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退屈はイヤなので国を興します  作者: シュシュ黒
見習い司祭
10/18

10 決着と幸福



「やった!私やったよ!レトロ君!」

「ミクロさんのおかげだろ」

「みんなのおかげさ!」

「よっしゃあ!!やったぜ!!!!」


 アルデを倒し各々が勝利を実感していた。これで任務は完了したのだ。




「君ら、本当にすごいねえ」




 空気が凍りつく。


「でももう俺も制御しないよ」

 

 アルデの体が膨張する。全身がひび割れ、青緑の気色悪い肉塊に変貌していく。中性的だった顔立ちはもう見る影もない。


「この姿、嫌なんだけどなあ」


 肉塊は再度人型に変形する。アルデの本来の姿だろうか。


 体が一回り大きくなり、だがそれよりも目を引くものがある。目は五つに増え、口は大きく裂けている、さらにそこから歪んだ牙が伸び切っているのだ。その怪物の心臓と思しき部分には黒い泥が蠢いている。



「さあ始めよ「やっと見つけた」うか」



 空から蒼の槍が飛んでくる。



「は?」


 辛うじてアルデは避けたものの空からの攻撃は予想していなかったようで、かなり動揺している。


 その場の全員がその攻撃の正体を探ろうと首を上に向けた。


「なんだよ、あの犬!」


 巨大な獣が空から降ってきた。レトロにはそれがラエルだとすぐに分かった。


 よく見るとロウルが頭に乗っていた。先程の攻撃はロウルの魔術だったのだ。


 着地の衝撃だけで凄まじい轟音が響く。


「やれ」


 ラエルの頭上のロウルが囁くと着地の瞬間にラエルがアルデに飛びかかる。その俊敏な動きに反応できずに、そのままアルデの体はラエルの鋭利な爪に引き裂かれてしまった。


 簡単に決着がついてしまった。


「ラエル、念のためにもっと潰しておけ」


 ロウルは用心深くラエルに死体をぐちゃぐちゃにするように命令してから、レトロたちに言う。



「これにて任務完了だ。よくやった」


 

「「助かった・・・」」


 イアンとアンリが安心で崩れ落ちる。


「魔王軍はどうなったんですか?」


 まだミクロは気を抜いていない。


「俺だけじゃまだ倒しきれなかっただろうな。大体そこのラエルが倒した」


 ラエルは凄まじい勢いでアルデを青緑の挽肉にしている。


「それよりもその金髪女は?」

「自称勇者です」

「本物ですよ!」


 レトロが説明していると、アンリが食って掛かる。


「お前何しに来た?」

「王様からこの要塞を奪い返すように言われていたんです」

「・・・お前みたいに弱い奴が勇者なわけないだろ」

 

 本気で自分のことを勇者だと思っているらしい。ロウルも呆れている。


「こんなのでも聖なる光の一族だからな、手柄を横取りされても困る」

「うっ」


 ロウルがアンリを手刀で気絶させる。


「人目に付かないところに縛っておけ」



  ______________________



 その後、要塞奪還により水の大貴族であるヒエトス家から援助の約束を取り付けることに成功する。


 自称勇者のアンリに手柄を取られる前にすべてを終わらせた。


 とはいえ、まだ自分のことを勇者だと言い張るのならまた出会うことがあるかもしれない。


 ぜひとも、レトロはあの変人の最期を見てみたいと思う。


「無事で良かった!」

「ラエルの方こそ」


 初の大仕事を終えたレトロとラエル、城でお互いの無事を確認していた。


「ラエルには助けられたな」

「レトロが粘ってくれたからだよ」


 ラエルが嬉しそうに顔を綻ばせる。案外、分かりやすい。


 ラエルがいなければロウルが到着した頃には全滅していただろう。本当に助けられた。




「ねえ、レトロ」

「ん?」

「ずっとこうしていたいな」


 庭園のベンチに二人で座りながら、ただ話をする。


 これこそが幸福だろう。


 それが嫌で逃げ出したのに、今はずっと、こうしていたかった。







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