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18.秘密の場所

エメオットが去ってから、私は段々、街へ行くのが、おっくうになっていた。


街に行っても、ただベンチに座って一日中、心の中で『助けて』と叫ぶだけ。


何の楽しみもない。




季節は冬の半ばを過ぎていた。

冬と言っても、フォルテ村に雪は降らない。


て言うか、この村は、とても温暖な気候である。

春と秋は過ごしやすく、夏はちょっとだけ暑い。

そして冬は、ちょっとだけ寒い。


そんな程度である。


フォルテ村の冬に、コートなど全く必要ない。



「今日も街へ行かなければ ならないのか…………」。



しかし、そんな事は言ってられない。

選別の儀式は、もう間近に、迫っていた。




赤が青に見える魔法が見つからない以上、赤が青に見える魔法を使える、能

力者を、探すしかない。


とは言うものの…………。


何か楽しみがなければ、自然と足が重たくなる。


せめて街まで近ければ…………。

崖さえなければ…………。



そうだ!



念のため私は、家の周りの崖地を、調べてみる事にした。

もしかしたら、下へ降りれそうなカ所が、見つかるかも知れない。




私は、庭の周りに張り巡された木柵を一周し、そこから見える崖地を調べた。


すると…………。


1カ所だけ、緩めの傾斜の崖地となっている、カ所がある。


そこから下を見下ろすと、ちょっとだけ小高くなった丘の上に、1本だけ立

っている、大きな木が見える。


そしてそこから少しだけ森に入ると、広場から出る南の道がある。



ここを降りる事ができればなぁ~。



私は緩めの傾斜の崖地を、もう1度、眺めて見た。


すると…………。



ん?


何となく 降りれそうな気がする…………。



しかし100歳じじいが、突然、私の心の中で、騒ぎだす。



いや そんなはず ないっしょ。


崖地だよ 崖地!


絶対 無理に決まってる。




確かに家の周りの崖地の中では、比較的、緩めの崖地かも知れない。


それでも実際は、前世の専門家でも、ここを降りるのには、かなり手こずる

であろう、そう思われるほどの傾斜地だ。



でも やっぱり…………。


何となく 降りれそうな気がする…………。




この状況をどう説明すれば、いいのだろうか…………。


例えば道を歩いている時、地面にできている大きな裂け目が、その行く手を

阻んでいるとしよう。


裂け目はとても深く、底がまるで見えない。


裂け目を飛び越えて前に進むか、それとも諦めて引き返すか。

この場合、2つに1つの選択となる。




ではその際の、飛び越えられるかどうかの判断基準は、何によって決まるの

だろうか…………。


それは、おそらく…………。



自分自身の経験。


自らの運動能力。


自らの意志



これにより、判断をする事となろう。


そして確実に、飛べ越えられると判断した場合のみ、裂け目を飛び越え、前

へと進む。


飛べ越えられないと判断すれば、来た道を引き返す。


死ぬ危険を冒してまで、無理に飛び越えようと、普通は思わない。


しかし…………。


緩い傾斜地を見た時、私はなぜか…………。


裂け目を前に、確実に飛べ越えられると判断できる。

そんな気持ちと、同じ気持ちになるのである。


もしかして、これは本能なのだろうか…………。



ふむ~。



私は改めて、緩めの傾斜の崖地を確認した。

やはり、何度見ても、降りられそうな気がする。


それに、いざという時、私には『ハイヒール』がある。

もし怪我をしたなら、その時は、魔法で治せば良い。



よし!



私は木柵の外に出て、そこからすぐ下に見える、大きな岩の上に飛び乗った。


そして…………。



『ピョン ピョン ピョン ピョン ピョン ピョン ピョン』。



次から次へと、岩から岩の上へと飛び移り、間瞬く間に崖の下へと、降り立

った。



あら…………。


やっぱり降りれた…………。



次に私は、今、降りてきたばかりの崖地を見上げた。

下から見ても、結構な急斜面である。



でも やっぱり…………。


登れそうな気がする…………。


よし!



そして…………。



『ピョン ピョン ピョン ピョン ピョン ピョン ピョン』。



私はあっと言う間に、崖を登り、木柵へと、たどり着いた。




崖の岩肌を自由自在に、飛び跳ねる事ができる私。



私まるで…………。


私まるで…………。


子鹿のバンビみたい!



私は嬉しさのあまり思わず、お踊りながら歌った。



「バンビ♪ バンビ♪ 子鹿のバンビ♪ ルンルン♪」。 



「バンビ♪ バンビ♪ じじいのバンビ♪ ルンルン♪」。 




それにしても、なぜ私にこんな芸当が、できるのであろうか…………。


もしかして、この世界の重力は、地球より小さいのかも知れない…………。

それで身体が軽く感じるとか…………?


何れにしても、街へゆくのに、ここを利用すれば、大きな時間の短縮となる。


時間が短縮さえできれば、その時間を能力者の捜索に、当てることができる。




その後、私は、街へ行くのに崖地を利用した。


崖の下には、周りの土地より、ちょっとだけ高くなった丘の上に、1本の大

きな大木が立っている。


大木の周りに、他に木はない。

だた、大木だけが丘の上に、ポツンと立つ。


そして、季節柄、冬でも咲く花だけが、その周りで咲いている。


私は、ここを、私だけの秘密の場所と、する事にした。


そして、休みの始まりと終わりまでの間、この場所に来て、大木の根元に座

り、その木に寄りかかって時間を潰した。


そんな日々がしばらく、続いた。


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