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7.高嶺の花



「あれ……、降谷くん? いまなんのポスターを見てるんだろう」


 ーー9月9日の放課後。

 降谷くんが学校の昇降口に掲示されているポスターにスマホをかざして写真を撮っていた。

 ふとそのポスターが気になって彼の後ろからそっと覗き込む。


「校内似顔絵コンクール? もうこの時期なんだぁ。毎年恒例だよね。今年の大賞賞品はワイヤレスイヤホンかぁ。ふむふむ……。今年も賞品が豪華だねぇ」


 ぽつりと呟くと、降谷くんはギョッとした目で振り返った。


「なんでお前がここに」

「だって、降谷くんを見かけたからなにしてるかなぁと思って」

「気軽に話しかけられても困るって言ったはずだけど」

「そんなに古い話、もう忘れちゃったよ」

「……」


 彼は黙っていても、目が「先日の話だろ」と訴えてくる。


「ねねっ、もしかして校内似顔絵コンクールに興味があるの? この前、降谷くんの部屋に入った時に絵がたくさん飾られていたし、大賞をとったら賞品もらえるしね」

「お前には関係ない」

「照れ隠しでしょ。ねぇ、参加してみようよ。えっと、校内に展示されるのは10月1日かぁ。まだ3週間くらい時間があるね。私、モデルをやってあげるから参加しようよ!」


 彼の横について少し前のめりになってそう言うが、彼は顔色一つ変えずに方向転換して足を進める。


「そーゆーのお節介」

「ちょ、ちょ、ちょっと……、降谷くん!!」


 降谷くんは相変わらずだ。

 私の言葉なんて聞き入れる気がない。

 彼がわが家に来てから私たちの関係は平行線のまま。

 自分だけが盛り上がってる状態に。


 暗い表情のまま佇んでいると、向こうからりんかが傍に駆け寄ってきた。


「み〜つき! 元気なさそうだけど、また降谷くんに告ってたの?」

「違うよ。ただ、話をしてただけ」

「いい加減諦めなって。降谷はその辺の芸能人よりイケメンだし人気があるの。私たちには所詮高嶺の花なんだからさ」

「う、うん……」


 彼の方に目を向けると、その近くにいる女子がキャアキャアと騒ぎ立てている。

 もう見慣れている光景だ。

 一緒に暮らしていても彼は手の届かない人。

 私のことなんて一切無関心。

 今年で3年目の片想いの人。

 そして、それ以上でもそれ以下でもない関係だ。


「みつき、さっきこのポスターを見てたの?」


 りんかが壁のポスターに指をさしたのでこくんと頷く。


「毎年恒例の校内似顔絵コンクールの今年の大賞賞品はワイヤレスイヤホンなんだって」

「へぇ、今年の景品も豪華だね! 毎年参加者が殺到するのは納得がいくわ。……で、みつきは参加するの?」

「えっ」

「大賞とったらワイヤレスイヤホンだよ? 先日イヤホン壊れたから欲しいって言ってなかったっけ?」

「あ、うん……。確かに壊れたけど……。このコンクールの選考って、確か生徒の投票方式じゃなかったっけ?」

「そうそう。似顔絵は体育館に展示されるから、生徒はエントリーしている絵を選んで学校から配布された投票用紙にエントリーナンバーを書いて投票するんだったよね」

「今年も参加者は多いかな」

「賞品目的の人が多いかもしれないね。200作品は超えるかも」


 降谷くんは参加するのかなぁ。

 でも、描くとしたら誰の絵を? ちょっと気になる。

 はぁ……。『私モデルやってあげる』なんて言って少し押し付けがましかったかなぁ。

 多分、こーやってずかずかと心の中に入り込まれるのが嫌なんだよね。

 私にはいつまで経っても高嶺の花かもね。



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