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94.【森騎団】発覚 動き出す事態②

 森騎団、ホルスター、青の境界、悪滅聖歌隊、バニッシュメント、スカイランドというペルシアが誇る錚々(そうそう)たるメンバーに加え、そこに一郎が調べ切れていない若きペルシアの星であるユーリーとキャスカも加わる。


 彼らを率いるのは森騎団のリーダー、レグナード。女のような銀色の長髪に甘いマスクを持った美青年。貴族の息子であると噂され、何故こんな辺境の町で冒険者をやっているかは謎だった。鎧を纏ったその姿はまさに騎士そのものだ。


「揃ったようだな。なら」


「待てよレグナード」


 声を掛けたのはホルスターのリーダー、マインツ。不落のリーダーゴートに匹敵する悪漢である。太い二の腕には包帯が巻かれ、武器は持っていない。盗賊のような見た目の武道家だった。


「何だ?」


「何か隠してないだろうな?お前。ゴブリンの群れは確かに大事だが幾らなんでもこりゃ集めすぎだろ。本当にギルドの依頼なのか」


「ああ、その通りだ。これはギルド依頼だけではなく私が上乗せした。私の判断で戦力を集めた」


 ざわっとし、前に出たのは聖歌隊のケープを纏った少女、プラム。おっとりとした見た目でピンクの髪は毛先で渦巻いている。


「レグナード様、貴方は優秀です。報酬も沢山頂けるので文句はありません。でも、理由は説明すべきだと思います。私達も仲間を率いている身なのです。依頼確認は冒険者の基本。違うでしょうか?」


 その通りだとレグナードは頷いた。


「……状況から見てゴブリンキング、ジェネラルでは済まないと判断した」


「待った調べたのはお前らのPTだろう?仲間がヘマをやったと」


マインツが会話に混ざるがレグナードは視線を切って答える。


「私が方針を変えたのはそのゴブリンが消えたという報告があったためだ。魔物というのは縄張りを離れないもの。強者であれば強者であるほどな」


「なら彼らより強い奴がきて逃げた可能性は?」


「ゴブリンは帰巣本能が特に強い魔物。争った形跡がないのなら率いられているのだろう」


「おいおい、ゴブリンの上位種を率いる存在だとっ! 冗談じゃねえぞ!」


「それならまだマシだ。ギルドの話では名持ちの魔狼すらも消えたとのことだ。近くにあったグレーターウルフの巣ももぬけの殻。これらがもし繋がっているのだとすれば魔の王が出現した。あくまで私の予測だがな」


 シンと静まり返る。魔の王、恐るべき存在。外の魔物で襲れるべきはその数。バラバラと言われる魔物を一つに束ねられる者はどんな種族であれ魔王であり、人にとっては厄災だ。


「どこへ行く?マインツ」


「馬鹿がやってられるかよ」


「スタンピードが起こった場合、任についていなければ冒険者を辞めざる得ない状況に追い込まれるだろう。世界中の冒険者から臆病者と罵られてな」


「くっ」


「ここを拠点とする我々には既に逃げ場はない。そしてだからこそ疑わしい時点で全力で当たるべきだ。質問がないなら依頼を開始する。ああ、町に来ているという帝国兵について知っている者がいたら教えて貰いたい。確かサブサブロという名だったか」


◇◇◇


 切り株ダンジョンのある森。先に入ったギルド員の報告通りゴブリンの姿はなく、ただゴブリン塚だけが手を付けられることなく綺麗に残されていた。その前に立ったのはレグナードとボッシュである。


「レグナード、痕跡がない。足跡すらもだ」


「お前でも捉えられんということはまさか転移か。いやしかし……」


 考え込もうとしたレグナードだったがボッシュの隣にいる子供の存在に首を捻った。


「ところでその子供は何だ?」


「ん?ああ、こいつらは俺が担当してるペルシアの星さ。勝手に引き受けたのは拙かったか?」


「そうか君たちが」


「ユーリです」「キャスカです」


 いつの間にか借りてきた猫のように大人しくなっている。レグナードに憧れるのはどの子供も同じかとちょっとボッシュは面白くない顔をした。


「そうか、好きに技を盗むといい。活躍すれば我々も楽になるのだからな」


「「はい」」


 そこへ近づいてきたのは団員がレグナードに耳打ちをし──


「レグナードさん、ボッシュさん。ウィルの準備ができました」


 レグナードとボッシュは頷き合い、ウィルソンの下へ向かう。魔法陣に乗る彼の周りには何事かと冒険者が集まっていた。


「おい、レグナード何をおっぱじめるつもりだ?」


 聞いたのはマインツだったが全員に聞こえるようにレグナードは声を大きくして答える。


「スキルを使って周囲100メルを探る。依頼にあった通りこの力他言しないように頼む。多額の報酬はそれも込みだと理解してくれ」


 100メルは100km、この世界の探知魔法としては余りにも規格外だった。


「いきます。鷹の目(ホークアイ)、索敵魔法サーモルアイズ」


 相当の負荷が掛かっているのだろうガクッと膝を落としたウィルソンは何かを見つけたとばかりに目を見開いて嘔吐した。


「ウィル!?」


 ボッシュに肩を借りて青白い顔で息を吐くウィルソン、その傍にレグナードが立った。


「辛いだろうがウィルソン答えてくれ。何を見た?」


「くっ空白地帯にとっトレントの群れっ」


「何だトレントかよ」


 トレント。それはエルダイン最弱モンスター。冒険者達から力が抜けるが、次の一言で凍り付く。


「その群れが10万を超えるといっても同じセリフを吐きますか?」


「じゅっ!いや待て!何故わかる」


「詳しくは話せませんが僕のスキルです。それにそれだけじゃありません。信じられないほどの膨大なマナが……空白地帯に。何だっ何なんだこれはっ」


「ウィル!?」


 ガクッと気を失ったウィルソン。遂にサブサブロの痕跡に触れた冒険者達。彼らは自分たちが想像する状況より遥かに悪いのではないかと恐怖したのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 何故、前転する 転がったり、前転したり(笑) 普通に走らないんだ……………ww
[一言] まさか、トレントがタダ集まってるとは思いもしない 思うわけ無い(笑)
[一言] 100kmて鷹の目てか高性能レーダーか何かではw 水平線が5kmくらいですしw
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