虚像を抱いて
後日談 ウィル
あの日。
劇場の真ん中で、ルキナの醜さが晒された瞬間、
ウィルはようやく気づいた。
(……俺は、間違っていたんだ)
あれ以来、彼の傍らにいるのは、
あの時に偶然出会った麗しい美女だった。
ウィルは今日も、彼女への贈り物を選んでいる。
“気を引きとめるため”に。
(他の男に……とられたくない……)
商店の店主が、厳しい声を投げる。
「先日の小切手は無効でした。
現金でお支払いをお願いします」
「あっ……そう……だったか……
すまない。すぐ、支払うように伝える」
伝えるも何も、彼は自分で払う金をほとんど持っていない。
ウィルの私的財産は、もう底が見えていた。
――ルキナに強請られた日々のせいだ。
(……あの美女と出会うのが、
ルキナより早かったら……よかったのに……)
けれど、後悔は何も戻さない。
家に戻ったウィルは、溜息をつく。
(仕方ない……家の金を、少し拝借するか……
“将来の後継者”なんだから……問題ない……)
そう自分に言い聞かせた。
しかし、その行動が引き金となった。
後継者の資格は正式に剝奪され、
家族からの信用も失われ、
ウィルは転げ落ちるように日々を失っていく。
傍らを見る。
そこにいるのは、もう美女ではなかった。
愛しい人でもなかった。
ただ、空虚さを埋めようとする“重たい瓶”だけだ。
ふらついた息で、小さく呟く。
「……俺は……あいつにさえ……
目移りしなけりゃ……」
照明に揺れる影が、かつての青年の面影をぼやかして消していく。
自分の選んだ“真実の愛”が虚像だったことを、
ウィルが理解するには、あまりに遅すぎた。




