99.【俺】森騎団と接触する
決戦イベントが迫ると2択の選択肢が表示された。
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≪分岐イベント≫
・相手を完膚なきまでに叩き潰す
・策謀を巡らせる
みきみき あるいは半分か
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この半分は意味不な上に選べないので捨ておくとして。少し整理しよう。現状、冒険者達にバレてしまったのはトレント達がいるファームのみでスパ迷宮ではない。けれど迷宮にとって必要なエネルギーを生み出すファームを失うわけにはいかないのでここは絶対防衛だ。
場所が割れているため勝利したとしても、噂が広まり第二、第三の敵が現れてもおかしくない流れだが、わざわざ選択肢が現れたところをみるとそれを回避する方法があるのだと思ってる。俺としてはまだまだ落ち着いて魔物を育成したいのでここは誤魔化す一択。
どうやるのかがちょっと不安だったが策謀を巡らせるを選択すればサブサブロはファームの移転を決意したと表示された。マナを大量消費という代償はあるがマナを余らせまくってる俺にとってはノーコストに近い。ただ、このままでは移転できないと出た。
「まあ移せても即バレして終わるよな」
マーカーが冒険者ギルドを指して察する。つまり、ファームの存在を知った人物の情報を得て、その元を断てということなのだと。
◇◇◇
既に壁に凭れ掛かって小一時間。でも、退屈しない。一人一人同じ動きをするものがいない。改めて観察してみてこのゲームの作り込みに感心する。
22世紀。最新鋭のAI技術は今となっては珍しいことではないがこのいつ作られたかわからないデュアルミッシュにもその高性能なAIが搭載されているのだろう。
(そういえば昔のゲームにAI積んでリバイバルするってブームが一昔前にあったんだっけか?)
デュアルミッシュはその時に作られた産物なんだろうか。やっぱりこのゲームの正体が気になるところ。微動だにしないサブサブロ。怪しむような視線を飛ばす冒険者がチラホラ。シアラちゃんも怯えた目を向けているがここは仕方がない。
「お、来たな」
入ってきた集団に注目する。C級PT森騎団、リーダーである銀髪のレグナードを筆頭にボッシュとウィルソンが現れた。2人の少年少女も連れている。
知力の高いレグナードは要注意だが、特にヤバいのがウィルソンの魔法。
「絶対これだな」
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魔眼──鷹の目
探知魔法サーモルアイズ。100kmの魔物の存在を探知する。魔素濃度が高いダンジョンは見通すことができない。何匹いるかまで数字で表示される
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仮にファームを移すとしてもこのウィルソンがここにいる以上スパーダと繋がる位置にファームを設置できない。
よって可哀想だが彼は排除対象だ。ボッシュもスカウトスキルが高くて厄介。こうした詳細なスキル情報はどうしても近くで鑑定しなければ判明しないので相手にも警戒されてしまうが接敵するしかない。バワンの魔力羽を使えば遠くからも可能だが彼女を危険に晒せない。
気づいた銀髪騎士レグナードがこちらに寄ってくる。テレビ越しでも糞イケメン、こいつも顔面つよつよ罪で排除対象か。
レグナード :リーデシアのサブサブロ殿とお見受けする。もしかして我々を待っていたのではないか?
銀髪銀眼という主人公のような見た目。オーラがあるレグナードが俺の前に立つ。笑みは無い。製作者の表現なんだろうが俺の考えがお見通しと言わんばかりだ。
魔王サブサ風呂:誰ダ 貴様ハ 我ハ オ前ナド待ッテハ イナイガ
レグナード :片言。帝国も此方と同じ言葉だったはずだがそもそもが話しづらそうだ。初対面でなんだが、その兜取っては貰えないか?
魔王サブサ風呂:何故ダ?
レグナード :まだ公にはなっていないがスタンピードを引き起こすほどのトレントの群れが見つかった。単なる大量発生で片づけることもできるが、ゴブリンどもも指揮を受けたかのような動きをとっている。種族を跨いで率いる者が現れたとなれば大事。魔王の可能性も浮上するだろう。
すぅ……ふっ中々やるじゃないかレグナード。だが、それじゃあ三角だ。中身がおちゃめな高校生とまでは気づかなかったようだな。うん、確定イベじゃなかったら気を付けよ。
魔王サブサ風呂:ツマリ 我ヲ 疑ッテイルト?
レグナード :お前が常識というものを持ち合わせているというのなら自らが怪しいという自覚くらいは持っていると思うがな
鑑定すると囲まれていた。森騎団からの突きさすような視線。ゲームなのに伝わってくるその迫力。その場にいたら俺は漏らしていたかもしれない。でも、サブサブロ越しなので出た選択肢でも強気にいける。
魔王サブサ風呂:我ハ 任務デ ココニイル ソレハ リーデシア ト 事ヲ構エル ツモリト イウコトカ?
これに対しレグナードは銀の瞳を瞬かせ笑みを深めた。
レグナード :これは取引だ。サブサブロ
魔王サブサ風呂:取引ダト?
レグナード :お前がどのような任についているかは知らない。だが、周囲に嫌疑の視線を送られながら行うのはお前とて辛いだろう。その鎧の下が化け物でないと明らかにすればその問題は今にも解決する
魔王サブサ風呂:我ニ 利ガナイナ
ウィルソン :馬鹿を言え。聞いてなかったのか?アンタ疑われるんだぞ
茶髪の好青年ウィルソン。傍に二人少年少女を連れているがあれも森騎団の一員なのだろうか。装備も初期装備で見習いっぽい。何かでもこの子達もモブとは思えないほどに顔整ってるか?ん?まさかカップルPT?ユーリ少年も排除対──
魔王サブサ風呂:ソレハ 脅シ トイウノダ ソノ者ハ 取引ト言ッタ
前に出たウィルソンをレグナードが手で止めた。
レグナード :私の名においてサブサブロの嫌疑が晴れたと認めさせよう。無論、それだけではない。お前も姿を明かすのだ。私も正体を教えよう。何をやっているのかは知らんが案外、お前の役に立つかも知れんぞ?
いや、イケメンの正体とか欠片も興味ないんだが。それよりサブロが素顔見せて大丈夫なのかが不安。選択肢出ないから平気ってことでいいよなこれ。またぶっ殺されてミハエル行きになったらヤダからな俺。




