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ぬりかべの町


 これから、とある地方のあやかしについて語ろうと思う。

 

 僕がとある町を訪れた時の話だ。あれは暑い夏の日のことだったと思う。


 北九州にある小さな町で、知る人ぞ知る酒蔵がある。そんな町に住む友人を訪ね、一緒に酒を飲んだ。


 僕は酒を飲んでも変な酔いかたはしない。ある程度飲みすぎると、すうっと静かに眠ってしまうのだ。だから何を言いたいのかというと、これから話すことは酔っぱらいのホラ話ではないということです。


 北九州の酒はうまかった。酒が進んで夜の九時過ぎくらいから飲み始めていたのだが、気がつくと日をまたぐくらいの時間になっていた。もしかしたら途中で寝てしまったのかもしれない。


 友人は酒に強い男でまだまだ酒を飲みそうな感じだった。僕はその時あまり眠くなかったから、まだ酒盛りに付き合うつもりでいた。


 だが、ここで問題が発生する。酒はあるが、つまみがなくなってしまったのだ。酒を飲むのにつまみは欲しい。僕は近くにコンビニがあったことを思いだし「何か買ってこよう」と提案した。


 友人は「酔いざましもかねてついていこう」と言った。断る理由もない。僕たちは二人でのんびり歩きながら近くのコンビニを目指した。


 いくつかの角を曲がって、僕たちは無事コンビニに到着する。そこで、いくつかのつまみを買い友人の家へ戻ることにした。


 またいくつかの角を曲がれば友人の家には到着するはずだった。が、すぐに妙だと思うことになる。


 そこには壁があった。触れてみるとひんやりとして、ざらざらな固い感触。例えるならアスファルトのような質感の壁だ。確かに曲がり角があったはずの場所に壁があって進めない。これはおかしい。


 僕が友人を見ると、彼は「またか」とこぼして、この異変に慣れている様子だった。彼は「こっちだ」と言い先を進み始める。僕は不思議に思いながら彼のあとをついていく。


 行きと道順は違ったけれど僕たちは無事、友人の家に到着する。そうして友人は再び酒を飲み始めた。僕も一緒に酒を飲む。


 僕はさっき現れた謎の壁と、そのことに慣れた様子の友人が気になっていた。だから「君はあの壁について何か知ってるのかい?」と訪ねてみたのだ。


 友人曰く、あれはぬりかべという妖怪らしい。道に無いはずの壁が存在していたら、それはぬりかべという妖怪のせいなのだとか。


 あの町には妖怪がいて、友人はそれを当たり前のものとして受け入れていた。あの日の体験は、もしかしたら夢だったかもしれないし、酒が見せた幻なのかもしれない。


 夢や幻だったかもしれないが、僕はあの日触れた壁の感触を今でも思い出すことができる。

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