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第1話冒頭
またまた、二人は同じ街に引っ越してきた。
しかも、奇妙な巡り合わせか、隣同士の部屋になることになった。
古びた安い賃貸物件の壁は薄く、物音や話し声が筒抜けだ。
初めて訪れた部屋の隅で、女性はふと視線を感じた。壁に、何かある——いや、穴が空いているのだ。
小さな円形の穴。指先で触れると、向こう側の気配が微かに伝わる。
その瞬間、彼女は自分の望む「覗かれたい気持ち」が、現実の形で現れたことに気づく。
向こう側にいるのは誰なのか——そして、壁の向こうから覗いているのは誰なのか——。