第16話
すみません、商業作品の締め切りが近いので、今週は更新が遅れるかもしれません……。
「さて鷹翔君。御前試合に向けて頑張るわよー!」
「はい! でも俺って、ごく普通の一般人ですよ?」
元気に答えたのはいいが、武道とかも習った事が無い俺に本当にこなせるのか、心配が勝っている。
「そうね……とはいっても、実際に人同士で殺し合いや模擬戦をする訳ではないわ。現当主が呼び出す式神を倒せれば課題クリアーだわ」
「現当主……」
恐る恐る澪奈さんの方を見るとなんか上機嫌でにやにやしている。
「えぇ、私よ♪」
「かなり強いですよね? 西園寺家最強ですよね?」
「えぇ♪ 手加減はしないけど、ちゃんと見合ったレベルの相手を出すわよ~」
にこやかに、かつ楽しそうに笑いながら応えてくれる澪奈さん。そうは言っても心配は心配だ。
「大丈夫よ〜、あの魔獣を倒せたんだし」
「いや、あの時は記憶が……」
「そうね、だから御前試合を切り抜ける為に御留流を〝適切に〟使えるようになってもらうわ。大変だけど頑張ってね」
「わ、わかりました……」
「とは言っても、最初から〝纏雷〟で戦う事はしないわ。まずはこれよ」
取り出したのは沢山の電球である。
「まさか……」
「えぇ、そのまさかよ」
つまり、最初の訓練は人間発電機をやる事らしい。
「とはいっても、今まで無意識下で使ってた鷹翔君にはなんじゃらほいだと思うから体験してもらうわ」
「へっ?」
そう言って俺の前に《《瞬間移動》》をした澪奈さんが俺の手を握る。
「そーれ!」
――バチンッ!!
その瞬間、身体に電流が走り。存在しない記憶が脳内に流れ出した。
(いや、これは……)
あの夜の事だ……。
◇◆
目の前に魔獣が迫る、牙をむき出しにして俺を食い殺そうとしている。
(この時俺は……)
だが、その牙は俺の身体に届かず阻まれる。
「返せ」
「ぐぁぁぁぁ!?」
噛みつこうとしてくる魔獣の歯を砕き、殴り飛ばす。受け身が取れず転がる魔獣の元に、西園寺さんが持っていた折れた刀を持ち近寄る。
「クソッ! ならば取り込んだこの娘の力で!」
バリバリと全身に紫電を纏う魔獣、速度を増した突進を片手で往なし、その眼に刀を突き立て抉り取る。
「ぎゃあああああ!? 何故だ何故こんな小童がぁぁぁあ!!」
「返せ……」
「ま、待て!」
慌てて逃げる魔獣を、雷光と化した俺が追いつき蹂躙をする。中々に致命傷まで届かないが段々と魔獣の動きを凌駕しつつある。
「何なんだお前は!!」
「返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ!!」
「ぎゃがあぁぁぁぁぁぁ!? 腹がぁ! 俺の腹がぁ!?」
雷撃の刀を振り回し、魔獣を裂く。返り血を浴びても止まることのない乱撃で開いた腹の中から、西園寺さんの上半身を引っ張り出す。
「足りない……」
「ひぃ! やめ……やめ……!!」
既に瀕死状態で逃げようとしている魔獣の脚を切り落とし、その体を左右泣き別れにする。そして露出した宝石の塊を取り出すと修羅の如き攻撃が止む。
「足りる……助ける……」
西園寺さんの打ち捨てられた下半身を探し出し上半身と並べる。壊れた身体に魔獣の宝石を置いて手をかざすと、彼女の身体が再生していく。
◇◆
意識が引き戻された。澪奈さんが俺の手を握って笑っている。
「どうかしら、感覚は掴めたかしら?」
「えっと……掴めたかはわからないですが、あの夜の記憶は戻りました」
「そう、そこまで強い威力じゃなかったのだけれど……」
「そうですね、静電気よりちょっと強いくらいでしたし……」
気持ち悪さや目眩なんて無い、記憶の欠落はかえって来たしすこぶる好調だ。
「もう少し続けても大丈夫かしら、ダメそうなら止めるけど……」
「いえ、大丈夫です!」
なんというか、少しクセになってしまいそう……。
「じゃあ、もう少し頑張りましょう。感覚を掴んだら次は電球点けの訓練よ」
「はい!」
その後、数回の放電で感覚を掴んだ俺は、沢山の電球を壊しながら御留流の初歩を習得したのだった。
そして訓練を開始してから1週間。御留流の訓練の為に少しだけ変えた自主練をこなした事もあってスマホの急速充電が出来るようになっていた。
「鷹翔さーん今日はこちらの服を着て下さーい」
「あっ、はーい!」
磨硝子の向こうから聞こえたので返す、莉音さんのシルエットが消えたのを確認すると脱衣所に出て確認するとそこには袴が置いてあった。
「袴……俺着た事無いんだけど……」
困惑しつつ格闘していると脱衣所の扉がノックされる。
「すみません鷹翔様、大丈夫でしょうか?」
心配そうな西園寺さんの声が聞こえる、渡りに船とはこの事。
「あ、すみません……袴を着た事が無いので、着方がわからないのです、特に下の方が……」
「そうなのですね……盲点でした。お手伝いに失礼しても?」
「あ、はい。お願いします」
一応穿く物は穿いてるし、隠す所は隠してあるので大丈夫だろう。
「では、失礼します……」
赤い顔をして入って来た西園寺さん、何故か目を逸らしている。
「あ、あの……そんな首を明後日の方に向けてたらっ!?」
置いてあった脱衣籠に躓き倒れそうになる、そこを慌てて身体を割り込ませた結果。見事に俺も穿き途中の袴に引っかかりすっころぶ。
「いてて……大丈夫ですか?」
「は、はい……すみませ……きゃうっ!?」
西園寺さんの視線がある一点で固定される、俺も視線を向けると元気な俺の分身がウォーミングアップを始めていた。
「こ、これはです……「あ、あのっ!」」
西園寺さんに言葉を遮られる、そして互いに沈黙が訪れ……。
「遅いし、大きな音がしたので来てみれば。なーにやってるんですか……」
「!?」「ひゃ!?」
呆れたような顔をした莉音さんが入り口に仁王立ちをしていた。
「まるで、鷹翔さんの持ってるエロ漫画の導入じゃ無いんですから……」
「えろ……っつ!? すす、すみまくぁすぇdfrgtyふじこlp」
エロと言われ混乱しきった西園寺さんが俺を投げ飛ばしながら立ち上がる。なんで投げ飛ばされたかわかったかって?
「ぐげっぇ!?」
見事に空中を舞い、カエルの様に潰れた声を出したからだ……。
「あーすみません……生きてますか?」
「はい……生きてます……」
結局は莉音さんに着付けを教えてもらう事になったのだった。2メートルくらい距離を取られたけどね……。
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