16.黒髪の乙女
状況が大きく変わった。
私は再び、作戦会議を行う事とした。
それにしてもミッション初日から、大きな収穫があった。
ある事故がきっかけで、実に大きな成果を上げる事ができた。
その成果とは…………。
我々は、能力者を発見する事に、成功したのである!
そして、その能力者とは、私自身!
まさに、灯台もと暗しであったと言えよう。
それでは、これより、第2回作戦会議の開催する。
今日の議題は『能力者発見による今後の対応について!』。
これについて、検討したい。
まず最初に…………。
選別の儀式を乗り切る、方法なのだが…………。
一番簡単なのが、私自身が選別の儀式において、赤が青に見える魔法を発動
する。
この方法が、最も簡単である。
これで万事、うまくいく。
しかし…………。
これには問題がある。
そう、赤が青に見える魔法を、私が知らない、と言う事である。
では、これを解決するためには、どうすればよいのか…………。
そんなのは簡単!
調べれば、よいのである。
これについては引き続き『エメオット訪問作戦』を続行する。
しかし、もし、赤が青に見える魔法が、本で見つからなかったとしたら?
ふむ~。
そうだ!
確か精神魔法は、能力者によって使える魔法が、まちまちだったはず。
言い換えれば精神魔法は、個性豊かな魔法と言えよう。
それなら…………。
赤が青に見える魔法を 私が新たに 生み出せばよい!
そうすれば、万事、うまくいく。
そして魔法が誕生した暁には、その魔法を『赤青へんげ』と名づけよう。
でも、どうすれば、生み出せるの…………?
ふむ~。
そうだ!
念だけに 心の中で念じるのだ!
『赤が青くな~れ』とか…………。
『いでよ 青! 消えよ 赤!』とか…………。
いろいろな言葉を試してみよう。
でも、念じたとして…………。
どうやってその魔法が、成功したかどうか、確認をする?
確か、同種の精神魔法を使える能力者に、念は効かないはず。
と言う事は、つまり私では、魔法が成功したかどうか、確認できない恐れが
ある。
ふむ~。
そうだ!
エメオットに頼もう!
エメオットの店に出かける際は、赤のワンピースを着用する。
そして店に入る前に『赤が青くな~れ』と念じる。
そして店に入り、青のワンピースに見えるかどうか、エメオットに確認して
もらう。
これだ!
これで いこう!
それと引き続き『心の中で助けてと叫ぶ作戦』は続行する。
私一人に頼る作戦は、リスクが大き過ぎる。
よし!
ここまでをまとめよう。
『エメオット訪問作戦』。
『赤青へんげ』。
『心の中で助けてと叫ぶ作戦』。
この3本立ての作戦を、明日から実行する。
翌日…………。
赤いワンピースを着用し、私はエメオットの店へと向かった。
そして店の前で『赤が青くな~れ 赤が青くな~れ』と、言葉を念じてから、
店の中へと入った。
「リディアちゃん いらっしゃい。 今日も よく 来てくれたね」。
「おはよう エメオット!」
「ねぇ エメオット?」
私はエメオットの前で、スカートの裾を両手で軽く持ち上げ、自らを軸に、
1回転をした。
「私のワンピース 何色に見~える?」。
「ん?」。
突然の質問にエメオットは、少し困惑した様子だった。
そして、右手の親指と人差指を顎に当てながら、こう答えた。
「赤? かな…………」。
「な~んだ…………赤か…………がっかり…………」。
そんな私の様子を見たエメオットは、くすっと笑った。
そうだ!
昨日、私が店を訪ねた時、どうして私の事を覚えていたのか、そしてその理
由について、どうしてお茶を濁したのか…………。
私はエメオットに尋ねてみる事にした。
「ねぇ エメオット? 昨日 どうして 私を覚えていた理由について お
茶を濁したの?」
するとエメオットは、しばらく考え後、こう答えた。
「リディアちゃんが 気にしちゃいけないと思って…………。 話しても大
丈夫かい?」。
「うん 全然 平気!」。
するとエメオットは、こう答えた。
「実はリディアちゃんの黒い瞳と黒い髪 とても珍しい色なんだよ」。
「えっ そうなの?」。
「うん。 おじさんも人生の中で 黒い瞳と黒い髪の人を見るのは 初めて
かな」。
なるほど…………。
それで私の事 覚えていたのか~。
「でも大丈夫よ そんなの 全然 気にしないから~」。
「よかった 安心したよ」。
エメオットは、胸を撫で下ろした。
前世では日本人なら、黒い瞳と黒い髪は、ごく当たり前の事。
まさか、この世界で、珍しい色になるとは、思っても見なかった。
だから、私がベンチに座っている時、通りすがりの人は私の事を、もの珍し
そうに、見てゆくのか…………。
これで納得した。
でも、なぜ金髪の両親から、黒髪の私が生まれたんだろう…………。
確か…………。
前世では、金髪同士の両親から、黒髪の子供は生まれないはず…………。
まぁ、血の色だって違うし、この世界の遺伝子は、地球とは少し、異なって
いるのだろう。
しかし、これから街へ出かける時は、帽子をかぶって行った方が、よさそう
である。
もし 街の広場に…………。
…………。
黒髪の乙女の亡霊がでる!
なんて噂がたったら、父と母に、一発で私だとバレてしまう。
そうなると、このミッションは、失敗に終わってしまう。
確か部屋のタンスの引き出しに、黒のニット帽があったはず…………。
明日からは、ニット帽を被り、街を訪れる事にしよう。
もし面白ければ、ブックマーク登録、評価をお願いします。




