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深緑の涙に恋をした公爵は、今日も粘着気質を拗らせる  作者: ChaCha


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一撃の恋。

プロローグ

夜会の喧騒は、磨かれた大理石の床を伝って淡く揺れていた。天井に吊られた無数の燭台が、黄金色の光を回廊まで伸ばし、影を長く引きのばす。その光の端を歩きながら、俺は静かに息を吐いた。


「そのままだとご自慢のものも役に立てず天に召されるぞ」と親友ディンが笑った声が、まだ耳に残っている。まったく失礼な奴だ。だが、確かに言い寄ってくる貴族の子女を前にしても、胸の奥は一度も動いたことがない。動く予定もない。

少なくとも、あの瞬間までは。


回廊を抜けようとした時だった。

「君とは婚約破棄だ」

鋭い声が夜の空気を裂いた。反射的に足を止め、柱の陰に目を向ける。


そこには、涙をこぼす令嬢。そして、勝ち誇ったように笑う妹と、胸を張る元婚約者。絵に描いたような最低の光景。

思わず舌打ちしそうになったが――カツン、と靴音が先に響いた。


しまった。


「…だれ…?」

震える声とともに、ゆっくり振り向いた令嬢の瞳が、燭台の光を受けて深い森のように揺れた。


その色を見た瞬間、胸の奥が――初めて、熱を帯びた。


ああ、終わったな。

俺は、一撃で恋に落ちた。



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