星降る夜に君といつまでも…
フローラは、公爵夫人の寝室にひとり残されていた。
清らかな香り、柔らかな光、ふわりと沈む絹の寝具。
どれもが優しくて、まるで“自分を歓迎してくれている”ようだった。
(こんな……幸せに溢れた部屋に……私がいていいの……?)
胸がいっぱいになり、気づけば頬が熱くなっていた。
母の形見のブローチをそっと握ると――涙が滲んだ。
(ありがとうございます……お母様……)
喜びの涙だった。
けれど、同時に。
「ど、ど、どうしよう……」
豪奢な寝室のベッドを前に、フローラは真っ赤になった。
理由はわからないけれど、心臓がずっと落ち着かない。
コンコン。
控えめなノックに、肩が跳ねた。
「は、はいぃい……!」
カチャ。
扉が開き、レオが姿を現した。
昼とは違う、静かで色香を含む気配をまとって。
「待たせたか?」
「い、いえ……」
なぜだか、とても……とても恥ずかしい。
胸の奥が甘く震え、視線を合わせるのさえ難しい。
部屋の空気は、
どこまでも“あまーーーい”。
レオは一度咳払いし、柔らかく微笑んだ。
「……緊張せず、話をしよう。
まずは……あれだ。フローラに出逢った時のことを」
フローラは顔を上げる。
レオの瞳には、初めて会った夜の光が宿っていた。
「涙をこらえながら、必死に礼儀を守る君を見て……
あの瞬間、胸の奥が熱くなった。
それが……一目惚れだったよ」
「……一目、惚れ……」
胸が苦しいほど温かくなる。
レオはゆっくりと手を伸ばし――
フローラの手にそっと触れた。
離そうと思えば簡単に離れられる、優しい触れ方。
けれどフローラは、そっと指を重ねて頷いた。
二人の間に、ひたひたと満ちてくる静かな幸福。
窓の外では、夜空に星が瞬いていた。
湖の向こうまで照らすほど澄んだ、煌めく星々。
レオが、囁くように言った。
「……フローラ。
君が来てくれて、本当に嬉しい」
フローラも、静かに微笑んだ。
「……こちらこそ……ありがとうございます……レオ様」
星空は、二人を祝福するかのように輝いていた。
迷いなくのばされた手に頬をよせ
互の瞳が絡まりあい…
そっと優しく唇を重ね
夜は更けていった。
――終わり。




