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グリアンロンの叙事詩  作者: ソルト
第一章:四つの灯火
1/6

プロローグ

 最後の土をかけ終えた女は服が汚れるのも気にせず、その場に座り込んだ。もう指一本だって動かしたくない。

「……」

 数日前までこの村は平和そのものだった。近くに大きな川があって、村人みんなで畑を耕し、家畜を世話し、秋には収穫祭があって女達は花を髪に刺して男達と踊る平凡な村。それなのに、突然現れた屍人(グール)の群れに襲われ、たった一夜で彼女以外の全員が殺された。いや、()()()()を除いた全員が殺された。

「ライアン……ッ」

 仕方がなかった。人間として死なせてやるにはああするしかなかった。いくら自分に言い聞かせても、女の罪悪感は消えず、頬には涙の跡が絶えない。優しかった夫はもういない。自分がこの村にいなければ、もっと早く記憶を取り戻していたら、ライアンはきっと今も生きていた。村は平和なままだった。

 鉛のように重い脚に力を入れ、女はなんとか立ち上がる。泣いてばかりいられない。自分にはまだやらねばならない事がある。

 


 翌日。女は支度を整えると、生前夫が女によく似合うと言った花を冠にして墓標に捧げた。

「(グウェンの魂はここに置いていくわ)」

 魔女が私を探しているならこちらから出向いてやろう。

 実母だろうと関係ない。私の大切なものを奪った。討つ理由なんてそれだけでいい。


 女の名はエウェル。エウェル・グリアナン=マクアピン。王国の王女にして魔女を討つ者。

 一振りの剣と亡夫への想いと供にエウェルは旅立った。

 













2025/08/14 加筆・修正しました

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