表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/14

第6話 昼の影



昼下がり、珍しく彼は在宅していた。

安アパートの薄い壁越しに、彼女の笑い声が聞こえてくる。

夜とは違う、明るく軽やかな声。

まるで昨夜の妖しい囁きなどなかったかのように。


彼は窓辺に立ち、ふと外を眺めた。

その瞬間、視界の端に“異変”を捉える。


——彼女の部屋のドアが、静かに開いた。

出てきたのは、見知らぬ男。

細身で背が高く、帽子を目深にかぶっている。

顔はよく見えない。

だが、出てきたときの足取りは妙に重たく、影のように薄暗い印象を残していた。


男は辺りを見回すと、彼と目が合いそうになり、すぐに顔を逸らした。

そして何事もなかったかのように階段を降りていった。


胸の奥がざわつく。

——昨夜、穴の向こうで聞こえた“もうひとつの声”。

あれは、彼だったのか?

それとも……。


数分後、彼女がドアを開けて姿を現した。

まるで何事もなかったように、微笑みながら外出していく。

しかし彼には、その笑みがどこか“演じられたもの”にしか見えなかった。


昼の光に照らされたはずの彼女の背中が、不思議なほど暗く見える。

彼の胸の鼓動は速くなる。

「見てはいけないものを見てしまった」

そんな直感が、全身を支配していた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ