13.フォルテ村
翌日。
私は、フォルテ村の中心地(以下「街」と言う)へ、向かう事にした。
但し、これにはルールがある。
絶対、父と母に見つからない事!
これがルールだ。
父と母に見つからないためには、父と母の職場に近づかない事!
これに限る。
まず、父の職場だが…………。
父の職場は治安所。
私は、人生の中で街に、1度しか行った事がない。
しかし、その時、父が私に、治安所の場所について教えてくれた。
だから私は、治安所の場所について、知っている。
よって、これについては問題なし!
次に、母の職場だが…………。
母の職場は『レオナ工場』。
そこで『レオナ』を生産している。
レオナとは、速乾性に優れた布の事で『コロコロ』と言う動物の毛から、作
られている。
母から聞いた話によるとコロコロは、その名の通り、体全体が丸い形の動物
で、白いフサフサの毛で覆われているらしい。
地球で言う羊みたいな感じか…………?
しかし私は、レオナ工場の場所を知らない。
これについては、工場らしき建物には、近づかなければ問題なし!
問題は2人の昼休み…………。
外に出てくる可能性がある。
ふむ~。
確か、昼休みの始めと終わりに、ファルテの塔の鐘が鳴る。
鐘が鳴ったら、どこかに隠れる。
よし これで行ける!
これで問題なし!
私は、家の玄関からフォルテ村全体の様子を、今一度、確認して見た。
家からフォルテ村の方角を見ると、意外にも、その距離は結構、近い。
しかし我が家は高台にある。
そのため、家から街方向は、崖地となっている。
なので、街に行くには…………。
崖地を無視。
街とは反対方向に走る、細い長い坂道を下る。
やがて坂道は、大きな道路と合流。
合流したらその道を左に曲がる。
曲がった後は、ただひたすら、その道をまっすぐ進む。
そして街へと、だどり着く。
ふむ~。
もの凄い遠回り!
まぁ仕方がないか…………。
ぼちぼち 出発しますか?
私は家を後にし、坂道を下り、大きな道路に、たどり着いた。
大きな道路沿いには『モチモチ畑』とコロコロの餌となる牧草地が、辺り一
面、広がっている。
モチモチとは、地球で言うところの、お米みたいな食べ物。
地球より、その一粒は大きく、しかも丸い。
今は実りの季節。
モチモチの穂が、その実を実らせ、大地を黄金色に輝かせている。
そんな中を私は歩き、街へと向かった。
だいだい1時間ほどの、道のりであったであろうか…………。
私は、街の入り口へと、だどり着いた。
大きな道路から街に入ると、すぐに街の広場に出る。
とりあえず私は、広場に置かれているベンチに座り、周囲の様子を見回した。
広場は、左右に広い楕円の形をしており、広場と、この街を走る道路は全て、
石畳で造られている。
そして広場右側には、大きな噴水と、その中に『女神エリス』の銅像が。
広場左側には、大きな日時計と、その近くに『勇者オルティス』の銅像が。
そして、その真ん中に、この街のシンボル『フォルテの塔』がある。
さてと…………。
これから どうしようかな…………。
どこから観光しようかな?。
私は本来の目的を忘れ、すっかり観光気分に浸っていた。
私は、とりあえずフォルテの塔に登ってみる事にした。
やはり、この村のシンボル、フォルテの塔は外せない!
フォルテの塔は、白いレンガ造りの正方形の建物で、その屋根はとんがり帽
子。
この村では、一番背が高い。
私は塔の中へと入り、上を見上げた。
建物の中では、螺旋階段が、最上階の部屋へと続いている。
よし!
気合いを入れて 登りますか!
私は階段を、1段、また1段と登り始めた。
すると階段の中間地点くらいの所に、扉の閉まった、小部屋らしきものがあ
る。
管理人の部屋かしら…………。
私はそこで一旦、足を止め、下を見下ろした。
ひ~ 高!
こわ!
普通なら、こんなに登れば、息切れの1つや2つも、しそうなものだか……。
しかし全く疲れない。
さすが6歳!
もし、これが、100歳じじいだったら…………。
この階段 途中で 天国への階段に変わるな きっと…………。
そんな事を考えながら、私は更に上を目指した。
最上階の部屋へと、たどり着いた私。
最上階の部屋には、4つのアーチ型の大きな窓が、東西南北に向かって、く
り抜かれており、そこから街の様子を展望できるようになっている。
そして部屋の中心部に、フォルテの鐘が吊されている。
私は早速、街の様子を眺めようと、東の窓を覗いてみた。
ん?
まさか…………。
何と!
私の背が低すぎるため 窓を覗けないではないか!
こんな事ってある?
今までの苦労は 一体なんだったの…………?
その時ふと、部屋の隅に置かれている、階段つきの台座を見つけた。
超ラッキー!
私は、改めて台座を東の窓の下に置き、台に登り外を眺めた。
東の窓からは…………。
さっきまで歩いていた大きな道路が、窓の下に見える。
道路は、モチモチ畑と牧草地の真ん中を走り、遠くに見えるフォルテの山ま
で続いている。
そして畑も牧草も道路も、この街から離れるにつれ、どんどん小さくなって
ゆく。
この景色を見ていると、改めて、世界の広さと言うものを実感する。
この道の向こうに、一体どんな世界が広がっているのか…………。
そして、これからの私の人生、一体、何が待っているのか…………。
そんな見果てぬ夢を、私に見せてくれる。
よし!
決めた!
私は東の窓を『夢見の窓』と名づける事にした。
南の窓からは…………。
細い道が、緩い傾斜地を下ってゆき、その道沿いに、店舗や学校、遊び場な
どが、ひしめき合っている様子が見える。
やがて道沿いの建物は途切れ、その後も細い道は単独で、南へとゆっくり下
り、やがて森の中へと消えてゆく。
そして少し先の森から、再びその姿を現し…………。
現したその先には…………。
南方面一帯に広がる、紅葉あふれる広大な森。
その中に、ただ一つ、エメラルドグリーンの光を放つ、レーチェル湖。
森の木々が、赤、黄、オレンジで、広大な大地を色彩豊かに染めるならば、
レーチェル湖は、ただ一つだけで、エメラルドグリーンの異彩を放つ。
まるでここに、女神がいると、教えているかのように…………。
よし!
決めた!
私は南の窓を『女神の窓』と名づける事にした。
次は北の窓。
北の窓からは、比較的広い道路が、広場にある巨大な倉庫の横を通り抜け、
遠くに見える平原へと続いている。
また巨大な倉庫と、広場沿いの店舗の裏側には、碁盤の目のように区画され
た一団の土地がある。
そして、その道路沿いには、黒いレンガ造りの比較的大きな建物が、ゆった
りと建ち並ぶ。
そこには、多くの公共施設が建ち並び、父が働く、治安所もこの一角にある。
また公共施設を過ぎると、北へと向かう道路には、赤いレンガ造りの、工場
や倉庫が、まだらになって建っている様子が見える。
道路には、荷物を載せた荷馬車も走っている。
きっと母が働くレオナ工場も、この辺にあるのだろう。
まぁ、生活感のある風景だったな…………。
よし!
決めた!
私は北の窓を『働く窓』と名づける事にした。
では、最後に西の窓。
私は、台座を西の窓の下に置き、外を眺めた。
すると…………。
「うわ~」。
何と!
そこには…………。
一面、真っ赤に燃え立つ、街の風景。
そしてその中を、石畳の道路が、四方八方へと広がり、自由な線を描いてい
る。
赤いレンガとグレーの石畳のコントラストに映えた、美しい町並み。
平地も傾斜地も関係なく、思うがままに、無秩序に広がる街の風景。
まるで中性のヨーロッパにでも、タイムスリップしたかのような…………。
この街のどこかに、異世界へと通じる秘密の扉が隠されているような……。
そんな思いに、私を駆り立てる。
私はしばらくの間、想像を掻き立てる美しい町並みを、堪能していた。
そして、この窓を『異世界の窓』。
そう、呼ぶ事にした。
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