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7.勇者オルティス

そんな、ある日の事。


両親の部屋で、1冊の本が私の目に留まった。

本のタイトルは『この世界の歴史』。


この世界は太古の昔から、イアール人とザナール人で、殺し合いが続いた世

界。



一体どんな悲惨な歴史が この本に書かれているのだろう…………。



そう思い私は、両親の部屋から私の部屋へと、本を持ち出した。


本には、次のような内容が書かれていた。




殺し合うイアール人とザナール人。


それを見兼ねた女神エリスは、今からおよそ1000年前、遂にこの地に降

り立った。


この年を『エリス歴0年』と呼ぶ。



へ~。


女神って本当に実在するのかな?


それとも ただの神話かな?


どっち なんだろう?



女神エリスは、この世の者とは思えないほどの、美しい容姿をしており、彼

女に会う誰しもが、その美しさに魅了された。


また彼女は不思議な力により、この世界全ての人々を、イアール人は北大陸

へ、そしてザナール人は南大陸へ。


一瞬で移動させ、そこに住まわせた。



すげぇ!


これって本当に 実話なのかな?



その後、北大陸と南大陸で、それぞれ50年の間、過ごし『今後は決して 

大陸を渡ってはいけない』との教えを人々に説いた。

(エリス歴0~100年)。


そして、この地を後にした。



エリス 50年ずつ過ごしたら 既に100歳ばばあ なんですけど……。



こうして、太古から続いたイアール人とザナール人の争いは、終わりを告げ

たかのように思われたが…………。




今からおよそ300年前(エリス歴697年)遂に禁断の掟が破られた。


ザナール人『アルテミス』が軍を引き連れ、北大陸『アデール地方』への侵

攻を、開始したのである。


理由は、南大陸での食料難と言われている。




北大陸の南東部『アデール地方』。

ここは土地が肥沃で、北大陸最大の穀倉地。


アルテミスは、ここに目を付け、ここをザナール人の食の拠点とするため、

攻め入ったのだ。




『アルテミス』。

女性で『異端者』だった。


剣の腕はもちろん、水の最上級魔法『水神』の使い手でもあった。


そんな彼女の放つ魔法は、1撃で数千人もの人々を即死させるほどの、破壊

力であったと言われている。



ん?


異端者?


何それ?


それに1撃で数千人?


魔法 こわひ…………。




当時アデール地方は、北大陸の南半分を国土とする『ロザリア王国』の領土

の一部。


女神エリスの教えにより、イアール人とザナール人が争う事は、アルテミス

の侵攻まで一度もなかった。


しかし、この地を女神エリスが去り、100年ほど経った頃から、北大陸で

は、イアール人同士の覇権争いが、始まった。


この争いは、300年余りにも及ぶ。


人々は、この時代を『乱世』(エリス歴212~520年)と呼んだ。


幾つもの国家が生まれては、そして滅んで行った。



せっかく女神エリスが イアール人とザナール人を住み分けしたのに……。 


何で こうなるの?




そんな中、今からおよそ500年前、乱世に終止符を打とうと、当時小さな

一国家に過ぎなかった『ロザリア王国』が立ち上がった。


ロザリア王国は、北大陸中の異端者を、破格の報奨金をもって雇い入れ、そ

の配下に迎えた。


そして周辺の国々を次々と滅ぼし、遂には北大陸の南半分全てを掌握する、

大国家となったのだ。




北大陸の北半分。

そこは、山々が連なる高地で、人々の居住に適さない未開の地。

その当時、国家は存在しなかった。


こうして300年余り続いた乱世は終わりを告げ、事実上、北大陸は、ロザ

リア王国により統一されたのだ(エリス歴520年)。




統一後、北大陸には平和が訪れた。


しかしそれとは裏腹に、ロザリア王国は…………。


次々に周辺の国を滅ぼした、異端者達の類い希なき力を、近い将来、平和を

脅かす力に成り兼ねないとして、次第にその力を恐れるようになっていた。


そして…………。


徐々に迫害を加え、遂には『異端者狩り』を国の法として定め、異端者を次

々と処刑したのである。



ほえ~。


異端者狩りか~。


よく分からんが…………。


しかし国家統一の功労者を 必要無くなった途端 処刑するとは……。


いつの世も 人の性とは恐ろしい…………。




異端者狩りは、アルテミスが侵攻した当時も続けられていた。


そのため異端者のいないロザリア王国は、異端者アルテミスに対抗する術な

く、いとも簡単にアデール地方を失ったのである。




その後アルテミスは、これを機に、イアール人全てを滅ぼすであろう。

そう思われていたが、以外にも、それ以上、北大陸へ侵攻する事はなかった。


そして突然、その姿を消したと言われている。


この300年前の出来事を人々は『アルテミスの乱』と呼んでいる。

(エリス歴697年)。



ふむ~。


もしその当時 アルテミスが侵攻していたら…………。


今の私は いないかも…………。




そして、歴史は繰り返される。


今からおよそ100年前。


今度はロザリア王国で、食料難が発生したのである。


アデール地方を失ったのと、何年も干ばつが続いた事が原因で、イアール人

の多くが飢えのため、命を落とした。


そのためロザリア王国は、ザナール人から、アデール地方を奪い返す事を決

意。


軍を結成した(エリス歴899年)。




その頃のロザリア王国では…………。


アルテミスの乱をきっかけに、異端者狩りを廃止。

逆に異端者を国宝とし、王宮に招き入れ、貴族並の地位と名誉を与えた。


軍の最高司令官に任命されたのは…………。


『オルティス』。


彼は王族の出で、若干16歳。

『異端者』かつ『能力者』でもあった。


剣術、魔法、精神魔法、全てにおいて、彼に敵う者は一人もいなかった。



ん?


能力者?


精神魔法?


何それ?




これに対しザナール側も…………。


幾人かの異端者と能力者を北大陸へと送り込み、アデール地方を死守しよう

とした。


しかしアルテミスは既になく、その当時ザナール側に、彼女ほどの力ある異

端者は、存在しなかった。




これに対し『オルティス』は…………。


アルテミス以上の力ある異端者で、破壊力のある魔法を放ち、数々の精神魔

法を使いこなした。


そして剣術においては…………。


『ソウルデス』と言う剣の究極技まで会得した『将に比類なき才ある人物』

と言われるほどの存在であった。




『ソウルデス』はその名のとおり、魂を死に至らしめると言うもので、この

技を使うオルティスは、まさに無敵の存在であったと言われる。


後にも先にもこの技を使える者は、オルティス以外にいない。

そう、言われるほどの究極技だ。



ほ~。


オルティス すげぇ~な!


しかし剣で魂を死に至らせめるって…………。


一体 どんな技なんだ…………?




オルティスは、ザナール側の異端者と能力者を、一人また一人と亡き者にし、

徐々にアデール地方の町や村を奪回。


そして最後に、アデール地方最大の都市『アデール』を陥落させ、遂にオル

ティスは、アデール地方全域を、ザナール人の手から、とり戻す事に、成功

したのである。


これにより、ザナール人は全て、南大陸へと撤退した。




その後オルティスは…………。


女神エリスの教えを守り、南大陸に攻め入る事なく、ロザリア王国へと帰還。


その功績により…………。


ロザリア王から『アデール・ウィル・オルティス』の称号を賜り、アデール

地方一帯を治める『アデール王国の初代国王』となったのである。

(エリス歴899年)。


現在のフォルテ村も、アデール王国のエスフォーテ領に属している。




そしてオルティスは、即位の1年後、王の座を実弟に譲位し、1人冒険の旅

に出かけ、二度と王宮に戻る事は、なかったと言う。


この100年前の戦いを人々は『聖戦』(エリス歴899年)と呼び、オルテ

ィスのことを『勇者オルティス』と呼んでいる。



ふむ~。


オルティス かっこええの~。


もし私が同じ時代に生きてたら 絶対に惚れてたな これ!


あぁ 今の時代に こんないい男 どこかに落ちてないかなぁ~。



そんな事を考えながら、私はその日の眠りに就いた。


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