でそれを全て焼き払ったヴォルケーノヴァの火力が以下に尋常ではなかったかを物語っている。


 リョーマが空を飛んでいると地上の方から何やら光るものが飛んできた、もう少し低ければ当たっていたかもしれないそれは魔法だった。


「綺麗ね、歓迎の花火かしら?」

「いや、違うな……多分魔法で攻撃されてる」


 色とりどりの魔法が地上からリョーマ達目掛けて飛んでくるが高さが足りないので全く当たらず空中で霧散している。


「何故攻撃されているのかしら? リョーマ何したの?」

「俺のせいかよっ! と言いいたいがそういや入国手続きとかしてないな」

「どうするの?」

「ああ、とりあえず俺が話つけてくるからここで待っててくれ」

「ここでって空の上よ?」

「そうだな……空の上だな、風竜種の魔法に雲を固めて空飛ぶ大地を作る魔法があるんだがそれを使う」


 そう言いながら竜魔法『風竜の巣』を使うリョーマ、本格的な巣を作る訳ではないので竜馬車がすっぽりと入る御椀のような形を作る。


「それじゃ行ってくる」


 竜馬車を雲の上に置いたリョーマは魔法の乱れ飛ぶ眼下に向かって急降下した。


「いってらっしゃい」


 アーシャは彼の無事を祈りながらそれを見送った、常に何もできない自分の不甲斐なさを呪いながら。


しばらく優先的に更新しようかと思いますのでよろしくお願いします。

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