第13話
<零音Side>
小鳥遊様が結翔さんとの話へ向かい居室を出ていった後、残された私はお母様と向かい合う。
「さて零音、貴女には私から条件を出すわ」
お母様の真剣な視線が私を捉える。そこには西園寺家の戦闘部隊を率いる筆頭としての厳しい表情を浮かべた顔があった。
「はい、お母様」
「単刀直入に言うわ。零音には半年の間に鷹翔君と共に〝雷神調伏〟の儀を受けてもらうわ」
「お母様、それって……」
雷神調伏の儀というのは神様の力を宿した私達、西園寺家分家衆が頭領のになるために必要な儀式の事で、お母様も行った儀式だ。
「それでお母様、幾つの儀式を……」
儀式には段階がいくつかあり、筆頭になるには先の頭領が従える雷神の半数を超える必要がある、つまり8柱全ての儀式を超えているお母様から頭領を譲り受けるには、5柱以上が必要なのだ。
「そうね……とりあえず5柱以上ね。それだけの儀式を突破すれば頭領を移譲できるし、そうなれば本家の年寄り連中や他の分家も黙るでしょう」
さらっと言ってるが5柱というのはとてつもなく
「わかりました……」
「そして、もう一つ……小鳥遊家《我が家》の上は今2つに割れたわ」
「2つ……ですか?」
「えぇ、ひとつは鷹翔君を取り込む派。貴女かそれとも適当な分家の子供を充ててその血をを取り込む派閥。そしてもう一つは……」
お母様が大きく溜め息を吐いて、緩慢に目を開ける。
「まさか……」
嫌な予感が頭を過る。
「えぇ、そのまさかよ。当家の御留流を使うことの出来る、鷹翔君を危険因子として殺す派閥よ」
目の前が暗くなる。早計すぎる家の者達や、小鳥遊様を巻き込んでしまった申し訳無さが胸に落ちて影を作る。
「だから、鷹翔君の成長が見込めなくても。鷹翔君を守れるくらいの強さが必要になるわ」
私の為に躊躇いなくその身を賭してくれる決断をしてくれる私の恩人、その為なら私も腹を決めよう。
「わかりました、この事は小鳥遊様には?」
「うーん、それは鷹翔君次第ね。彼の成長が私達の想像を超えるものであれば伝えるつもりよ」
「それは……」
なぜ伝えないのか、そう口に出そうになるが……。
「まぁ、雑念が多くなると鷹翔君自身の特訓に支障が出ちゃうからね」
「そうですね……」
私もこの心にある厭らしい雑念を捨てないと……。
「そ・れ・よ・り・も、せーっかくお望みの婚約者になるんだから、名前で呼んであげないの?」
――――は?
「ふぇ? 名前……名前!?」
思考が停まり一気に顔が熱くなる、いやいやそんないきなり名前を呼ぶなんて!?
「ど・う・な・の・よ〜」
「そそそ、それはその……」
「それに、ちょくちょく結翔ちゃんがこれから家に来るのよ? それなのに小鳥遊様なんて言っちゃったら、どっちかわからなくなっちゃうわよ?」
確かに、婚約者となればそのご両親と会うことも増えるだろう。
「それに、私だけ鷹翔君に名前呼ばれてもいいの?」
――ピシャ―ン!
私の背後に雷撃が落ちる、そういえばどさくさで小鳥遊様はお母様の事を……。
――ピシャ―ン! ピシャ―ン!!
「わ、私も……呼びます!」
決心して心のなかで言う……。
(鷹翔さん鷹翔さん鷹翔さん鷹翔さん鷹翔さん鷹翔さん鷹翔さんっ!!)
「……とさん……たかっとさん……鷹翔さん……」
「はい、どうしました?」
!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
――バチンッ!
思わず聞こえた声に、飛び跳ねてしまう……。
「鷹翔様!?」
目を丸くした鷹翔様がそこに居た。
「「んふふふふふ〜」」
そして対象的にお母様と結翔様がニヤニヤした顔で私を見ていた。
<??Side>
「クソッあの女狐がぁ!!」
あの女狐のガキが生きてるなんて!
わざと任務を増やし、疲弊させ、そして魔獣の襲撃地域に誘導したというのに!
「クソッ! クソッ!! クソッォォォォォ!!!!!」
殴りつけるサンドバッグが千切れ、壁にぶつかり爆散する。
「おやおや、随分荒れてますねぇ……」
「フン、貴様らか……お主のけしかけた魔獣、あの小娘に手も足も出なかったらしいな」
胡散臭い風貌の青年が嗤う、こちらに対して礼などもなくただ愉しそうに。
「フフフ……ハハハハハッ! おやおや、これは失礼。つい嗤けてしまって」
ケラケラと腹を抱え慇懃無礼を全身で表現しているような男、こちらの神経を逆撫でするが実体がない分相手にするのも無駄だ。
「全く……こちらは有利にするために骨を折ったんだぞ、というのに使えん仕事をしよって」
「すみませんすみません、とはいってもあまり強い魔獣をこちらの世界に呼ぶと、神に察知されてしまいますし」
「チッ……」
「仕方ないですね……もう少し摂理の穴を突こうと思います。ただ、強い魔獣ではありませんので……殺すのであればそちらでも策を弄して頂く必要があります」
「仕方ない……数は用意しろよ」
「かしこまりました…………岑王さま……」
いけ好かない笑みを浮かべながら消えていく。
「さて、こんどこそ死んでもらうぞ零音……」
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