92.【俺】浮かれてます
何でか分からないけど生徒指導の鬼瓦先生に呼び出しを喰らった。そして一瞬貸してくれとスマホを取り上げられた。
「くっくっく十分に反省したか最上一郎。何度も何度も鳴っていたぞ?勿論、プライバシーの観点から見てはいないが、あの女生徒からかもしれん。これに懲りたら二度と校内でスマホの電源を入れん事だ。はっはっは」
鬼瓦先生が頭を下げている。
「何で先生が謝ってるんですか?」
「一日帰すのを遅れていたからな。規則ではその日に帰す決まりなのにすまなかった」
「いや、それは俺が帰ったからで。ってか何で俺また取られてるの」
「詫びとして鬼瓦シールを贈呈しようと思ってな」
手渡されたスマホにペタリと漢字で鬼と書かれたシールが貼られていた。
「いらねえっ!?ってかこのシール絶妙に剥しにくい奴」
「どうせケースに入れるだろ」
「まあ、そうですね」
いやそういう問題か?
「ということでケースにも貼っておいた」
「おい、生徒指導」
「安心しろ。こっちはもっと楽に剥せるタイプだ」
変な先生。どっちかというと本体剥しにくい方が最悪なのだが、もう何かメンドクサクなってきた。
「最上、気に食わんだろうが暫くそのままにしておけよ」
「え?何でですか?」
真剣な顔つきとなった鬼瓦先生にドキリとする。やだイケゴリラ。言ったら怒られるから心にしまっとく。
「まだ確かめられたわけではないから詳しくは話せないが、お前のことをよく思っていない生徒がいてな」
「え”?なんで?」
「気にしすぎかもしれんが、抑止力にはなるだろう。こっちも眼を光らせておくが何かあったら俺を頼れ、いいな?」
「あっはい」
頼りになる教師。普段からシリアスならいいのに。
「予備いるか?最上」
「いりません」
が、それは全力で断った。
放課後、帰りのバス。弥彦に隠してスマホをチェックすればお嬢様の大量連絡攻撃に頬が引き攣った。早く日程を決めて欲しいというとだけ送られた要領をえないもので何て返していいのか悩む。
(何の日程?やっぱこれデートってこと?なのか)
自意識過剰じゃなくて?もう俺はおバカなので勇気を出してデートですか?とストレートに聞くことにした。
すると馬鹿ですか貴方は返答。うん、やっぱ違うらしい。良かった。話があるってことなんだろう。まあ暇だから構わない。それにちゃんと対応しないとこの子学校に来てしまう気配があるのだ。
あれだけはマジで困る。いける日を聞いてみたところ今週の日曜以外無理との返答。流石お嬢様多忙である。おkっと連絡してから俺は気づいてしまった。
高瀬さんが家に来る日と同じだということに。
(やべっ)
やっぱ無理かもと送れば会食をキャンセルしたので絶対その日にとの返答。もし変更する場合はお母様に言って下さいとのこと。意味不。そして無理。高瀬さんにも変えられるか聞いたが駄目ときてしまった。
(まあ付き合ってるわけじゃないし……遊ぶだけだし。時間ズラして貰ったら……別にこれ浮気最低男じゃないよな?俺)
こんな経験初めてなので全く分からない。デートどころか妹以外の異性と休みに遊ぶなど小学生ぶりくらいじゃないだろうか。
女の子と付き合いってみたいけど、恋愛偏差値無さすぎてよく分からない。ゲームもしたいし、自分の時間無くなったりするんだろうか。
「なあイチ、お前さやっぱ俺に何か隠してるだろ?」
「え?」
「鼻の穴膨らんでんだよ。そのスマホ見せろ!」
「ちょっ止めろって猿!」
最上一郎16歳、ちょっと俺浮かれてます。
◇◇◇
「女の子が喜ぶゲーム内コンテンツ?」
何その質問と我が妹が顔を歪める。帰宅して夕ご飯、母はいないので今がチャンスと話しかける。
「今度、一人デュアミを見に来ることになってな」
「もしかして女の子」
まあと頷けばバンと奈々が勢いよく立ち上がった。
「何?遂にイチ兄にも春が来たってこと!?」
「そういうんじゃないって、ただゲームに興味があるらしい。人がやってる隣で珍しいゲーム見るのが好きなんだってさ」
「ふーん、まあいいや。説明しない方が面白そうだし」
面白い?何が?と見れば奈々はクスクスと笑った。
「そうだね。アドバイスとしては女の子だからって思わないことかな」
「ん?」
「よくありがちなんだって。女の子だから可愛いもの好きだーとかいう訳わかんない決めつけ。いや、勿論そういうのが嫌いってわけじゃないけど、乱暴なのは見せないようにしようとか」
「あー」
確かに拠点作りの方がいいかなとは考えてしまってはいた。
「その子要するに見る専でゲーム好きなんでしょ?じゃあ、動きがある方が喜ばれると思うよ」
「ストーリー見せた方がいいってことか。ボス戦とか」
「だってワクワクしたいじゃん」
ドキッとするほど成長を感じた。そういえば女の子の方が成長早いっていうんだっけ?
「何かお前も成長したんだな。サブ子」
「サブ子言うなっ」
可能なら間違いなく発生するだろうケルベック戦を高瀬さんに見せたいと俺は思った。




